第3話 魔法の威力を確信する
ーー ある日の森の中 ー
俺はハル、教会で育てられている孤児の中で1番の年長だ。次の春には鍛冶屋の親方に弟子入りする為もう直ぐみんなとお別れだ。
そこで森で最後の思い出に皆んなで大物を狩ろう言う話になり5人で森の奥に来ている。しかしまずいことに奥に入りすぎた為魔物に囲まれ身動きができなくなっている。
一番年下のカイがメソメソし始めた、俺でも泣きたいもうすぐ日が暮れ始める。暗くなるまでに何とか森の外に出なければ大ごとになる、いや命さえ危ない。
周りを取り囲んでいるのは、ウルフ系の魔物で群れで狩りをする為子供では逃げ切ることは難しい。
するとカムイが俺に、
「ハル兄、俺が魔法でウルフを追い払うからみんなを連れて逃げてくれ」
と言い出した。
魔法が使えるなんて聞いていないし孤児に魔法が使えることなんか聞いたことがない。きっと嘘を言って俺たちを逃がそうとしてるのに違いない。
「だめだ、魔法なんか使えるはずがないだろう、いざとなったら俺が何とかするから何もするなよ。」
ときつく言ったが、俺自体なんとかできるとは思っていない。
俺たちは木の上に逃れて魔物が立ち去るのを待っていたが、カイが泣き疲れたのかおおきくバランスをくずし木の下に滑り落ちた!
慌てて助けようと木の下に飛び降りた俺だがそれを待っていた魔物が直ぐに襲いかかってきた。
ウルフの牙に噛みつかれると覚悟して目を瞑っていたが、大きな音が聞こえたと思ったら噛みつかれることもなく時間が過ぎた。目を開けると目の前にウルフ3頭の死体が横たわっていた。
「早く、逃げるよ皆んな!」
カムイがそう言いながら周りを囲むウルフに雷を落としてゆく。
カムイは本当に魔法が使えるようになったみたいだ、俺はここで逃げなければこの音を聴いた魔物がどんどん集まってくると考えて。
「おい、メイ・ヒロ直ぐ降りてこい逃げるぞ」
と掛け声をかけ怯んだウルフの間を抜けて森を走り出した。
その後も、雷の音が連続して聞こえていたが誰一人として襲われることもなく森の外に逃げることができた。
森の外では、帰りの遅い俺らを心配したシスターらが探しに来ていた。
教会についた俺らはその日はシスターらからしこたまお説教を受けたのは言うまでもない。
ーー シスターアリア ー
今日、教会の子供らがみんなして森に入っていったまま帰って来ないので森の入り口まで探しにいった。
森では雷の音が連続して聞こえ、何か異常があっていると思えた。
すると走って子供らが森から飛び出してきた。怪我はないようだが皆んな真っ青な顔で私を見つけると涙を流しながら抱きついてきた。
最後に森から出てきたのはカムイで彼だけはいつも通りの顔で汗一つ流していなかった。
話を聞くと魔物に囲まれカムイの魔法で追い払いながら逃げてきたと言うではないか。
直ぐに教会に連れて帰ると皆んなを集め説教を行った。
しかしあの雷の音がカムイの魔法とは信じられない気持ちであった。
何故なら雷はかなりの高位の魔法使いでなければ使えない属性魔法で、しかもあれほどの数を連続して行えるなど聞いたことがない。
やはりカムイはかなりのスキルを授けられたことが窺えるがそれでも習いもせずに魔法は行使できるのであろうか?
それからしばらくして、村人の1人が大怪我を負ったと教会に運ばれてきました。その怪我は本当にひどく生きているのが不思議なぐらいの怪我で、ひと目見ただけで助からないことは分かりました。
するとカムイが私に
「シスター僕が回復魔法を使ってみるのでどこかの部屋に運んでいいですか」
と耳打ちしてきた
信じられないこともありましたが傷ついた人をそのままにするわけもいかず、小部屋に運び込むとカムイは扉を閉め私と2人きりになると回復魔法を発動したのです。
私もシスターの修行で回復魔法の中まで使えますが、それでも今回の怪我は治すことができません。
それをカムイはいとも簡単に回復させたのです、多分回復魔法上以上の能力があるはずです。
「シスター、体の構造をよく知ると回復魔法は同じ能力でも一つも二つも上の効果が挙げられます。病気についても同じです。僕は僕の手の届く範囲の人を助けることを基本に生きていこうと思っています、ただ教会に残るかはわかりません。」
と言うではないですか。これだけの回復魔法を使え人助けをすると言うのに他に何になろうと言うのでしょうか?ひょっとして私の知らない魔法やスキルがまだあるのでしょうかそうなると英雄や勇者のようなお伽話のような人生を送るのかもしれません。
シスターカリーナに早速手紙を出して知らせておきましょう。
ーー シスターカリーナ ー
今日シスターアリアから手紙が届いた。今度私が教育する予定の孤児の話のようだ、手紙を読み進める手が感動に震え出しました。
その子はまだ10歳の子供であるにもかかわらず、すでに回復魔法(上)以上の使い手で攻撃魔法についても連続で森の奥から森の外まで走り抜ける間、雷魔法を撃ち続ける魔力と能力があるそうで更に他にも高度な魔法が使えそうだと書いてある。
その上人助けについては「手の届く範囲の人助けは行う」と言い切っているが教会の枠には収まらないようだとも書かれていた。
この子は多分私が最後に育てるべき子供に違いない、神が私の命を長らえさせたのはこの子に出会う為だと本気で感じました。
私は、早速魔法関係のあらゆる書物と優秀な家庭教師を探し始めました。
ーー 王都へ ー
僕も11歳になり王都に出ることになった。
同行するのはハーゲン神父とシスターアリアだ、これは中央教会のお偉いさんからのお達しのようで専用の馬車で10日ほどの旅である。
途中町々に立ち寄り病気や怪我人を癒しながらの旅のため街を観光するようなことはできなかったが、シスターアリアと共に怪我人や病人を癒すのは楽しかった。
当然のこと皆んなはシスターアリアが癒していて僕はその手伝いだと思っている。
かなりの数の人々を癒しながら旅をしたため、途中からはその噂で多くの人たちが列を作って待っていたほど。
神父は金を取ると言っていたので誰も神父の治療は受けず、シスターの方に集まっていた。
大きな城壁が見えてきた。この世界では魔物の氾濫などがあるため高く丈夫な城壁で王都を守っていると言う。
王都に入ると、遠くに立派な城が見えてきたあれが王の住む城のようだ。そしてそこから北に進んだところに王の城と見比べても見劣りのしない教会が悠然と佇んできた。
その教会の中央の門を潜り大きな広間に案内された僕らはそこで、シスターカリーナと対面した。
ハーゲン神父はどこかの司祭に用があるとか言ってさっさといなくなった。
シスターカリーナはアリアと僕を個室に連れてゆくと
「遠いところよくきました。私が貴方の教育をするカリーナよ。貴方のために可能な限りの教育をするつもりだから力を出し尽くして努力してくださいいいですね。」
と力強い言葉と温かい声で僕に話しかけた。
「はい、13歳までは期待の応えられるように努力します。その後は改めて相談させてください。」
と答える僕をしっかりと見つめながらカリーナ様は
「ええ、いいわ。その代わりしっかり神に感謝をしてくださいね。」
と言ってくれた。
ーー シスターカリーナ ー
今日待ちに待ったあの子が教会に来ました。
アリアもしっかりシスターとして成長した様子が見て取れましたが、あの子はやはり特別でした。
私は、魔力を見ることができる能力があります。あの子を見た瞬間、雷に打たれたかのような衝撃を受けました。
体から少しも魔力が漏れていないにもかかわらず、内包する魔力が桁外れに大きく強いのが一眼で分かるほど彼の身体が輝いていたのです。
そしてその目は、澄みきっていながら知性の色が濃ゆく意思の力を感じさせるものでした。
早速次の日から教育が始まりましたが、王都でも指折りのはずの教師らが数日もせぬうちからサジを投げ出し始めました。
彼の方が優れており教えることができないと言う理由からです。
そう、彼は教養については礼法等の実技以外なら国の最高峰の頭脳があり、回復魔法については上級以上と言えるほどで、息さえしていれば助けられると思えるほどの力量で使える魔法も呼んだ教師以上の威力と繊細さを持っていたのでした。
そこで試しに剣術や体術の教師を呼ぶと一月ほどで誰も勝てないほどの腕前になったのです。
彼は、女神の使徒様の可能性さえあります。
使徒様は、世界中を旅しながらありとあらゆる魔法と剣を使い人々に平和と癒しを与えたと伝えられています。
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