第2話 覚醒

ーー 覚醒 、感動 、そして決意 ーー


その日は、なかなか寝付けなかった。たくさんの獲物を仕留めたこととハルの旅立ちの話を聞いて興奮したのか?


夢の中で金色の小狐が僕に頭を下げ、

「命を助けてくださってありがとうございます。

お礼に僕の力を少し分けました、その世界で強く生きてください。」

と頭の中に声をかけてくる。

次の瞬間僕の60年ほどの前世の記憶が流れ込んできた。

「あー。そうだった僕の何もない人生は最後に不思議な小狐を助けたことで報われたのかな。この世界で自分らしくしっかりと生きてやるぞ。」

と改めて決意したし瞬間であった。


               ◇


10歳になった僕は、「恩恵の儀」を受けるためシスターに呼ばれ神父の元に連れてこられた。

教会で豊穣と愛を司る女神像の前に膝ま着き首をたれる、ぼくのほかに20人ほどの子供が並んでいる。


この世界では、10歳になるとこの世界の仲間入りの意味を込めて神に感謝し神の恩恵を授かる儀式を受ける。

形ばかりであるが極たまに「神の恩寵」を受ける子供がいることから無駄なことではないようだ。

神父が神に祈りを捧げた後、一人一人の頭に手を乗せ何か言葉を紡ぐ・・ からがに何かが入ってきた感覚が巡る。


儀式が終わり、それぞれ子供は家路にと向かう。僕はシスターアリアに連れられ神父の部屋に入る。

「名は何という」

神父が尋ねる

「カムイです」

僕が答える、

「先程の神義で何かを発現したようだが、何かわかるか?」

と聞かれた、そういえば何かが巡る感覚がしたな。

前世の記憶にラベノがありステイタスを唱えるようなことがあった気がしたがどうだろうと、半信半疑でステータスと呟いた。

目の前に何かが現れた、意識を凝らすとその内容が認識された。


カムイ 人 10歳 レベル 8

生命力 180(2000) 魔力 1000(1000)

力 150 敏捷性 200 知 500 器用 200

スキル 異世界知識  鑑定(極) 時空収納(極) 四大属性(極)

    剛力(中) 気配察知(中) 隠匿(上) 弓術(中)  魔力操作(中)

称号 金剛狐の恩恵


中々なチートさが有る。


「はい、鑑定のスキルをいただいたようです、後は自分の努力で魔法が使えそうです。」

と答えると

「それは女神の恩恵に違いない、精進しなさい。魔法の才能について必要であれば教会から学校にも行けよう。」

と初めて見るような笑顔で話す神父を見て、何か不思議な感覚を感じていた。

僕が異世界知識や時空収納及びかっこ内の異常な数値については話さなかったのは、あまりにも飛び抜けた力は狙われやすい世界だということを知っているから。

自分の力で生きていけるようになるまで、力は隠しておかなければならない、自分の人生を自分で決めるために。



ー シスターアリア ー


カムイが恩恵の儀で貴重なスキルをいただいたようです。この子は小さな頃より他の子供とは違い頭一つ抜け出たような聡明さがあり、何にでもそつなくこなす器用さがあったが、スキルなどをいただいたとあっては、この先どこまで成長するか非常に楽しみな子です。

ただ神父は、悪い人ではありませんが出世欲があるため、カムイを利用するかもしれません。多分それを感じたあの子は、全部をいってないことだけはたしかだわ、でも幾つのスキルをいただいたのかしら。

しっかり見守ってあげなくては、私の夢枕に立ってお願いされた、私の知らない神の頼みだからね。



ーー 神父 ハーゲン ー


教会の中でも有力な司祭のグループに属しているこの私が、いつまでもこんな田舎の神父をしていることが許されていいものだろうか、いや許されないそれこそ神への冒涜だ。


今日の恩恵の儀式で1人の子供が何かしらスキルを得たが今までの経験からしてかなり貴重か有用なスキルと思われる。

その子を使って中央に返り咲きたい、先ずは司祭に将来有望なスキルの孤児がいたことを報告し親代わりの私と共に中央の教会への移動願いを出しておこう。


 『あいつの名前は・・・何だったかな?・・・まあいいか』


ハーゲン神父は、自分の手柄のように貴重なスキルの子供を発掘した旨の手紙を中央の有力司祭に出すためせっせと大袈裟な内容で手紙を書いていたが、事実はそれ以上のスキルと可能性であったことは神のみぞ知る事実であった。


ーー カムイ ー


自分の能力を確認しておこう。

 体力、生命力、魔力とスキルがこの世界の常識であるが、魔力は限られたものしか持つことができない。かわずかしか持っていない為に使うことができないのが庶民の常識である。

特に癒しや攻撃魔法が使えるものは貴族となるか貴族のお抱えとなることがほとんどである。

 教会の書物で確認したところ、魔力が50有ればそこそこで300に到れば優秀と言われている。僕の場合既に1000でカッコ書きで1000の表記があるこれについては記載された書物はないので、特別なことであろうと考えている。

 時空収納があることはかなりこれからの生活にプラスになるが見つからないようにしなくてはいけない。

4大属性についてもこれからの練習次第では全属性の可能性が高いので魔力操作と共に練習あるのみだ、金剛狐の恩恵は多分あの時助けた狐のお礼だろう。


次の日から僕は、密かに魔法の訓練とスキルの研鑽に努力していった。

教会の生活は、朝の掃除から始まり神への祈り、朝食から水汲みや洗濯・畑仕事など生活するための作業の後狩や勉強をしながら1日を過ごす。

水汲みは僕の仕事だ、剛力があるおかげで大人以上の力で水をくみ、大きなカメにその日の水をくむ。その後薪割りなどの力仕事を終えると2・3時間ほど自分の時間が使える。

僕はその時間を使い本を読み知識を広めていたがこれからは魔法の訓練を行うことにした。

夜寝る際に瞑想と魔力の制御を訓練し魔力の質を高め、昼は四大属性の魔法を合成しながらそれから派生する氷・雷・光・闇の属性を獲得してゆく。

先ず火の属性から温度の調整を覚え水の属性と合わせることで氷やお湯を作ることができる。風の属性と水の属性で雷を作り出し、傷を治すことを具体的に想像し癒しの力を得れば光属性に目覚める。光から闇を覚えて光と闇を使い時空魔法を獲得すればほぼ全属性のコンプリートである。

ここまでに約半年を必要としたが、13歳までにはまだ時間はあると、その時まで考えていた。しかしハーゲン神父の手紙により僕の人生は大きく転換期を迎える。


ーー シスターアリア ー


 中央の教会から手紙が届いた、滅多にないことなので恐る恐る開いて読むと

  〔カムイなる教会で育てている孤児に神の貴重な恩寵ありと連絡があった。

  しかるに来年中央の教会にその子供を連れてくるように〕

と書いてある。

多分ハーゲン神父が知らせた為に大袈裟に伝わったのだと思うが、カムイの将来を考えるとどうしたものかと悩んでしまう。

そこで私は、私の恩師であるシスターカリーナに手紙を書き相談することにした。

シスターカリーナは、シスターの頂点に立つ女性でおん年80歳の生き字引のような女性である。

特別なスキルを持っていると思われるカムイのこれからの将来を考えて彼女に力になってもらうことが、最上の手だと考えた私は直ぐに行動に出ると共にカムイを呼び出した。

 「来年の春に中央の教会に行くことになりました。13歳までは独り立ち出来ない貴方にとって避けることのできない事実です。しかし私の恩師であるシスターカリーナの力であなたを守りたいと考えています、それについて何かあなたの考えがありますか?」

と聞くとカムイは

 「シスターアリアありがとうございます。僕はまだ1人で生きるには幼すぎます、しかし誰かの道具として生きることはしたくありません。可能であれば13歳までは守ってほしいと考えています。そのあとは自分で生きてゆくこともできると自信を持っています。」

とはっきりと答えた。


ーー シスターカリーナ ー


ここは、センターターク王国の王都にある女神教の総本山である中央教会の一室。

数多く居る弟子の中でも将来が楽しみなシスターの1人アリアから手紙が届いた。

内容は、アリアの世話をしている孤児の1人に飛び抜けて優秀で神の恩寵を授かった孤児がいるようで、その子が教会の神父の出世のダシに使われそうだと相談の手紙である。

ハーゲン神父の所属する司祭は、現在第二の力を持つ勢力で金を集め貴族と必要以上の繋がりを持とうとする一派である。そのことを考えてもマリアの言う孤児がその道具となることは許すわけにはいけない。そこで私はその子供を私付きの見習い神父にするため教皇に許可を求めることにした。


ーー 教皇カナリア ー


第24代教皇の私は頭の上がらない者が少なからずいる。

その最大にして身近な人物シスターカリーナからあるお願いがなされた。

片田舎からこの中央教会に召し上げ予定の10歳の孤児をシスター専属で教育したいと言う。

この子は神の恩寵を受けたと噂のある孤児でカネアール司教の方から情報が持たされた孤児で、カネアール司教が直接教育したいと申し出ている。どうしたものかではなく答えは決まっている。


私は直ぐにカネアール司教を呼びつけ

 「呼びつけた孤児については、シスターカリーナの手で教育することが決まった。カネアール司教の貢献は大きなものとして記録しておくのでその旨了解してもらいたい。」

と伝えると司教は、予想以上の貢献度に喜びを隠せない様子であったが特に何も言うこともなくそのように決まった。


ーーカムイ ー


シスターアリアから中央教会に行くことは確定済みだがその先の世話になる相手は、シスターの恩師のシスターカリーナに決まったと話を聞かされた。

これで特に悪いことはないと考えるが、備あれば憂いなしでそれまでにできるだけ自分の能力を上げることに邁進することにした。


現在のステータスは

カムイ 人 10歳 レベル 15

生命力 350(2000) 魔力 2500(1000)

力 300 敏捷性 400 知 800 器用 380

スキル 異世界知識 鑑定(極) 時空収納(極) 四大魔法(極)

    属性魔法 氷・雷・光・闇・時空(中) 回復魔法(上) 魔力操作(上)

    剛力(上) 気配察知(上) 隠匿(上) 弓術(中) 剣術(中) 体術(中)

    状態異常耐性(上)

称号 金剛狐の恩恵


で、回復魔法(上)はかなり上級の教会関係者でも数は少ない。

四大魔法と属性魔法が使えることができるようになって、森で魔物を狩ることがたやすくなりレベルが15まで上がった。

魔力2500は、宮廷魔法師のトップクラスを凌駕する。前世で剣道と柔道をしていたことが関係しているのか剣術と体術のスキルが直ぐに身についた。


時空収納は、かなりの容量の収納魔法で時間停止の効果があるようだ。

現在飛行魔法と転移魔法を練習中でこれらを取得することができれば怖いもの無しに近づくことができる。

状態異常耐性は、魔物から噛まれたり毒を吐かれたりした為少しずつ耐性がつき始め今ではこの周辺の魔物では問題がなくなったがこれも高い生命力のおかげだと思う。


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