神の加護を得て転生。〜神の使徒になる。
モンド
第1話 プロローグ
ーー 出会いと別れ ーー
「今日は3月20日、あと数日後には私も定年退職か。」
私は、とある出版会社に努める普通のサラリーマン。
何時もの満員電車に揺られ会社に向かっている。
数日後には定年を迎える、そんな自分は今まで何を夢に生きてきたのだろう?と吊り広告の「夢に向かって走れ、新成人たち。」とのキャッチコピーを見ながら考えていた。
「何もないな、私の人生に自分で決めたものすらなかった。もし生まれ変わるなら自分のために生きて見たいな。」
と漠然と思いながら車窓の窓から外を見ていると、何かが光った気がした。
「ん。」
それがとても気になった、私は次の駅で思わず電車を降りていた。
「まあいいか、一回ぐらい休んでも」
と言い訳を口にしながら、さっき見ていた方向に歩いていった。
人の流れに逆らうように歩いて行くと、なだらかな坂が続く住宅街に着いた。
そのまま気の向くまま道を進むとこんもりとした小山が見えてきた、その頂上には赤い鳥居が見えるので何かの神社だろうと思う。
私はそのまま急な階段を登り、鳥居をくぐると後ろを振り返った。
息を飲むような景色が目の前に広がっている、こんな都会の片隅から海の見える場所があるなんて。
感動のようなものが湧き上がってきたが、直ぐに不穏な声が耳に入ってきた。
獣?犬か何かが唸っている?
境内の中に入るとちょうど社の裏手に野良犬と金色の何かがいるのが見えた。
そっと近ずくと、それは小狐のようで野良犬が今にも襲いかかろうとしているところだった。
私は思わず、野良犬と小狐の間に飛び込み小狐を抱きかかえていた。
獲物を横取りされた野良犬はさらに怒り、私に飛びかかり噛み付いてきた。
逃げるように階段の方に走る私、しかし足も攻撃力も犬の方が断然上、足を噛まれ転んだ私の上に覆いかぶさってきた犬は私の喉笛に噛み付いてきた。
痛みと必死さで犬の腹を蹴り上げ後方の階段に蹴落とす、しかし食い込んだ牙は私の頚動脈を切り裂き長くもない私の一生を終わらせた。
その後小狐や野良犬がどうなったのかわからない。薄れ行く視界の中に光が見えた気がした。
◇
・・ 社から降り注ぐ光に包まれてその男性の体は消えていった。
男は、絵も言われぬ空間に魂として招かれ、新しい転生先と希望を聞かれていた。
「自分の意思で生きていければ何処でも・・」
分かった、少しお礼がてらお前の希望を叶えてやろう・・・
ーー 生まれ変わった厳しくも充実した世界 ーー
「あっ、痛。」
転んで擦りむいた膝をさすりながら僕は立ち上がった。音を殺し山の中を歩いている僕は、手に弓を持っている。
今、僕らは狩りにきている、僕の役目は逃げてくるウサギや鳥を弓で仕留めること。
追い立てられた獣がこちらにかけてくる気配を感じ、通り道に弓矢を構える。
息を潜め、狙いを付けて静かに息を吐く僕。
「どっ。」
という音とともにウサギが飛び出してきた、迷わず弓を放つ。矢は眉間を貫きウサギの生を狩る。
既にウサギ3羽に山鳩5羽を仕留めた、今日は大量だ。
仲間の子供らが集まってくる。
「おい、カムイ、今日は調子いじゃないか。」
リーダー格のハルが声かける。
「うん、今日はたくさん取れたからシスターも喜ぶね早く市場に行こうよ」
とカムイと呼ばれた僕は、そこに集まった5人に声かけて山を降り始める。
この付近の山は、小物だが獣がたくさんいて増えすぎると畑を荒らすのでこうして子供でも狩を許されている。
僕らは街の中にある教会に拾われた孤児である。
一番歳上はハルで12歳、次がメイとヒロの11歳次に僕カムイが10歳、一番下がカイの7歳だ。
こうしてみんなで狩をして市場や教会に獲物を持ち込みその日の食事の足しにしたり、お金に変えて教会の修繕やその他諸々の足しにしてもらっている。
教会にはシスターが3人おり、いずれも優しく温かく子供を育てている。
神父は月に一度大きな教会から来てミサや布教活動を行なっているが、あまり子供には興味がないようだ。
「シスターアリア、今日は大量だよ。」
帰ってきた子供らが教会の入り口を清めていたシスターに声をかけながら走ってくる。
「それは良かったわ、誰も怪我してませんか?」
と答えるシスター。
もう少しで夕時のこの時間帯は、赤い夕日が教会を照らしてとても綺麗に見える時だ。
教会の鐘が夕時を知らせる。
みんなで夕食、神に祈りを捧げ今日の糧に感謝し、食事をする。
質素であるが楽しく満ち足りたひと時、そんな中シスターアリアが、ハルに
「もうすぐ13歳ですね、何処で何をするかもう決めましたか?」
と聞く。
この世界では13歳は大人の仲間入り、自分の将来を考えどの親方について修行するかまたは、学校や教会に入りその道の勉強をしたりする。
ハルは来月13歳になる、するとハルははっきりとした声で。
「俺は、鍛冶屋の親方に弟子入りするつもり、もう親方にはその思いを伝えた。シスター達がいいなら来月から住み込みで来いと言われた。」
と答えた。
「そう、知らなかったわ。自分で決めた人生、決して違えてはいけませんよ。」
シスターアリアが優しく答える。
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