第4話

「ただいま…って、まだ寝てるか。」

黄月おうげつの挙動に身の危険を感じた僕は、自分の部屋へと戻ってきていた。

ホールに行ってからかなり時間が経っていたけれど、それでも黒月こげつは眠っていた。

可愛い。

でも、時々不安になる。

このまま目覚めなかったらどうしようって。

そうなったら僕はきっと、しばらく何も出来ないだろう。

そしてそのまま、何もしないまま、死んでしまうんだ。

ただ一つすることと言ったら、なんだろう。

気が狂ってしまえば君を蘇生しようとするだろう。

魂が抜けたようになれば君を忘れてしまうだろう。

放心状態になれば君を求めるだろう。

そして君がもういないと分かれば、君の後を追って自殺するだろう。

もし自分から死を選ぶのならば、きっと自然と笑顔で死ぬだろう。

そんなもしもを考えるたび、僕は君に、すがってしまうだろう。

そうしたら君は、自分もだと言って、僕にすがるだろう。

お互いにすがって、求めて、酸素と同じように、なくてはならない存在にまたなっていく。いつだってそうなんだ。

「ん、白月しげつ…?」

黒月こげつがゆっくりと目を覚ます。

「ん、おはよう、黒月こげつ。よく眠れた?」

「うん…。」

その声を聞いて、僕は今日も安堵あんどする。

今日も生きてる。

今日を生きてる。

ね?大丈夫。

何処かで自分がそうささやく。

まだ眠そうな黒月こげつはまた眠りにつこうと目を閉じる。

それを見届けると、ホールの方から紅月こうげつの声が聞こえた。

「おーい。白月しげつ~。黄月おうげつの心に光ともしてくれ~。あいつ死にそうになってっから。」

またかぁ~。死にそうになりすぎてて心配になるなぁ。

「ええ~。また~?まったく…。僕の…じゃなくて、紅月こうげつの能力、そういう使い方すると思ってなかったんだけどなぁ…。」

途中で言い直したのは、今僕の持っている【光をあやつる能力】が、元々は紅月こうげつの能力だから。

僕ら現星奴知家せやちけの五人が集まった日に、紅月こうげつが分け与えてくれた、それぞれの色にあった、性格に合った能力。

ホント、分け方が天才的だよね。

「うううううう…。もう無理ぃ…。青月せいげつに嫌われたぁ…。もう無理ぃ…。死ぬぅ…。あうううぅぅぅぅ…。」

ああ~黄月おうげつ本当に死にそうになってる…。死ぬって言っちゃてる。

「な?ひどいだろ?」

「確かに…。思った以上だね。うん。じゃあ、ともしてあげようか。」

そう言って、床に思いっきりうずくまっている黄月おうげつの心に光をともしてあげた。

「あううう…。白月じげづありがどうぅぅぅ~。」

泣きながらすがりついてきた黄月おうげつを見て、思わず笑みがこぼれる。

「ふふっ。そんなにかい?黄月おうげつ本当ほんと青月せいげつが好きなんだねぇ~。」

そう言って、僕は黄月おうげつを抱き締める。

もちろんこれは、兄としてだ。

僕の恋人は、生涯、黒月こげつただ一人だけって、決まってるんだから。

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