陰陽師で聖職者で厄災級悪魔・七つの大罪・怠惰の封印者にして世界最強の力を持つ俺は楽しい日々を過ごしたい

復讐～地獄門を添えて～

　聖者・エルホンス・サキレントス・カレント。

　彼は七つの大罪・怠惰封印作戦にて多大なる功績を残し出世した人物であり。陰晴の母親を生贄とするために殺した明確なる、それこそ吐き気を催す邪悪である。

　当たり前の話であるが陰晴が心の底から殺したいと思っている人物の一人である。

　そんな彼は今、とある任務にて、陰晴が住まう町に来ていた。（陰晴が住んでいる町だとは知らない）

　その任務とは最近ようやくおかしな動きを見せるようになり、その居場所を探し出す子

ことの出来た死霊王の使いの戦力確認及び殲滅である。

　任務内容としては死霊王の使いが何かおかしな動きをし、この世界の均衡を崩すようなことをしていた場合。それが手に負える物であれば殲滅して排除。手に負えないようであれば応援を呼び殲滅というとても単純明快な任務であった。

　任務内容自体は聖者であり、圧倒的と言っていい程の力を持つエルホンス・サキレントス・カレントにとっては本来であれば簡単な物であった。

　そう簡単なものであるはずだった。

　しかし。彼は知らなかった。この町に自分を心から怨む厄災級悪魔・七つの大罪・怠惰の封印者にして元陰陽師で元聖職者である最強の存在がいることを。

　彼は知らなかった。その最強の存在が死霊王の使いを壊滅させて私物化しているという事実を。そして彼は知らなかった。自分がこの町に来させられた、任務を与えられた理由が自分を怨む知り合いが自分を殺すために裏で手を回していたという事に。

　彼はまだ何も知らなかった。

　そして知らないというのは酷く罪であった。

　――――――――――――――――――

「ハア。いくら神の命とはいえ、何故私がこのような日本の町にある左程大したことの無い組織の相手をしなければならないのだ。全く持って面倒だ」

　聖者・エルホンス・サキレントス・カレントは聖者という名前が似合わない程に傲慢であった。

　彼は力を持っていた。たった一人で超級悪魔を滅せられる程の圧倒的な力を。教会内部でも聖者という高い地位を持ち。あの事件以降は求めるもの全てを手に入れてきた。

　だからこそ傲慢になり慢心していた。もちろん昔はそれこそ、あの事件前は慎重で謙虚な性格であった。しかしあの事件、いや厄災級悪魔・七つの大罪・怠惰封印という大義名分の元。自分の初恋の人を殺した、あの日から彼は狂っていた。狂ってしまった。

　狂わないと正気を自我を保てなかったのだ、そう思うと何とも哀れなことである。

　傲慢というのは彼の身を破滅へと確実に近づかせていた。

　そんなわけで傲慢になり慢心した彼はろくに下調べもせずに、渡された情報をうのみにしてたった一人で死霊王の使いの本拠地に単身で乗り込み、返り討ちに会った。

　当たり前のことだ。彼は強い。たった一人で超級悪魔を滅せられる力を持つ。しかし死霊王の使いは少なくとも元から超級悪魔が２体襲いかかってきても滅せられる程の圧倒的な力を持つ組織であった。

　それが陰晴の眷属となり、更に強くなり、その上でとある事情により陰晴の眷属が他にもいたのだ。

　それは精々超級悪魔を一人で一体しか倒せない雑魚が勝てるわけがないというのは至極当然、当たり前の話であった。

　本来ならばここで聖職者嫌いの主様を知っている眷属は侵入者を無慈悲かつ無残に殺していた。

　しかしとある理由から見逃せという判断が下された。

　その理由は主様直々にその屑に悪に更なる地獄を見せる為であった。

　そんな裏事情など知らずに返り討ちになった聖者・エルホンス・サキレントス・カレントは自分の命を守るために逃げていた。

　ひたすらに逃げた。

　命からがら逃げ出した。

　それはもう全力で逃げ出した。

　走って走って走って、恐怖に心臓がけたましく音を立てる。

　自分が何故殺されかけたのか、負けたのか。その意味を問いただしながら走って走って走って、走る。

　本来ならば自分の力で勝てるはずだった。

　この聖者である自分がまける筈などなかった、なのに。にもかかわらず負けた、殺されかけた。あそこにいたのは想像以上の化け物たちだ。それにあの化け物は何故か全員が超一流以上の陰陽道のようなものを扱い、全員が同レベルかつ超一流以上の近接戦闘技術を見せた。

　はっきりいって、それは異常いがいに何物でもない。

　彼は心の底から恨み言を吐く。

　下手な情報を持ってきたクソったれたごみ情報部に、自分を殺そうとしたあのクソったれた化け物共に。戻ったら情報部のごみ共を一掃して応援を呼び、あの化け物共を蹂躙しよう。そう決意をした。

　しかしその決意は一生果たされないこととなる。

　目の前にそれはいた。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。エルホンス・サキレントス・カレントおおおおおおおおおおおおおおおおお。お前とこんな形で会えるとはな嬉しいよ。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

　そう狂ったように笑う少年が彼の目の前にいた。

　その少年はそれはもう恐ろしく歪んだ笑みを浮かべて自分のことをまるで親の仇を見るかのような恐ろしい程の殺意と憎悪を悪意がこもった眼で見ていた。

　彼は一瞬その子供が誰なのか分からなかった。分からなかったがしかし彼の腕を左腕を見た瞬間に理解した。

　そう、その子供は不可侵略の怠惰にして自分が絶対に出会ってはならない存在。自分を心の底から憎み怨み殺害を願ってる存在。

　そして今の自分では逆立ちしたって、土下座したって何をしても絶対に勝てない圧倒的な力を持つ格上の存在であることに。

　それを理解した瞬間に彼は逃げた。

　全力で走って逃げた。

　逃げなければ殺されると思ったからだ。戦えば殺されると思ったからだ。

　だから逃げた。全力で逃げた。恥もプライドも殴り捨てて、高校生という子供相手から見っともなく逃げた。

　走って走って、走りながら彼は考える。

　何故こうなったかと。自分が何をしたのかと。この町にあの化け物が不可侵略の怠惰がいるというのならば絶対に向かわなかった。

　そもそも論として死霊王の使いという組織があんなに強いのならこんな任務受けなかった。自分が貰った情報では死霊王の使いという組織は精々上級悪悪魔３～４体分程度の戦力しかないと知らされていた。

　それなのにだ。蓋を開けて見れば自分には及ばないものの近いレベルの存在が化け物が何人もいて、あっけなく負けた。

　情報を渡してきた、あのくそ女をぶっ殺す、そう思いながら帰ろうとしたら不可侵略の怠惰にあった。

　意味が分からない。

　いや。待て。分かった。分かってしまった。

「あの。クソアマ～～～～～～～～～、俺を嵌めたな～～～～～～～～～～～」

　グチャ

　叫んだと同時に俺の足が吹き飛んだ。

「あああああああああ。いてえええええええええええ。痛い。なあ。許してくれよ。俺は別に」

　グチャ

　いきなり喉が潰れた。

　声が出なくなった。

　ドン

　殴られる。

　脳が揺れる。思考が上手くまとまらない、ああ、痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

　苦しい。

　ドン

　・・・・・・・・・・

　ドン

　・・・・・・・・・・

　ドン

　・・・・・・・・・・

　ドン　

　・・・・・・・・・・

　ドン

　・・・・・・・・・・

　ドン

　音が響く響く響き渡る。

　一体いつまで続くんだ。この苦しみは。助けてくれ。もう死なせてくれ。

　ああ。痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

　痛くない？

　何だ身体が急に治った。

「ぐあああああああああああああああああ」

　痛みが走る。更に激痛が走る。

　痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。

　痛すぎる。さっきよりも痛い。苦しいとか辛いとか、そんな、生易しい言葉で表現できないような激痛が走る。

　助けてくれ。助けてくれ。助けてくれ。

　俺が何をしたというのだ。

「地獄門」

　目の前に門が現れた。

　その門から急に手が伸びる。

　伸びて俺を掴む。

　激痛が走る。

　そして本能が細胞が理解する。この門の中に入っては駄目だと。

　この門は確実にヤバい門だと。

　入ったら最後、俺は俺の罪を清算し終えるまで一生囚われることになると、地獄という言葉がこれ以上似合わない程に地獄のような、否、地獄で地獄の苦しみを受けることを。

　だかたなくなってしまった両手足をの代わりに胸を動かして這うように逃げようとする。

　あの門から逃げようすつ。

　しかし、逃げようとしても手が俺に絡みつき逃げられない。

「お前は、罪を犯した。地獄に落ちるに値する罪を犯した。我が地獄の門から逃げきれると思うなよ」

　おそろしく低く無機質な声が頭に響き渡る。

　罪を犯しただと。

　ふざけるな、俺は俺は俺の為に生きて来ただけだ。

　何も悪いことはしていない。

　俺は俺は俺は・・・・・・・・悪くない。

　だから助けろ。誰か俺を助けろ。

　助けろ助けろ助けろ助けろ助けろ助けろ助けろ、助けろよ。助けてくれよ。

　そう叫ぼうとしても声は出ない、今もあの門は自分を飲み込もうと刻一刻と迫っている。

　神よ。神よ我を助けたまえ。今まで神にこの身を捧げて来ただろ。だから神よ俺を助けろ。助けてください。

「キャキャキャキャキャキャキャ」

　頭に不快な笑い声が響く。

　そして気が付く俺の体のほとんどが門に吸い込まれているという事に。

　神はいなかった。

「嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。この門の中は嫌だ～～～～～～～～～～～」

　何故か門の中に引きずり込まれる時には体が治っていた。

　だから声が出た、そして理解をした。何故体が治っていたのか。それはより俺を苦しめる為だと。

　バタン

　そして門が閉じた。

　「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

　溶ける。

　溶ける。

　全てが溶ける。

　俺は俺は俺は・・・・・・・・・・・・

　かくして、聖者・エルホンス・サキレントス・カレントは後悔の後、自我を失った。

　しかし、地獄においては、自我を失うという逃げが許されるはずもなく、自我の再生が行われる。

　その身ではいまだに罪の償いが行われている。

　かくして陰晴の復讐が一つ終わった。

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　次回は陰晴のサイドから立って復讐シーンを書きますので。楽しみに待って頂けると嬉しい限りです。

　補足説明

　地獄門・・・地獄への門を開ける禁忌に指定されている陰陽道の一つ。

　　　　　　　この術の効果は至極単純、地獄への門を開くということ、そして地獄の門は地獄に落ちるに値する罪人を強制的に地獄へと引きずり込んで、罪に応じた罰を与える。

　その罰の内容は到底人間が理解できるような生易しいものではなく、ひたすらに残酷で恐ろしいものである。

　地獄にて罪に応じた罰を全て受けきったらば現世へと戻される。

　ただし、地獄に落ちる程の罪を犯している時点で現世に戻るまでに必要な清算にかかる時間は最低でも１００年。

　現世に戻ればリアル浦島太郎＆地獄で味わった苦痛から精神は完璧に崩壊、廃人となり何も出来ない、ただの生きているだけの肉塊となる。

　まあ、つまりめちゃくちゃエグイってことです。

　ただし、当たり前の話、罪を犯していても、それ以上の善なる行動を行っていたり、その罪を相手が心の底から反省をして懺悔している場合等は地獄へと落とされない可能性が非常に高い。

　つまり、全部が全部、復讐相手を地獄門へは突き落とせないということです。

　以上。補足説明終わり。

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　復讐最高と思ってくださいましたら、星やハートを入れて頂けると嬉しい限りです。