聖なる力の覚醒

 午後の授業は特に何もなくあっという間に終わり、放課後となった。

 放課後。

 それは一緒に帰ろう戦争の勃発だ。


 猫子に白木さん二人とも帰り道はある程度の所までだが勇気と同じだ。

 つまり、どちらと一緒に帰るかで揉めるのだ。さあ、これはどっちが勝つかな。非常に楽しみだ。


 なんて思っていたが、揉めませんでした。普通に三人で仲良く?帰りましょってことになりました。まあそりゃそうだよな。帰り道一緒なんだから。


 以上、終わり。


 いや、何も終わってないよ。むしろここからだよ。帰り道でどちらが勇気をキュンキュンさせれるか。どちらが勇気の好感度を上げれるかという戦いが始まるよ。

 まあ、俺はそれをサクッと家に帰って眷族の視界をテレビにでも共有させて、ポテチとジュース片手に笑いながら鑑賞しますか。

 我ながら良い性格しているな。

 さて、じゃあ適当に隠密技でもかけながら猛ダッシュで帰りますか。まあ、転移で帰っても良かったがアレは少々疲れるのでな。


 ――――――――――――――――――

 というわけで3分程で家に到着する。


「イト、ポテチとジュースに眷族視界共有をテレビに接続するのを頼む」


「もう用意してありますよ」

 流石イトだな。俺のことをよく分かってる。まあ普通に思考共有で思いを伝えただけだけど。


「おお。流石イトだぜ。じゃあ一緒に三人の帰り道でも見ますか」


「はい。そうしましょう」


「じゃあ、取り敢えず俺は手洗いうがいしてくるから、先にソファーに座って見ててくれ」


「じゃあ。先に見ておくね」

 イトのその返事を聞いたら洗面所に行き、手洗いうがいをしっかりとする。

 正直今の俺が病気とかにかかるのは想像できないのだが。というかかからないのだが。何か小さい時からの癖で家に帰ったら手洗いうがいをしないと気持ち悪いというかムズムズするからやっている。


 皆も手洗いうがいはしっかりやろうね。

 そんなわけで手洗いうがいをしっかりとしたらイトの隣に座りテレビを見始める。

 そこには想像以上に面白い絵が取れていた。


 ようは、下級悪魔が10体も群れになって勇気に白木さんに猫子に襲いかかっていたのだ。

 まあ、そりゃそうだよなって話やな。

 だって白木さんはまだ霊力を隠せてるけど、勇気は霊力に聖力駄々洩れだもん。基本的に悪魔や妖怪はそういう霊力に神聖力に引き寄せられる性質を持っているんだぞ。


 それはもちろん、上級悪魔とか上級妖怪のようにある程度知恵の回る存在は勇気についてる監視に驚き、勘繰り襲いかからないだろうけど。一部の例外は除くが。そんでも下級悪魔なんかの知能のない存在はただ力を求めているだけだから、普通に何も考えずに襲いかかって来るからな。


 さてと、これはどうなるかな。

 正直な話、白木さん戦闘センスが壊滅級だからな、多分相手に出来ても3、4体、勇気はまだ力に目覚めたばかりで不安定だから5体以上となると事故りそうだな。


 そうなると。猫子にも下級悪魔が襲いかかって来るんだよな。

 ぶっちゃけ猫子強いから下級悪魔程度だったら1000体いても勝てると思う。でもここで力を明かして大丈夫かな。いやでも力を明かして勇気に近づくという手も、う~わ~、面白くなってきたよ。

 さあ、猫子はどんな判断を取るかな?

 楽しみだ。実に実に楽しみだ。


 ――――――――――――――――――

 勇気サイド

 ――――――――――――――――――


「クソ。何だこいつ等は、いきなり現れやがって」


「勇気君、コイツは下級悪魔よ。でも10体は流石に分が悪いわ、それに今は猫子さんもいる。私と勇気君で猫子さんを守りながら戦わなければ」


「ああ。そうだな。大丈夫だ猫子。絶対に俺が守ってやるからな」

 勇気はそう言って猫子の肩を抱き寄せた。


 そうして勇気の腕の中にいる猫子は悩んでいた。

 今。自分の力を発揮するか否かを。


 自分は強い。才能という点で言えば勇気が圧倒的に上であるがしかし。今現在の能力値で言えば勇気の圧倒的に格上にいる。

 今襲いかかって来ている下級悪魔程度ならば100体来ても皆殺しに出来る自信がある。


 それでも、それをしたら。勇気に自分の力がバレてしまう。そうなったら、何て言い訳をする?

 陰陽師は白木という陰陽師がいるから無理だ。聖職者はそもそも論として聖力を持っていないから無理だ。じゃあ。超能力者や魔術師も流石に不自然過ぎる。いや、やろうと思えば超能力者だったらマネできるかもしれないが本物とあった時に簡単に露呈してしまう可能性がある。

 どうしようか。


 ・・・・・・・・・・


 しょうがない。ここは一旦様子を見て適当に怖がりつつ。本当に危なくなったら助けよう。


 猫子はそう結論を出した。


「ありがとうございます。勇気さん」

 猫子は勇気に向かって上目遣いかつ震えて涙目になりながらそう言った。恐ろしく上手い演技だ。女優なれるよ猫子。


「よし。覚悟しろ下級悪魔め。うおおおおおお」


 勇気は大きく声を上げて自分を鼓舞しながら下級悪魔一体に殴りかかろうとした。もちろん普通であればいくら才能があれどつい最近能力に覚醒した人がまだ技すら覚えてない人が下級悪魔を殴った所で意味はない。むしろ返り討ちあうのが普通であった。

 しかし。ここで都合よく勇気は覚醒する。


 バン


 そうして勇気が放った拳から莫大な聖力が溢れ出して。10体全ての下級悪魔を滅ぼした。

 うん。何ともまあご都合主義過ぎて。主人公過ぎてビックリな展開である。


「今の力は一体」

 そう呟く勇気に対して、猫子はその力が現教皇の孫である為に出現した力だと瞬時に理解する。しかし、それを言えるわけはなかった。だから猫子は皮をいや猫を被ってこう言った。


「勇気さんはもしかして超能力者何ですか?」

 と。


「超能力者?いやいや。そんなんでもはないはずだよ、多分陰陽師的な力なはず?だよね白木?」

 勇気は超能力者といきなり言われて少し戸惑いそう口走ってします。そんで思いっきり話を振られる白木さん。

 しかし白木さんは今勇気に出現した力が陰陽師的力及び霊力的な力ではないことを感じ取っていた。

 だから首を縦に振れなかった。


「いや。私にも分からないわ。その力は陰陽師の力ではないわ」


「え?じゃあ今の力は一体何なんだよ?もしかし本当に超能力か?」

 否。聖力である。


 しかし。二人は知識がないためその事に気が付かない。流石に聖力と超能力をごっちゃごっちゃに混ぜられたら敵わないと思った猫子だが、別にそれを指摘する必要は自分にはないかなと思ったので言わないことを決める猫子。


「流石です。勇気さん。カッコイイです。一生愛していきます」

 猫子はそう言って勇気に抱き着く。


 そっからそれに嫉妬した白木さんも抱き着き、最終的に三人で軽くイチャつきながら帰り道に着いた。


 ――――――――――――――――――

 主人公サイド

 ――――――――――――――――――

「なるほどね。そう言う終わり方したか。これまた何ともご都合主義やな。ここで聖力の覚醒か。つかここまで派手に覚醒したらある程度の能力持った聖職者が近くにいたら気が付きそうだな。

 うん、まあいっか聖職者は別にそこまで腐った組織ではないし、一般人に危害を加えるような真似はせんだろうからな、問題は悪魔組織とか超能力者軍団とか、非合法組織とかだな、でもこれも正教会がいたらある程度抑止力になるかもな。うんいいかもしれんな、知らんけど。まあ最悪何かあったら俺が全てぶち壊せばいいしな」


 ――――――――――――――――


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