猫子猛アタック

 勇気が実は安倍晴明の血を引いていたよ大事件の夜。俺は家に猫子を呼んだ。


「どういう用件で呼ばれたのでしょうか。主様」

 猫子。身長は150センチほどで胸はなく、元気娘でなんかこう男に媚びる動作、いや男がその気になってしまう距離で活発で愛らしい女性を演じるのが相当に上手い。戦闘能力は上級悪魔2体分と、まあ、そこまで強くはない。

 うん、今回の任務にピッタリだな。それに俺の眷族の中でも数少ない人間の眷族だしな。まあ、もちろん俺の眷族なんで悪魔の力が入っているが。身体は完全に人間の物だし。子供を作ることだってしっかりと出来る。

 やっぱり今回の任務にピッタリ100点だ。

 最悪、もしも勇気がその若き欲を暴走させて妊娠ってなれば、むしろ都合がいい、最高に良い。だって適当に猫子金持ちな上に両親は何故か理解がある設定にすれば責任感の強く優しい勇気のことだ、なし崩し的にそのまま関係を続けてからの結婚で更に恩を売ってガチガチに縛り付ければいい。


「お前に命令があって呼んだ。それはだな、俺のクラスにいる男子、佐藤・勇気に媚び売って監視しろ、上手く行けそうなら付き合え。そのまま流れ的に上手く行って結婚するとかなれば結婚してもよし。何なら妊娠しても良い、こちらで別途偽装両親なりお金を用意してやる。他に、お金や何かイベントを起こす為に俺の眷属の力が必要なら別途、連絡してこい支給、ないし眷属派遣を行う。取り敢えず最初の軍資金としてお前の住んでいるアパートに1000万円置いておいた。足りないようだったら言え」


「はい。え?本当に良いですか、そんな、願ったり叶ったりな命令。というかどういうことですか?そんな命令を下すなんて?」

 驚いて目をぱちぱちさせながら俺に言う猫子。

 つーか、願ったり叶ったりて気があるのかよ。まあ、でもイケメンで性格の良くて天才で文武両道で神から愛されたような勇気だ。まあ猫子も年頃の女の子だし気が合ってもおかしくはないか。というか普通だな。

 何だよ猫子、案外可愛い所あるな。いやまあ、イトが一番可愛いけど。


「ああ、まあ実はだな、佐藤・勇気が安倍晴明の血を引く者だと分かってな。しかも才能はめちゃくちゃあるぞ。多分潜在的な才能だけでいえば俺と同等、いや俺以上だ。流石にこれを放置するのは色々と問題があるんでな。その為の監視役として猫子を選んだわけだ」


「え、え~~~、あの安倍晴明様の血を引かれているのですか。しかも主様よりも上の才能って、とんでもない優良物件じゃないですか」

 めっちゃ興奮して目キラキラさせる猫子。


 正直ちょっとウザイ。まあ、でも陰陽師にとって阿倍野清明は神だからな。ちょっと分からないでもない。

 まあ俺にとっての神はイトだけどな。もちろん安倍晴明を信仰してないわけではないが。陰陽師に裏切られた俺としてはあまりいい思いはしない。


「まあ、そういうことだ。てなわけで頑張って佐藤・勇気に取り入れ、もし、上手くいけたら。お前の両親を殺した妖怪がいると知っていて時間稼ぎの捨て駒の為にお前らを寄越した陰陽連の上層部の奴を殺すのを手伝ってやる」


「え、良いのですか、絶対ですよ、絶対ですからね」

 俺のその言葉に目をキラキラに輝かせる猫子。どんだけ復讐したいんだよ。まあ気持ちは分からなくもない所か滅茶苦茶分かるが。


「ああ、絶対だ約束してやる」


「ありがとうございます。主様」

 さてと、後は情報担当の眷族に勇者の家族を調べてもらうと同時に護衛に付いてもらうか。

 それと学校のほうにも眷属を増やすって命令してと。

 まあ、取り敢えずはこんな所かな。


 ――――――――――

 次の日


 案の定勇気は白木さんと付き合ったのかと質問攻めにされたが。勇気はそのことをきっぱりと否定した。ついでに白木さんもきっぱりと否定した。多分昨日のあれは安倍晴明の血を引く件に関する問題だな。でも、それなら、なんで上級悪魔が現れた?まさか、白木さんが呼び出したはないか?いやでもそんな性格の人じゃないし。じゃあ誰が?


 ・・・・・・・・・・・・


 まあ、過ぎたことだし気にしないくていいか。それに俺の勘があまり考えすぎるなと言っている。俺は自分の勘には正直な男なんでな。

 そう考えをまとめて、席についてから白木さんが付き合ってないと知り狂乱して喜んでいる越田を落ち着かせようとした時だった。


 隣のクラスの猫子が早速うちのクラスにきて、勇気に駆け寄る。

 そしてクラス中に聞こえる大きな声で言った。


「勇気さんは白木ちゃんと付き合ってないんだ。じゃあ、勇気さん、私と付き合ってよ」

 猫子が勇気の腕に絡みつきながら可愛い甘えた声でそう言った。これにはクラスの皆はビックリ。俺は一人で作戦が上手く行きそうだなと心の中でにっこり。

 ついでに越田も白木さんのライバルが減りそうなのでにっこり。


「え、あの、えっと、あの」

 お、あの勇気がかなりしどろもどろになっている。これはワンチャン付き合えそうだな。つか勇気思った以上に女性耐性低いな。いやまあ高校生で女性耐性高かったらそれはそれで凄いけど。というか問題やけど。大問題やけど。


「あ、ごめんね、いきなり告白なんてして、返事は今はいいよ。でも、私は勇気さんの事が大好きなんだよ。だから例え振られたとしても諦めないから。それとこれ、いつも勇気さん購買のパンで済ましてるじゃん、だから勇気さんの為にお弁当作ってきたんだ。良かったら食べてね、もし気に入ってくれたらこれから毎日作ってあげる」

 勇気の机の上に猫柄の可愛らしい袋に包まれた弁当箱を置く猫子。


 上手いな猫子。まず一旦告白の返事を保留にさせることによりその場で即振られるという悲しい事故を起こさないようにすると共に勇気の頭の中に告白保留というのを残しずっと自分の事を考えさせるようにする。

 更に例え振られても諦めないからという言葉で、振られても監視は続けられるように予防線を張っている。

 ついでにいえば、もし振られてもまだ、チャンスがゼロになってるわけではないので、付き合いを続けて好感度をあげていきあわよくば付き合おうともしている。

 そして、極めつけはお弁当、基本的にお弁当を可愛い女の子に作ってもらって喜ばない男子はいない。これは断言できる。という訳でまず胃袋を掴みにきたと。

 策士だ。舐めてたわ、猫子の凄さを。俺の眷族ながら尊敬するわ。マジで凄いよ。本当に凄い。


「あのう、ありがとう」

 かなり照れながらそう言う勇気。それはまあ照れるわな。これで照れなかったら男じゃないよ。


「どういたしまして、あ、そろそろ授業があるし教室に戻るね、休み時間になったらまた来るから」

 そうニコッと笑ってからウインクをして猫子が教室を出た。


 そしてドアがしまると、男子の皆さんから羨ましいぞとか、末永く爆発しろとか、流石勇気とか、付き合ってそのまま押し倒してしまえとか、ヤジ飛ばされまくった。

 そんな様子にちょっとまんざらでもない勇気、まあ、そうだよね、美少女からあそこまで好意を持たされて嫌な気持ちはしないよね。


 ――――――――――――

 面白いと思って頂けると嬉しい限りです。


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