外伝・白木 香とお父様


 白木 香サイド


 私は今日中級悪魔と戦っている時に助けられた。

 そのことはとても嬉しかったし、ありがたいことだけど何もあそこまで怒鳴らなくても良いと思う。

 それに私が本気をだせば、奥の手を使えばどうにかなったと思う。だからあんな酷い言い方をしなくてもいいじゃない。

 でも、私を助けてくれた人はとても強くてカッコよかったな。

 少なくとも中級悪魔を霊弾一発で簡単に消滅させる実力、私を怒鳴った時に見せたあの力の圧、腰にある小剣から感じる力。

 どれをとって見ても私が今まで見た中でもトップクラスだった。

 おそらく、あの人の実力は最低でも上級、いや超級陰陽師レベルはあると思う。それくらい強かった。

 その上で私は不思議に思った、初めて見たなと、これでも家の関係でかなりの上級陰陽師・超級陰陽師と関りがある、そんな私があの人のことを初めて見たし、噂すらも聞いたことなかった。

 だから、あの人は本当に誰だったのだろうか。

 もし、また会えたら、あんなに怒鳴るのはどうかと思うけど、今思えば私を心配してだろうし、一応もう一回しっかりとお礼を言いたいな、そんな思いを込めて夕飯の時に家族の前でその話をした。


 すると、お父様が驚いたような顔をしながら私に尋ねた。


「その助けてくれた人はどんな姿をしていたんだ」

 私はその質問に対して一切何の疑問も抱かずに正直に答えた。


「えっと、確か白色の髪で服は陰陽師の服にと聖職者の服を合わせたようなちぐはぐな服を着ていて、背中に翼?っぽいのが6つ程あって、外見の年齢は私と変わらないくらいか、少し年上くらいだと思う?それで、確か左手に」

「包帯を巻いていた」


 私が言うよりも早くにお父様がそう言った。なんでお父様はそのことを知っているんだ。もしかして知り合いなのかな。そう思っていたら。


「香、絶対にその男に関わるな。何があっても触れるな絶対にあの男と接触をしてはならぬ。もし見かけたら全力で逃げろあれは化け物だ。

 陰陽師を憎み聖職者を憎み世界に絶望し、あと一歩のところで陰陽連と正教会を巻き込む大規模な戦争を起こしかけた化け物だ。いいか、もう一度言う、あれに絶対に関わるな」

 今まで見たことない、お父様の真剣な声に表情、彼は一体何者なのか、お父様と一体どういう関係なのか私は疑問が尽きなかった。

 でも、私は彼がお父様の言う化け物には到底思えなかった。何だかんだで私を助けてくれたし怒鳴って来たのは怖かったけど言ってることはマトモだった。

 一瞬そう一瞬だけカッコいいなって憧れるなって尊敬出来るなと思えたし。

 でも、ここでお父様に逆らう程私は愚かではなかった。


「分かったよ。もう関わらないよ」

 もちろん本心はあったら今度こそしっかりとお礼をしたいと思っている。ただこの場を切り抜けるためにそう言った。


「そうか。それならいい」

 お父様は私の本心を気が付いてるのが気が付いてないのか、分からないが、静かに、それでいて何処か懺悔するかのようにそう言って話を終わらせた。

 

「そうだ、香よ、お前のクラスメートに佐藤 勇気って男がいるだろ」

 いきなりお父様からクラスメートの事を聞かれた。普段お父様は学校の事なんて一切気にしない、関係ないって人なのに。いきなりどうしたんだろう?


「え、うん、いるけど、どうしたの?珍しいね?お父様が学校の事を私から聞くなんて」


「いや、まあ何だ。そいつに取り入って勇気を陰陽連に入れろ。色々あってだが、彼は我らが安倍晴明様の血縁者であり、その才能を色濃く受け継いでいることが分かった。それを知った上層部が彼を強く欲してな、その任にお前が選ばれたわけだ。行けるか」

 いきなり告げられたその事実に驚きはしたけど、だけど、勇気君ならと納得できた。

 勇気君からはなんとなく安心できるってオーラがあったし学校でも人の前に立って引っ張て行くクラスの中心的人物だったし。勇気君は優しくてイケメンで運動も勉強も出来る文武両道な完璧超人なのだから。

 これがクラスにいる左腕に包帯巻いていていつも「俺の左腕には全てを怠惰の渦に誘う世界を崩壊させる程の強大な力を持つ悪魔がいる」って喚いている幸田とかなら断ったけど、勇気君ならばこの任務断る理由がない。


「その、任謹んでお受けいたします」

 私は任務を受ける時に使う正式な返答で答えた。


「そうか、それは良かった、じゃあ、早速だけどその第一段階として彼の力を目覚めさせるのを手伝ってもらおう、というわけでこれを持っていきなさい」

 そう言ってお父さんが私にビー玉のようなものを渡してくれた。


「これは何?」


「それは、とある悪魔が封じ込められている球だ。といっても人に危害を加えられるほどの強力な悪魔とかではない力の弱っている悪魔だ。その球を彼がいるところで割ってほしい。そうすればその悪魔を倒そうとして彼の中に眠っている安倍晴明様の血が目覚めるだろうから」


「でも、それって危険じゃあ」


「大丈夫だ、もう一度言うが封じ込められているのは力の弱っている悪魔だ、何かあってもお前程度の力でどうにかなる」


「それなら、分かりました、お父様」

 そして、暫くたわいもない話を家族でした後に部屋に戻り学校の宿題を終わらせてからお風呂に入って眠った。


 ――――――――――――


 以上、外伝でした。

 一応、この作品はちょくちょくこういった形で外伝を挟んでこうと思ってます。

 少しでもこの作品を面白いと思っていただけましたら星やハートを頂けると嬉しい限りです

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