軽く脅してみた

 俺は朝起きてイトと軽くイチャイチャした後、左手に巻いてある封印の包帯を新しいのに巻き直す。

 この包帯をまき直す作業というのを毎日しないと包帯が怠惰の力に耐え切れずにいきなり弾け飛んで紫色の禍々しい左腕が露出されるからな。

 そうなったら少々後処理が面倒だ。


 そんなわけで包帯のまき直しが終わったらイトの作った美味しい朝ご飯を食べながらイトとイチャイチャしつつ眷族統括係兼俺の頼れる雑用係バトラーから最近の報告を受ける。

 ほんでそれを適当に聞きながら的確に指示を出していく。

 指示を出し終えたら制服に着替えて歩いて学校に行く。


 学校では普通に友達とラノベの話をして、超イケメンで何でもできる勇気に友達である越田と一緒に妬みの視線を送ったり、猥談をしたり、ゲームの話をしたりと楽しくやって過ごす、昼飯はイトの作ってくれた最高に美味しく愛情のこもった弁当を斜め前の席にいる越田と一緒に食べる。

 学校が終われば、帰宅部である俺はいつものように一人で家に帰る。ありふれた日々。特に問題も起きない普通の日々。

 俺の愛してやまない平穏な日常。


 ただ、その日は偶然、そう偶然にも近くで中級悪魔の気配がした。


 いつもは眷族に任せてるけど、最近戦闘をしていなかった事もあり、せっかくなので自分で倒そうなんてことを何となく思いよく確認せずにその場所に向かった。


 するとそこには何ということでしょう、クラス一の美人であり品行方正で頭も運動神経も性格も良い白木さんが陰陽師の姿をして中級悪魔と戦っている姿があったじゃぁないですか。

 いやはやビックリですな。

 といっても、俺としては前々から白木さんが陰陽師とは一応は分かっていたがね。ただこう、実際に見るとかなりでかい驚きが襲うな。

 あの白木さんが陰陽師かぁ・・・。


 そう一人驚きながらも一応念の為に白木さんの戦闘を見る。


 ・・・・・・・・・


 うん。しばらく戦闘見たけど結論を言おう。


 白木さん弱いな。本当に弱いな。

 俺の見る限りだが彼女の才能と技量であれば、この程度のカス妖怪瞬殺できるはずなのに、わざわざ一般人や住宅に被害が出ないように、結界を張り霊力の半分を無駄に消費させている。

 しかも、所々攻撃に躊躇があるようで霊力の変換にもムラが多い。このままじゃあ白木さんは死ぬだろうな。


 ハア…。ここで死なれたら彼女に片思いしている俺の友達こと越田が悲しむからな。

 陰陽師嫌いの俺としは、まあ、あまりというかとても凄く助けたくはないのだが、しょうがない、助けますか。それに一応クラスメイトでもあるしな。


 あ、そうだせっかくだし一応の善意と悪意を込めて忠告をしてあげますか。もちろん悪意マシマシでね。フフフ。それはそれで少し楽しそうだな。


 俺はいつもかけている眼鏡をはずして陰陽技で黒く染めている髪を白に戻してから髪をかき上げて立たせる。

 最後に陰陽聖術・魔装を発動して戦闘用の服に一瞬で着替えるというか身に纏う。


 これが俺の戦闘状態だ。普段の俺の姿からは絶対に想像できないと思う。後普通にこの姿メチャクチャカッコいい。

 だってお前アレだぞ。戦闘服だけあって白と黒と赤の三色を主な色として漫画に出て来るようなカッコイイ服を着てる感じだぞ。所々豪華な感じの装飾もついていて、特に足の部分はなんかもう凄い。

 ほんでお腹の辺りは敢えてぴちぴちの黒色のインナーみたいなので、俺の素晴らしいシックスパックがあらわになってる感じだ、腰回りには短剣が二本、背中には機械翼のような形の装飾が左右3つずつあり、普段は折りたたんでいるが、解放すれば2メートルくらいになり、そのまま空を飛べる。

 因みに左腕は敢えて装飾とかなにもつけずに包帯オンリーだ。何故って?怠惰の力を本気で行使した時に装飾つけても吹っ飛ぶからだ。まあ、それはそれでカッコイイかもだけど。封印解放的な?男の浪漫だな。

 という訳でこの素晴らしい戦闘服に着替えたわけだし、バレる心配はなしです。さてとサクッと白木さんを助けてあげますか。


「霊弾」

 俺は陰陽技の中で最も基礎的とされる技を放った。


「がああああういあえなああっさああ」

 中級悪魔は俺に聞きなれた悲鳴を叫んで消滅した。


 まあ、これのくらいは余裕だな。ぶっちゃけ上級悪魔でも俺の霊弾一発で消滅するレベルだからな。いやはや俺って超強いわ。流石俺。


「あ、あの、助けていただいてありがとうございます」

 俺に駆け寄って可愛い顔と声でありがとうと笑ってくれる白木さん。


 これが越田だったら鼻血出して喜びそうだけどね、まあ、俺にはイトがいるしそこまで可愛いとは思はないな。さてと悪意とマシマシの善意込めての忠告をしますか。


「このクズが、お前みたいな雑魚が陰陽師なんてするんじゃない。お前も知っているはずだ、強い霊力を持った陰陽師の肉を食った悪魔は格段に強くなるということを。

 もし、お前が喰われていたらあの悪魔は上級悪魔になり、この町の人間を端から食っていたぞ。

 少なくとも討伐されるまでの3時間程度で軽く1000人は死んでいたぞ、お前のせいで死ぬんだぞ、お前みたいなクズのザコが陰陽師をやっていたせいで死ぬんだぞ。

 分かっているのか。お前みたいなまともに戦えないのに霊力だけはあるような奴は悪魔やその他妖怪とかに取って良い餌だぞ。

 二度と陰陽術なんてするんじゃない。悪魔や妖怪と戦うんじゃない。死にたくなかったらな。そして人を殺したくなかったらな」

 一切の容赦なく怒鳴り散らした。


 しかも霊力を垂れ流して圧倒的格上感を出しながら。多分超怖いと思う。

 というわけで完全に白木さん涙目というか泣いちゃっているが、しょうがない、実際彼女はこのまま陰陽師を続けていたら喰われて殺されそうだし。

 これくらい言うのがちょうどいい。うん。俺は悪くない、むしろ良いことをした。


「う、うえ~ん、うえ~ん」


 俺は大泣きし始めた白木さんに一応霊術式と聖者の結界を組み合わせた・悪魔避結界を彼女の身体に張ってから家に帰った。


 ――――――――――――――――――


 俺は家に帰ったらイトに抱き着いた。


「イト~、学校疲れた~、それに白木さん怒鳴ったのも疲れた~、というか、めんどくさかった~、ナデナデしてくれ」


「はいはい、分かってますよ」

 イトが俺にナデナデしてくれる。


「あ~、凄い癒される、イト大好きだよ」

「私も大好きですよ」

 笑いかけてくれるイト。


 だけどこの反応も身体も全て俺が創り上げたものだ俺が俺の為に創った存在だ。

 そう考えると少し辛くはなる。まあ、でも、俺はイトが居なかったら今頃陰陽連と正教会潰しに行って何万って死者出して最後は殺されるっていうエグイ事になってただろうけど。

 そう考えると俺はイトを創り出して良かったと心の底から思うわ。


 うん。あまりそういうことを考えるのは止めよう。イトがいるただそれだけが俺の救いだ。イト万歳。イト最高。イエーイ。イエーーーイ。イエーーーイ。


 その後はいつものようにイトとゲームしてイトの作ってくれた夕飯を食べて、眷族たちが集めてくれた素材で新しく眷族を創ったりとなんやかんや楽しく過ごした。

 そして、夜になったらイトと一緒に寝た。


 いつもの毎日。このままこの幸せな毎日がいつまでも続くと思っていた。

 だけど、俺のその思いとは裏腹に周りは段々とおかしくなっていく。

 そして平穏な日常は少しずつ崩壊していく。その事実に俺はまだ何も気が付いてはいなかった。


 ――――――――――――――――

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