第68話 淫獣ドラゴン
「もういいかしらー?」
ブランカの言葉でハッと我に返る。気が付いたら、ブランカおばあちゃんを看取るところまで想像していたよ。我ながら面倒見が良すぎてビックリだね。
ブランカの声に、僕がシャワーを止めると、ブランカが髪を掻き上げて目を見開いた。真っ赤な美しい紅玉のような瞳と目が合う。その目が驚いたように大きく開かれた。女の子座りでペタンと座っていたブランカの脚がキュッと閉じられ、両手で両胸が包み隠される。ブランカの顔がこれまで以上に真っ赤に上気していた。
「えー…。ずっとそこに居たの…?」
『そうだよ』
僕はブランカの目の前で座っていた。今は隠されているけど、さっきまでブランカの秘密の場所は全部丸見えだったのだ。すごい特等席だった。
ブランカは、今まで頭を洗って目を瞑っていたため、僕の視線に気が付いていなかったのだろう。今まで自分が、僕に無防備な姿を晒していたことに、今気が付いた形だ。
ブランカは、僕の前で裸にはなるけど、じっと見られるのは恥ずかしい。なんとも微妙なラインで恥じらいが残っているようだ。僕としては、恥じらう女の子は大好物なので、その恥じらいは捨てないでほしいところだ。
「……見た?」
『何を?』
僕はブランカの言葉に惚けておく。僕の中身が、ただの変態ドラゴンだと悟られるわけにはいかない。
「えっと、それは……」
ブランカが口ごもったのを好機と見て、僕は口を開く。
『ブランカ、早く体も洗ってしまおう』
「……うん」
ブランカが頷いたことで、会話が流れる。これで有耶無耶にできたな。
『石鹸をタオルで泡立てて、タオルで体を洗うといいよ』
「その……ほんとにいいの?私の体を洗うと、たぶん汚れちゃうわよ?」
『いいよ、いいよ。タオルはいっぱいあるから』
「ほんとにいいのかしら…?」
ブランカがおずおずと胸から手を外し、タオルと石鹸を手に取る。胸を僕に晒すことが恥ずかしいのか、その頬は赤く染まったままだ。
ブランカが石鹸をタオルに擦り付けて泡立て、体を洗っていく。白いもこもこのヴェールがブランカの体を覆っていき、その裸体を隠してしまう。だけど、中途半端に隠されると、余計にエッチに感じるのはなぜだろうね…?不思議だ。
『顔や耳も洗うんだよ』
「はーい」
素直なブランカはとてもかわいらしい。
「ルーは体を洗わないの?」
『僕?僕は……どうしようかな……』
いつも巫女さんたちに丁寧に洗われていたから、自分で体を洗ったこと無いんだよね。でも、ここには巫女さんたちは居ない。僕も自分で体を洗えるようになるべきだろう。
そんな決意を固めていると、ブランカが僕を手招きする。
「こっち来て、洗ったげるわ」
ブランカが洗ってくれるらしい。やったね。ブランカに近づくと、ブランカが僕を持ち上げて、膝の上に乗せ、タオルで洗い始める。鱗の上をタオルが滑る感覚が気持ち良い。
「はい、翼を広げてー」
バサッと翼を広げると、ブランカが丁寧にタオルで洗ってくれる。意外と面倒見が良いところがあるのかもしれない。
「あなたってほんとに綺麗よね。鱗とかへたな宝石より綺麗なんじゃない?売れるレベルよ」
『……剥がないでね?』
ブランカは金に執着するところがあるから、本当に売りそうで怖いな。
「剥がないわよ」
人を何だと思ってるのかしらと呟くブランカ。ブランカのことは、いざとなったらやりかねないほどお金にがめつい人だと思っているよ。なにせ、お金がもったいないと宿屋を拒否した筋金入りの守銭奴だ。僕の鱗を売るくらい当たり前にしそうである。
ブランカ、恐ろしい娘…!
「こんなもんでいいかしら?」
白い泡でモコモコになった僕を膝に乗せたブランカが言う。その顔にはやり遂げた達成感からか、満足げな笑みを浮かべていた。
『ありがとう、ブランカ。助かったよ』
僕の短い手では全身を洗うのに苦労しただろうからね。本当に助かった。石鹸で洗うと、綺麗になったと実感できて気持ちが良いね。
「いいのよ。あたしもお礼したかったし」
『お礼?』
「そう。命を助けてくれたし、ビッグボアの報酬全部くれるし、今度は寝る場所も用意してくれるし、お風呂まで入れてくれるし、タオルやシャボンも、その……ありがとう。あなたと出会ってから、ずっと魔法にかけられているような気分だわ!」
そう言って恥ずかしそうに笑みを見せるブランカ。僕はちょっと感動していた。ブランカはちゃんとお礼が言える良い子なんだなと。助けたのがブランカで本当に良かったと思えた。ブランカと関係を持てたことが素直に嬉しかった。
『こちらこそ、僕を従魔にしてくれてありがとう』
「そんなの全然いいし。あたしの方がありがとう大きいし!」
ありがとうが大きいって何だろうね?でも、ブランカが僕に感謝している気持ちは伝わってきたよ。
『泡、流しちゃおっか』
「うん」
シャワーの雨を降らすと、泡に包まれていたブランカの裸体が上から次第に露わになる。その瞬間が、なんだかとても淫靡なものに感じた。
今、ブランカにおっぱいを舐めたいと言ったら許してくれるだろうか?僕に感謝しているみたいだし、ワンチャンあるのでは…?
「なんだか、くすぐったい」
泡が体を流れる感覚が面白いのだろう。そう言って無邪気に笑うブランカを見ていると、自分がひどい淫獣のように思えてしまう。……今日はもう止めておこうかな…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます