改定前 第25話「悪役令嬢とヒロインの女子トーク2/5:いやお姉さまと呼ばれてもー? ちょっと、困るー、かも!?」

「あんな感じじゃない、って。私が、助けに入るわけじゃないの?」

んです、そもそもゲーム中のロザリアさんは、ゲーム開始時点では火の属性でしたし、ヒロインは光の属性と鑑定されますけど、魔力強度は二人共常識的なレベルのCと判定されて終わりでした。

 その後に、ゲーム中のロザリアさんに『いい気になるな』とか言われてトラブルになった所を、王太子様にまた助けられるんです」

事故そのものが無い、って……そりゃたしかに不気味だわ。


「なるほど、それにしても、ゲームの私と現実の私でちょっとややこしいわね」

「あー、だったら、ロザリアさんの事は、『お姉さま』と呼びましょうか? ゲーム中のロザリアさんの事は『ロザリア様』と呼べば、誰かに聞かれても問題が少なそうなので」

「お姉さま、って、今は同い年でしょう?」

なんだかクレアさんの様子がおかしな事になってきた、っていうか、これリュドヴィック様と似た感じになってない?


「良いじゃないですかー、前世を足せば5つ程年上なんですから、それに、今でも年上っぽいですよ?」

「まぁ、良いわ。前世では何故か子供達に『ママ』なんて呼ばれてたし、少しマシになったと思う事にする。じゃあ、私達、今からトモダチ、って事でヨロ!」

と手を差し伸べたんだけど、

「はいっ! お姉さま!」

なんだか違う感じで握手されてしまった、こう、差し伸べた手を両手で拝むように包まれる感じで。なんでウチって、こういうポジションになりやすいんだろう、

……まぁ良いか!


「それでですね、ゲームではヒロインに家名を与えるのが、さっき言った魔力測定イベントの直後なんです。これからもロザリア様に難癖をつけられるだろうし、貴重な光の属性だから、王家が護らせてくれ、って」

「ああ、それでさっきの事に追いついた。とは言っても、本来のストーリーからは、もう大分おかしな事になっているわね」


「そうなんですよ! もー本当どうしようかと、知っているゲームの世界のはずなのに、いざゲームの部分が始まると似ても似つかないんですよ!? 悪役令嬢が物凄い優しくて、私に何もしてこないどころか私を護ってくれるし、魔力測定ではすんなり終わるはずが、あんな大事故になってしまうし。

 王太子様なら攻略キャラの人だから頼りになるかも、と思ってたのに、いきなり『お前を処刑したい』とまで言われちゃうし、私これからどうなるんだろう、いったいどこの世界に迷い込んだんだろう、って本当に怖かったです」

「いや本当に、お疲れ様、としか言えないわね、それ……」

乙女ゲームの世界のはずなのに、ホラーゲームにでも迷い込んだようにしか思えなかっただろうなぁ、ある日隣人が皆別人に変わってしまったような、マジ怖い……。


「そういえば! お姉さまって王太子様と妙に仲が良いですよね? ゲームでは名ばかりの婚約者で、魔法学園に入学するまでほとんど顔を合わせてなくて、お互いを嫌い合ってる破綻しかけた関係だったんですけど」

「ええ~? あの人しょっちゅう家に来るわよ? 先月だけで10回くらいは来てるんじゃないかしら。前世に気づいた時に、もう既に色々やらかしてたから屋敷の皆に謝り倒したんたんだけどね、人間関係の修復とかで1月くらい費やしたの。

 どうもそれを聞きつけたらしくて、突然何年も会ってなかったリュドヴィック様が家にやってきたのよ。そうしたら、全く原因がわからないんだけど、突然私の事凄く気に入ったみたいで、しまいには家に入り浸るようになっちゃって」


「私にとっては、さっきの、お姉さまに愛をささやく破滅的でヤンデレな王太子様が最高にホラーでしたよ……、ゲームではメインの攻略キャラなので、割と癖の無い普通のイケメンキャラのはずなのに。一体何をどうすればああなるんですか?」

「ごめんなさい、本当にそれ、私が一番理由を知りたいわ……」


「ああ、でもこのまま行くと、あのヤンデレ気味な王太子様と、お姉さまの恋物語を間近で見れるわけだー、この世界での楽しみが一つできました!」

「まぁ、この先嫌でも見せる事になるだろうし、別に良いんだけれど……」

本当に、女子ってコイバナを聞いたり見物するの好きよねー、乙女ゲーム好きな子が多いのも、そういう要素あるのかしら? 前世で一度くらいやっておくんだったなー。

けど、長々と女子トークに花を咲かせたのに、やはり先は見通せない。まぁ女子トークなんて現状確認の為のものだから本来それでも良いんだけど、いったいこの世界どうなってるんだろう。


「お話が弾んでいる所申し訳ありませんが、お食事の用意ができました、お席へどうぞ」

突然カーテンの間からアデルが現れた、っていうか、帰ってきてたの!? ヤバ!さっきの話聞かれた!?……でも様子は普通よね?


「あ、アデル!? 帰ってたの?」

「医務室のドアはノックはいたしましたが、お二人が話し込んでいるようでしたので、隣でお食事の準備させていただいておりました」

様子は普通だし、話し方も特に変わってないんだけど、この子元々こんな感じだからなー。


「えっと……どこから話を聞いていたの?」

「王太子様が、ローゼンフェルド家のお屋敷に入り浸るようになった、という所でしょうか」

やった! ギリセーフ? 今ならごまかせるかな? ……でもアデルにはあんまり嘘つきたくないんだよなぁ。


「あ、そうなの、だったら問題無いわね、同い年だから、色々と話し込んでしまって」

「それは何よりです、お嬢様には同年代のご友人もおられませんでしたし、ご学友ができるのはとても喜ばしいです。今後ともよろしくお願いしますね、クレア様」

「あ、は、はい!よろしくお願いします!」

頭を下げるアデルの言葉に、クレアさんが慌てて頭を下げた、まぁ、大丈夫そうで安心した。


「ところでお嬢様」

「なにかしら?」

「”ゲーム”とは何なのですか? それと、前世がどうとかとも言っていたようですが」

はい残念! アデルにバレた! どうしよう!


次回 第26話「悪役令嬢とヒロインの女子トーク3/5:仏頂面の侍女は乙女ゲームの存在を信じるか」

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