改定前 第24話「悪役令嬢とヒロインの女子トーク1/5:2人の前世、2人の今世」
エレナ先生とアデルが退室した後、クレアさんと2人きりになったけど、当然、若干気まずい空気になってしまった。正直こういう雰囲気は苦手だ。けどウチのコミュ力は無敵!
「ねぇクレアさん、大丈夫? 色々な事があって大変だろうけど、私で良かったら力になるわよ?」
「ロザリア……さん、どうして、そんなに、私に優しいんですか? 私はあなたに大ケガさせたのに、リュドヴィック……王太子様だってあんなに怒ってたのに」
うーん、どうもこの子、微妙にウチの事知ってるっぽいんだよねー、以前どこかでエンカしたっけ? あ、エンカってのはエンカウント? だっけ? 要は”会った事ある”って意味ね。
「どうして、と言われても、人を助けるのに理由なんて要らないわ。それにケガなんてもう治ってしまってるもの、リュドヴィック様は……、まぁいつもあんな感じだから」
「いつも、って、ロザリアはそんな人じゃないし、リュドヴィックとだって仲良くなんて無いはず……たしかロザリアの母親の死に関係してて……」
突然クレアさんが虚ろな目でブツブツ言いだした、本当に大丈夫かな、この子……。いやお母様は今も元気だし、というかどんどん元気になってるし。
「あの、クレアさん? よくわからないけど、私のお母様なら今も元気よ? リュドヴィック様との関係は……、まぁ見たままなのだけど」
「ええ!? 元気、ってそんなはずは!? ロザリアの母親って、たしか突然屋敷を訪れる事になったリュドヴィックを迎える準備に追われた無理が元で死んだはず!」
何かさらに様子がおかしくなって、変な事言い出したけど、この子どうして若干色々違ってても、リュドヴィック様が突然屋敷に来た事とか知ってるの? ウチとアデルの名前も知ってたし……まさか、『ゲーム』の内容を知ってる!?
「ねえ、クレアさん、変な事を聞くだろうけど、もしかして、私が『悪役令嬢』だって事を知ってるの? 日本っていう国の名前に聞き覚えがある?
「に…日本!? 女子高生、ギャルって、あの! ロザリアさん!?」
「やっぱり……、私も、前世がある転生者なのよ、といっても、気づいたのは、ほんの数カ月前なんだけど」
ウチはそっと、クレアさんの手を両手で握って、伝えた、自分が平成を生きた「のばら」という女子高生だった事を、事故で死んでしまって、この世界で15年生きて、数カ月前にそれを気づいた事を。
ゲームの内容はよく知らないけど、自分が悪役令嬢だったという事に気づいて、色々と状況を変えてしまった事を。
「そう……、だったんですね、だからあんなにもゲームの内容と違ってしまっていたんですね。よかった、私一体どこに来てしまったんだろう、どうなるんだろう、とずっと不安で不安で」
クレアさんの表情が
「大丈夫よ、私はあなたの味方だから、何も心配しなくていいわ」
「はい、はい……」
「この世界がゲームと似てて、あなたがヒロイン役だ、って事は知ってたのね? 私はあんまりゲームやってなかったから、自分が『悪役令嬢』だ、とわかってもどうして良いかよく判らなくて」
「校門で出会った時からおかしい、と思ってたんです。本来だったらあの3人の貴族令嬢といっしょになって私を虐めはじめて、登校されてきた王太子様が助けに入るというイベントが起こるはずだったので」
「このゲームやった事あるのね! 私はプレイしてないけど、その場面だけはオープニングだから何度も見てて覚えてたの、リュドヴィック様の登校時間は聞いてたから、あの時とりあえずあなたと顔を合わせようとしたんだけど」
落ち着いたクレアさんに、現状の、特にゲームの事について色々話を聞いてみよう、っていうか、プレイした事ある人なんてマジ助かる!
「私、前世では身体が弱くて、ずっと入院してたんです、だから入院してる時、このゲームはそれこそ、達成度が100%を超えるくらいやり込んでました」
「大変だったのね、前世では」
「はい、だからこの世界で生まれ変わった、って知った時は、凄く嬉しかったです。私は、ロザリアさんより早くて、7歳の時に転生に気づいたんですけど、気づいた時はわけもなく走り回りました。
いくら野山を走っても、階段を上がっても疲れなくて、酸素呼吸器が無くても息をするのが苦しくなくて。あの時は『もうこれだけでチート! 生まれ変わってよかったあああ! 異世界転生最高おおお!』と本気で喜びましたね」
「そんなに身体が弱かったの!?」
「私、前世で死んだのは、13歳の時だったんです。高校へは行けないだろう、と言われるくらい弱くて。夜に眠ったらこのまま死ぬんだろうかと心配で寝られなかったりしてました、でも、この世界ではそんな心配は無くて、
村は貧しかったけど、そんなの気にならないくらい、毎日生きるのが楽しくて、気づいたら死んだときの年齢を追い越しちゃってました」
病がちだったのか、ウチは前世でも今世でも健康で、そういうのには縁がなかったから、大変だったんだろうな、という事くらいしか思ってあげられなかった。
「ああ、その辺は私と逆なのね、私は18の時に死んだんだけど、今15だし。前世では身寄りが無くて施設で育ったのに、この世界では侯爵令嬢なんて呼ばれて無駄に豪華な家に住んでたから、気づいた時の違和感が凄かったわ」
「ええ~、貴族令嬢で王子様の婚約者、とか憧れませんでした? っていうか、ロザリアさんって、前世わりとヘビーっスね……」
おお、クレアさんの話し方がだいぶんくだけてきた、本来こんな話し方をする子だったのか。
「あーね、さっきも言ったけど、前世でいわゆるギャルだったのよ、渋谷とかに繰り出すようなタイプではなかったけど。そういう中世ロマンスものとかはあんまり縁が無くて、まぁ前世と違って生きて元気な両親がいる、ってのは確かに有難いわ」
「お互い、無い物ねだりというわけでもなくて、満たされてる所があったりなかったり、色々っスね」
本当に世の中ってどこかバランス悪い、クレアさんとウチの境遇を、足して2で割ったくらいで良いのにね。
クレアさんがウチと同じ前世持ちという事がわかってからは話が弾む弾む、こうなると女子トークは止まらないよー!
「もしあなたが私の立場で生まれ変わったら、優雅に歩け、とか言われて、結局走り回る事なんてできなかったわよー? 貴族社会って本当に面倒臭いだけだし、一時期は本当に悪役令嬢になりかけていたもの」
「えー? そんなに大変なんですかー? 侯爵令嬢の生活って」
「朝から晩まで全てが礼儀作法だし、山のような王太子妃教育とかあるし、同年代の女の子とお茶会開こうものなら、壮絶なマウント合戦を見物する羽目になるのよ? あんなの続いたら人間不信から悪役令嬢にもなるわよ」
「うーわぁー、また夢の無いお話しっスねーそれ。私の場合は、本当に地方の田舎の村で、夜明けとともに起きて、農作業を手伝ったりっていう、平和そのものでしたよ? もー笑うくらい何も無くて、山とか川とか自然は見飽きるくらいありましたけど」
やばい、こういう女子トーク久しぶりだから凄い楽しいんですけどー! この世界あるあるで色々話もできるしー!
「はぁ、ゲームの物語が始まる前から、もう既に色々と変わってしまってたんですね、実は、先ほどの事故なんですが、ゲームの中ではあんな感じじゃないんですよ」
クレアさんが、突然深刻な表情で語りだした、さっきの事故は確かに凄かったけど、それ以上に難しい問題なんだろうか?
次回 第25話「悪役令嬢とヒロインの女子トーク2/5:いやお姉さまと呼ばれてもー? ちょっと、困るー、かも!?」
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