第17話 美女
俺と飲みすぎて泥酔し寝ているカレンさんは八城屋の前で馬車を待っていた。カレンさんを負ぶっているので少し恥ずかしさで、身体が熱くなってきた。そこに思わぬ人物が現れた。
「すみません、あなたがカナ様の緊急クエスト受けてくださった方ですか?」
俺が振り返るとそこには見覚えがあるようなないような女性が立っており、俺に話しかけてるようだった。
「えっと、ごめん。あなたが誰か分からない。」
「すみません!紹介が遅れました。メイドのリオンです。今日冒険者ギルドでマオ様が話しかけた冒険者の方ですよね。」
「あっ!メイド服着てなかったのでわかりませんでした。カナさんの旦那さん大丈夫でしたか?」
「毒は完全に消え去り、今は安静にしております。私の緊急クエストを受けてくださり、カナ様を助けていただいてありがとうございます。」
「毒が完全に消え去ってよかった。カナさんはパラバードに気づかれずぺ二シイタケ取ってこれそうでしたけどね。むしろ俺が見つかったことで迷惑をかけたまでありますからね。」
「でも二人とも無事に帰ってこれて、ペ二シイタケも取れたので誰も悲しまなくてすみました。」
ここで道の方に馬車が止まった。俺が予約していた馬車のようだ。リオンさんにお別れを言い、カレンさんの家がわからないので俺の部屋に寝せるため、白宿園に向かってもらうことにした。
白宿園に着き、俺の部屋にまでカレンさんを運び、ベットに寝かせた。食堂の横を通ったとき、めちゃくちゃニヤニヤして見てくる冒険者たちがいたが、決してそんなことするつもりはない。むしろ、カレンさんを守ってあげたいくらい仲良くなり、異世界で唯一の友達、いや家族みたいな存在なのだ。
しかし俺も男なのか、無防備で寝ているカレンさんを見ると体が熱くムラムラしてきて、同じ部屋にいるのはマズいと思い、食堂にモーガンがいれば話を聞いてもらおう。
食堂に降りてきたが、モーガンの姿はなく仕方なく外に出た。
外は肌寒かったがなぜか体の内側がポカポカして半そででも大丈夫くらいな感覚で目もギンギンに覚めていた。
騒がしい夜の街で俺は一人で寂しく歩いていた。セーブしてお酒を飲んでいたためまだ飲み足りない。
この世界に来てまだ2日で友達という友達はモーガンとカレンさんしかいない。だが、二人は今いない。一人で飲み屋に入るしかなさそうだ。
営業してそうな居酒屋のカウンターに座り店員を待った。
「おにいさん、初めての顔ね。何飲むの?」
カウンターのおねえさんが俺に向かって話しかけてきた。おねえさんがとても可愛く見えるし、なんか胸の方に視線が向いてしまう。確かに大きいけれど。
「おねえさんをください。」
「え?わたし?冗談はやめてください。お客さん酔いすぎです。」
「すみません。おねえさんのおすすめを。」
「私のおすすめはたかいですよぉ~?」
「美女からもらえるお酒ならドンッと飲みますよ。」
かっこつけたかったのか、お金を持ちすぎて判断が鈍っているのかわからない。しかもどんな酒が出てくるか分からないのに、大学のノリみたいに飲めると確信しでまかせを言ってしまった。
カウンターの美女が持ってきたのはとても高そうなボトルのお酒だった。それもコールまでされて、初めてコールを受けた俺のテンションは上がりまくりだった。
「うい~。飲みすぎた。おねえさんお会計お願い。」
ベロンベロンに酔った俺は意外と安いと思ってしまった会計の10万ヤンを支払い、居酒屋を出たところまでは記憶にあった。
目が覚めると現実世界の俺の部屋の天井でもない。カレンさんを寝かしつけた白宿園の天井でもない天井が俺の目に映った。酔いつぶれて外で寝てしまったのかなと思ったけれど、空が見えてないので確実に外ではない。ちらっと横を見るとあの美女が寝ている。そして俺は服を着ていない。……やったのか、やってしまったのか。
怖くなった俺は音を立てずに急いで服を着て、美女を起こすことなく部屋を出た。もちろん枕元にギルドで現金でもらっていた10万ヤンを置いて。
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