第16話 泥酔
「コウイチさんは彼女とか好きな人いるんですか?」
「いや、いないよ。今は異世界来たばかりで恋愛する気にはなれないんだよな。カレンさんは?」
「カレンでいいですよ。私はまぁ、好きな人はいますよ?かっこよくて頼れるし、頼ってもらえる方が。」
「そうなんですね。付き合ってるんです?」
「付き合ってないですよぉ〜、片思い中で相手の方も恋愛は興味なさそうなんで、女性として見てもらえるようにがんばってます。だからフリーです。」
妙に最後強調された気がするが、気のせいだろう。
「カレンさんは可愛いからきっと振り返ってくれますよー!」
「そ、そんな可愛いなんて!!」
めちゃくちゃ慌てながらエールを一気に飲み干した。そのせいか顔が真っ赤になっていた。
「そんなに飲んで大丈夫ですか?」
「大丈夫れす。まだまだ飲めます!」
いや、まだ一杯目なのに呂律回ってないんだが。寝坊の借りもあるし、今日は介抱しなきゃいけなくなるかなと思いセーブして飲むことにした。
「風車街のギルドはできたはっかりで、受付のシステムやらひゃんとされてないんでふよ。職員もピンからキリまでいりゅので。」
そうだよなー、好きな担当職員がいるならその列に並ぶけど、初めての人は少ないところや早く回ってる列に並んでしまうよな。
そしたら自ずと今日みたいに鑑定せずに流し作業になる職員もいるわけだ。ギルドもなかなか大変そうだな。
「コウイチひゃんは、中央都市に行かれるひょうって言われてまひぃたけど、なにひゅるんですか?」
「ああ、中央都市の方が魔物弱くて命の危険がすくないらしいからな。」
「コウイチひゃん充分つよいじゃにゃいですかー!」
「でも死んだら状況次第だが、今まで育ててくれた親や仲良かった友達にさえ挨拶出来ずにいなくなっちゃうのは悲しいからな。」
転移した時の事を思い出して涙が出てきた。カレンさんは何も言わずにこちらに来て抱きしめてくれた。久しぶりの人の温かみに俺は声を出して号泣してしまった。辛かったね、と抱擁したまま背中をさすってくれた。
今まで妹のような感覚だったが、この時は姉のような頼りがいがあった。
「落ち着きまひた?」
「すみません、落ち着きました。無様でしたよね。」
「無様にゃんてとんでもぬゃい。」
「本音でこんな弱音を言えるのはカレンくらいだよ。」
「そ、そんにゃ。嬉ちいです。」
落ち着きを取り戻し冷静になってみるととても恥ずかしくなってきた。顔が赤くなってたかもしれない。
「ちょっとトイレ行ってくる。」
「ひゃい。」
トイレに行きながら中央都市に行く理由を考え直していた。
トランスが言っていた日本に帰る方法を中央都市で探してみようと思った。
トイレから帰るとカレンさんが俺の飲み物に何か入れているのが見えた。
「ただいま、今何か俺の飲み物に入れてなかった?」
「い、いえ?にゃにも入れてみゃせん。証拠ににょんでみぃましょうか?」
そういってカレンさんは俺のエールを少し飲んだ。俺の見間違いだったのだろう。
「ほら、しゅわってくだひゃい。」
カレンさんに言われるがままに隣に座り、トイレに行ったときに考えた話をした。
「あと一つ、中央都市に行く理由があって、噂で日本に帰る方法があるってのを聞いて調べてみようかなと。」
「日本に帰れる方法があったら帰っちゃうんですか?」
隣に座ってるカレンさんが上目遣いで涙目になりながら寂しそうにそう言った。
「うん。やり残したこともあるし帰りたいかな。」
「…………私……い……。」
カレンさんは何か言いながら寝てしまった。もうそろそろ帰るかと思いカレンさんが少し飲んだエールを飲み干した。
タブレットで会計を押し、ギルドカードを読み込ませ料金を支払った。
カレンさんを負ぶって出ようとしたところ店員さんが馬車を呼びましょうか?と提案されたのでお願いすることにした。
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