第15話 八城屋


 とりあえず、クエストの報告は終わったし時間まで白宿園で休むか。そう思い、冒険者ギルドを後にした。

 ほかの冒険者の視線が少し気になった。根拠はないがたぶん大丈夫だろう。


 部屋に帰ってきて携帯を見ると19時くらいでカレンさんとの約束が21時なので、準備と早めに行くとしても30分あれば大丈夫だろう。そうなると1時間半くらい時間がある。ひと眠りするかどうか難しいところだが、疲れもありベットに寝ころんだらあっという間に寝てしまった。


 ”ドンドン”

「コウイチさん~、起きてくださーい」


 ドアを叩かれる音で目覚め、寝起きで俺は状況が理解できず、とりあえず携帯を見た。携帯の時計は21時36分と表示されていた。飛び上がって起き、ドアの外からするカレンさんの声に気付きドアを開けた。


「やっぱり寝てた。女の子とのデートに寝坊するなんて男の子失格ですよ?」


「すまん、アラームかけずに寝落ちしてしまった。」


「まー、Aランクの魔物倒して疲れてたのはわかるので、これ以上のことは言いませんが、早く行きましょう。」


「ああ、準備する、ベットに腰かけていてくれ。」


「わっかりました~!」


 そういうとベットに座るどころか、飛び込んだ。すごい勢いだったためベットに止まることができず俺の使っていた毛布とともにベットから落ちてしまった。


「おいおい、大丈夫か?」


「すみません、はしゃぎすぎました。」


 相当楽しみだったのだろう、俺の毛布で赤くなっているであろう顔を隠しながらこちらを向いていた。一つ一つの言動がほんとに妹みたいに可愛く、愛おしい。

 今日買った地味なTシャツに着替え、ズボンはジャージしか持っていないためそのままで準備を済ませた。


「よし、じゃあ行くか。おれおいしい居酒屋とかしらないからいい場所教えてくれな。」


「はい!少し距離があり、高くなりますが味がよく、サービスが良いところに行きましょう。」


 カレンさんは意気揚々に案内してくれた。昨日は白宿園の夜ご飯だったので外に出ることはなく知らなかったが異世界の夜も活気があり、いたるところで酒盛りしている人たちが多かった。本当に距離があり、歩いて着くころには22時20分くらいになっていた。


「着きました。八城屋やしろやです。」


 外観は清掃をきちんとされていて、間接照明を使用してあり、居酒屋とは思えないくらいきれい。そのため高そうな雰囲気で普段なら近寄りがたいお店に来た。ジャージで来たが大丈夫だろうかと思ってしまった。

 カレンさんに連れられて中に入る。


「いらっしゃいませ。」


 従業員の方はすごい笑顔で迎えてもらい、すごく期待できそうなお店であることは間違いないだろう。


「コウイチ様、カレン様、ご案内します。」


 案内される廊下見渡しながら思ったことは、すべて完全個室で、話し声さえ聞こえてこないくらい静かで居酒屋ではない。部屋名がツバキやウメなどの花の名前で日本の和風みたいだ。唯一店員の服装だけが居酒屋ぽかった。


「こちらバラの部屋になります。当店はご利用になられたことはありますか?」


「はい。」


 部屋は長机の両側にソファがあり、長机の向こう側に暖簾のれんみたいな物がかかっていた。

 いや俺は初めてなんだが?カレンさんに聞けばいいかと思いスルーした。


「では、注文はタブレットでお願いします。インビジブル、サイレントかけさせていただきます。」


 そう言い店員は店員はたぶん無属性魔法であろう魔法を部屋に使い、外に出ていった。カレンさんは鍵をかけ、俺の向かい側に座った。


「鍵かけても料理運んでくるときとか大丈夫なんですか?」


「大丈夫です。料理はこちらからくるので。」


 ドアの反対側、壁の暖簾から料理が運ばれてくるようだ。暖簾の向こう側を見ようと思っても見れず、なにも聞こえない。


「無属性魔法のインビジブルとサイレントがかかってるのでお互い見れないし、声の聞こえなくなってますよ。なのであんなこともこんなごにょごにょ。」


 カラオケ店より優秀な防音がなされているようだ。カレンさんの最後の言いたかったことは聞き取れなかったが。


「そ、そんなことより、料理頼みましょう。最初はエールでいいですか?」


「おう。」

 

 カレンさんはタブレットを使用し俺に好みや嫌いな食べ物を聞きながら料理を頼んでいった。

 最初に頼んだエールが届きカレンさんが持って待ってたのでこっちの世界でも乾杯はあるんだなとジョッキをかかげる。


「コウイチさんのランクアップに乾杯!!」


「ありがとう!乾杯!」

 

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