第13話 報告


 カレンさんとの飲みに行く集合時間は21時にギルド前だったのでとりあえず白宿園を予約し、風呂の場所を聞いて時間まで寝とこう。


 「あら、いらっしゃい。昨日と同じ部屋でいいかい?」


 「ああ、支払いはギルドカードで。」


 「おっ、ちゃんとカードに入れてきたね。」


 「夜ご飯はなしに出来るか?」


 「値段変わらないけどいいかい?」


 「おう。ところで近くに温泉とかコインランドリーとかないか?」


 「コインランドリーってのは分からないねぇ、温泉はここからじゃ遠いよ。冒険者は生活魔法のクリーンを使うからね。」


 「そうなのか。分かった。」


 なんと温泉は近くにはないらしい。困ったな。俺は生活魔法とか覚えてないからな。たしか、トランスが言うには生活魔法専用の学校があるみたいだからいつかそこにいってみるのもいいな。


 「コウイチ汚れてんなぁ、魔物倒しにいったのか。生活魔法使えないんだろう?俺がやってやろうか?」


 聞き覚えのある声に振り返るとそこには昨日奢ってもらったモーガンさんが夜ご飯のトレイを持って立っていた。


 「モーガン。昨日は奢ってくれてありがとう。申し訳ないがお願い出来るか?」


 「ああ、いいぞ。ここ食堂だし、裏庭に行くか。」


 俺は些細な事だが、モーガンさんみたいにこういう気配りできる優しい人になりたいと思った。


 「服も身体も一緒にかけるぞ。」


 「お願い。」


 生活魔法クリーンを使ってもらい、さっぱりとはしなかったがとりあえず汚れや垢などは取れた。また今度温泉行くかなと考えた。そういえば遠くっては聞いたけどどこにあるかまでは聞いてなかった。


 「モーガン、お風呂ってどの辺にあるのかな?」


 「風呂か。それならここを出て中央部の方ににあるぞ。でも結構高いぞ?もしかして結構すごい魔物を狩ったのか?」


 「そうなんだよ、パラバー」「なっ!!!パラバードだと?コウイチってそんなにすごい冒険者だったのか。」


 「いやいや、そうでもないぞ。たまたま勝っただけだ。」


 「いやいや、たまたまで勝つほどパラバードは甘くないだろ。魔石一つで300万ヤンするんだぞ?」


 「え、まじか。」


 「まじだ。換金してもらってないのか?」


 「ああ、疲れたから休もうと思ってまだしてない。」


 「そうなのか。てかなんでパラバードと戦おうと思ったんだ?」


 「いや、緊急クエストで、って完了報告行ってなかった。」


 「今すぐ行ってこい!多分、ギルドの人も心配してるとおもうぞ?」


 「すまない、行ってくる。明日、風呂一緒に入り行こう。」


 「えっ、いいのか?」


 「ああ、モーガンには世話になってばかりだからな。そのくらいいいって事よ!」


 「じゃあ、言葉に甘えさせてもらうわ。」


 「おうよ。また明日な。」


 そう言って俺は隣のギルドに向かった。

 中に入ると人が多く、びっくりした。朝と夕方は多いと聞いていたがここまでとは知らなかった。

 カレンさんは見当たらないが仕事を頑張っているのだろう。俺は適当な列に並び順番を待った。


 「次の方。」


 「はい。」


 …………


 「すみません、ギルドカードとクエストの書類か、討伐した魔物の魔石、魔物本体または部位をお出しください。」


 「あぁ、すみません、初めてでしたので。」


 「初めてかよ。大したものじゃないな。」


 小声でそう言われたのを俺は聞き逃さなかった。が、別に怒る事でもないのだが、ちょっと驚かそうと思ってギルドカードとパラバードの羽を出した。


 「Gランクの冒険者さんで(クスッ)、ハートの羽ですね。ちょっと個体が大きいんで、3千ヤンですね。ギルドカードに入れておきます。次の方〜」


 思ってもみない対応と言ってる意味がよく分からず、状況が追いつけないで、追いやられた。

 流石にキレてもいいかな?いや、落ち着け。ここは大人の対応をしよう。あの子は忙しくてあの態度をしたんだ。自ら高ランクの部位をあしらうわけないもんな。

 俺は右隣の列に並び順番を待った。こういう時にカレンさんがいればその列に並ぶのにな。


 「次の方どうぞですぅ〜。」


 「すまん、これをお願いしたい。」


 ギルドカードと共に緊急クエストの書類(皮製)とパラバードの魔石を取り出した。職員の方は目を見開きびっくりしていた。


 「パラバードの魔石ですかぁ〜!!!」


 声が大きく両隣の職員や冒険者がこちらを見る。恥ずかしい。

 さっき俺を受付した左隣の職員は俺に気付いてなんで私の時それを出してくれなかったんですか!?みたいな顔してた。


 「大声出してすみませんですぅ〜。こちらクエスト完了の報告受けてますので、魔石と合わせて370万ヤンです。ギルドカードに入れておきますですぅ〜。」


 「ありがとう。あとさっき左隣でパラバードの羽出したんだけどハートの羽と勘違いされたんだ。」


 「本当ですぅ〜?確認とってきますですぅ〜。」


 「すぐ終わりますのでちょっとお待ちください。

……すみませんでした。奥の応接室にお願いします。」


 おそらく隣で聞こえてたので冒険者の方を待たせすぐに謝りに来た。そしておしとやかな職員を待たずに奥の応接室に通された。

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