第12話 帰還
「なっ?どうしたらパラバードの体毛を貫くだけでもすごいのに、胸の急所の所だけを狙えるんですか!?」
地面にクチバシが刺さり翼を広げて、地面との角度が45度になっている一体目のパラバードを見てカレンさんは驚愕していた。そりゃあ、こんな倒し方出来るのは俺の武器くらいだろう。
「いや、たまたま武器を振るった方向にパラバードが避けてそこが急所なだけで、運が良かった。」
「二体も急所を狙えませんって。」
そういえば一体目と二体目はちゃんと姿形を残して死んでて魔石になっていない。燃えた三体目だけが魔石だけとなり胴体や翼が無くなっている。
「カレンさん、教えて欲しいんだけどさ、こっちは魔石だけなのに、こっちは姿形が残ってるじゃん?燃やしたら魔石だけになるの?」
「それは、損傷が激しいものは魔石になる性質があるからです。こっちのパラバードも解体すると途中で心臓に近い部分が魔石になりますよ。」
「知らなかった。ありがとね。」
「いえいえ、なんでも聞いてください!ところで翼と胴体をコウイチさんの武器で切り離せないですかね?大きくてリュックに入りきらないんですよね。」
「できると思う。」
俺は翼の付け根部分を貫通のボールを使って切り離した。
「すごいです。付け根部分は切れやすいとはいえそれでも切るにはダイヤモンド以上の武器が必要なんですよね。」
カレンさんは会話しながらリュックに詰めていった。
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「入れ終わりました〜。」
もうだいぶん暗くなった林の中でカレンさんの声が響いていた。普段なら魔物が多く周りを警戒しなければならないのだが、この時期だけはパラバードを恐れて魔物は移動し、いなくなるそうだ。
「じゃあ、帰りますか。」
「そうですね、帰りましょう。」
「よいしょっと。」
ちょうどその時カレンさんがリュックを背負う時だった。俺は女性に持たせないと手を伸ばすがカレンさんに振りほどかれる。カレンさんに対しては俺のリュックは大きくバランスがおかしい。
「ケガ人さんはゆっくりしてください。あれ、重さを感じない。」
「そのリュック魔法道具みたいなんですよ。だからどんだけ入れても重さ変わらないし、どのくらい入るのか分からないくらいなんですよ。」
「うわー、アイテムボックスより重宝するじゃ無いですかー、いいなー。」
そういえば、無属性魔法にアイテムボックスがあると最初に出会った商人のトランスから聞いたな。
「アイテムボックスってみんな使えるのか?」
「いえいえ、魔力が高い人しか使えないんですよね。そして、アイテムボックスに多く物を入れてると魔力をそこに割かれるので商人とかしか使わないです。」
「そうなのか。カレンはなんでも知ってるんだな。」
どさくさに紛れてさん付けせずに名前で呼んでみた。カレンは頬を赤らめて明らかにテンパってる様だった。
「そ、そりゃギルド職員ですから!って、な、なに呼び捨てにしてるんですかっ!」
「ごめん、パラバードに勝ったからと調子乗りすぎた。」
「別にいいですけど!」
なんか少し嬉しそうにしていたのを俺は妹のように愛おしく感じた。帰りながらのおしゃべりはなかなか楽しいものだ。ちょうど林も抜け、くくりつけられたギルド専用馬に乗り込む。
「ここからは魔物がいるので魔物の追いつけない全速力のスピードで帰ります!!リュックにしっかり捕まっててください。」
そういうと、馬の手綱を3回打ち全速力で駆け出した。行きとは2倍くらい速く感じられる程のスピードで走ってる気がする。地面から湧いてくるめちゃくちゃ強そうな骨の魔物を蹴散らしていた。行きもこのくらい出したらもっと早く着いたんじゃないかなと思いながらもリュックに掴まり街へ帰り着くのを待っていた。
本当に早く着いた。が、…尻が痛い。
行きに全速力で行かないのが理解した。こんなに痛いなら戦う事すら出来なかったと思う。
大門が閉まっていたため門番の人に馬用の出入り口を開けてもらい中に入りパスポートを提示して街に帰還した。
ギルドまで帰り着いた。携帯を見ると18時を回っていた。とりあえず疲れたので風呂入ってご飯食べて寝たい。白宿園には風呂はなかったが探せば温泉とかあるだろう。
「お疲れ様でした。私はこれから業務に戻りますが、夜コウイチさんがもしよかったら飲みに行きませんか?遅くなっちゃうかもしれませんが。」
「あぁ、行こうか。」
予定変更。風呂入って先に寝て、カレンさんと飲みに行こう。
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