第11話 勝利


 囮作戦を考えた俺は☆5のボールをリュックから取り出し、左ポケットに入ってる☆1の攻撃を痛い左手を動かしながら取った。

 そしてパラバードに向かって☆5の何かを発動を囮として打った。


 パラバードは信じられない行動をした。地面を食べたのだ。その意味不明な行動に思考力、判断力に隙ができてしまった。パラバードはその口に含んだ砂、土を吐き出し、翼で風を起こしボールと一緒に吹き飛ばしてきた。

 俺はとっさに砂が目に入らぬように目をおさえたが思ったよりも風が強く吹き倒されてしまった。

 やばい、狩られる。と目をつぶってもう死ぬのを覚悟していた。


…………いつまで経っても攻撃されない。もうもしかして死んでる?それとも甚振ってるのか?


 恐る恐る目を開けるとそこにはやっぱりパラバードがいた。だが、キョロキョロして何かを探しているようだ。

 パラバードの意図は分からないがとにかく体制を立て直そうと立ち上がる。足がない。いや、立てるが足が見えてない。手を見る、手が見えない。身につけてるもの全て、服も靴もラケットでさえも何も見えてない。


 こ、これは透明人間になってる!?


 男性なら一度は夢見る透明人間が今ここに再現された。たぶん、あのボールのせいだろう。何が発動するか書いてなかったしな。でも3分しかなかったことを思い出し、すぐさま倒さないと。


 目には見えないが左手には☆1のボールが感触である。右手にもラケットの感触。これをとりあえずパラバードに打ち、怯んだところをあそこに置いてある貫通でトドメを刺すか。当初の作戦通りに倒す事にした。向こうはこちらが見えないのでやりやすいだろう。

 “パコンッ”

☆1ボールを打ち出した。パラバードは音に気付いてこちらに向かってくる。見事に命中し、火がついた。

 俺は急いで貫通を取りに回り込み、拾おうとしたが見えないと意外と取りづらい。土が凹んだ場所から手の位置を捉え、なんとかボールを拾った。

 パラバードの方を見ると火が燃え広がり苦しそうに悶えていた。そして全身に燃え広がり断末魔と言える最後の叫び声と共に60センチくらいの大きな魔石になった。


 「勝った。勝ったぞーーーーーー!」

 勝った喜びで俺は叫んでいた。卓球の試合でも味わうことのない命を賭けあい、生きるか死ぬかのギリギリ勝負に心を奪われた。普通の人ならもう戦いたくない、スローライフしたいと思うかもしれないが、俺は違った。

 勝った喜び、敵はいないという安心感が身に染みたのだ。

戦った疲労感、意外と出血が多く立ってるのがキツくて寝転んだ。


 「この辺から聞こえたよね?」

 「はい、たしかにコウイチさんの声でした。」


 聞き覚えのある声が聞こえた。そして茂みからカレンさんとカナさんが走ってきた。


 「あっ、あそこに魔石が!」


 「鑑定。これ、パラバードの魔石です!コウイチさんが倒したんだ!」


 「で、そのコウイチさんって人はどこ?」


 「ここ…です………」


 力が無いような声で発した。


 「今、コウイチさんの弱ってるような声が聞こえました!」


 「どこだ、回復魔法するから姿をみせろ。」


 どんどんこちらに近づいてくるが、俺はまだ透明で見えていないようだ。あれ、これパンツ見えるんじゃね?

カナさんはズボンだったが、カレンさんはギルドの制服でスカートだったため見えてしまった。ピンクの布地が。


 悪いことしたらバチが当たるのは当然で、見事に顔と腹を踏まれてしまった。と同時に透明化が3分経ち効果がなくなった。


 「ぐぇっ。」


 「なっ、どこから現れた。」

 俺の腹を踏みながらカナさんは驚いていた。


 「コウイチさん!大丈夫ですか?」

 俺の顔を踏みながらカレンさんは心配してくれていた。


 俺はパンツを見てか踏まれてか分からないが鼻血を出していた。そしてカナさんに回復魔法をかけてもらい肩の傷を治してもらった。


 「回復魔法は傷は治せて、HPは減らなくなるがHPは回復しない。帰って寝て休むんだな。」


 「ありがとう。マオちゃんが心配してたぞ、早く帰ってあげて。」

 「そうですよ。旦那さんのカイさんもペニシイタケで治さないと!こちらの処理は私がしますので急いで帰ってください。」


 「すまない、恩にきる。」


 カナさんは走って帰っていった。


 「どうして迎えにきてくれたんですか?」


 「ギルドの規約では帰らなきゃ行けなかったですけど、心配で林の入り口でウロウロしていたらカナさんが来られて死にそうだから迎えに行くとのことでしたのでお供させていただきました。」


 「そうなんだ。カナさん、ペニシイタケ持ってなかったですけど、大丈夫かな?」


 「大丈夫?あー、林を抜けたところの自家用馬にくくりつけてましたよ?」


 「あっ、だから持ってなかったんですね。」


 カレンさんは会話しながら魔石を回収していた。俺はというとカレンさんから少しでも回復するために座っててくださいと言われたので言葉に甘えて休んでいる


 「魔石、リュックに入れてもらったら運ぶの楽なのでお願いしてもいいですか?」


 「はい!よいしょよいしょ。」


 可愛い、一つ一つの動きが可愛いんだよなぁ〜とカレンさんを見て癒されていた。

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