第10話 死闘
パラバードが俺のいる方へ迫ってきた。翼を広げてかなりのスピードで向かってくる。
俺は手に持っていた爆発のボールをラケットでパラバードに当たるように打った。
“パコッッ”
という打ち出し音とともに、ボールはパラバードめがけて一直線に向かって飛んでいった。ボールが当たる直前に、パラバードは横に避けた。直撃してくれればよかったのだが、少し距離があったので避けられるかもと思ってたので問題はない。俺は振り返り一目散に逃げた。もちろんパラバードは追いかけてくる。
“ドゴーーーーーーーン”
というボールが爆発する音が少し遠くで聞こえた。この音に反応してくれればと思っていた。逃げながら少し後ろを振り返ると、こっちに向かってきていた一匹だけは爆発音に反応を示さず、もうすぐ後ろまで迫ってきていた。林の木をうまく利用して逃げるつもりだったが翼で木を薙ぎ倒しながら迫ってくる。
俺はこのまま真っ直ぐ逃げたら真っ二つに切られて死ぬと感じ、右方向に避けたが、翼を広げたパラバードは横幅2メートルくらいあり避けきれずに左肩を切られた。リュックは辛うじて切れてはいない。
あまり深い傷ではないがTシャツが裂け、血が滲み出てきた。痛みで左腕を上げれない。
今すぐにでも叫びたいが残りの二体のパラバードを呼びかねない。いや、木をなぎ倒す音でこちらに来てるかもしれない。俺は魔物を甘くみていた。
しかし、まだ俺も諦めたわけではない。今まで卓球の大会で何回も逆境を乗り越えてきた俺は、心を落ち着かせて頭をフルに使い、負けないため、いや勝つための試合運びを。相手がいやだと思うこと、苦手とすることは何か、自分が得意なこと、出来ることは何かを考えた。
パラバードは上昇し加速するための助空距離をとっていた。
相手は突進の近接攻撃ばっかりで俺は遠距離攻撃ができる。ボールは四つ、攻撃、貫通、3分なにか発動、回復、正直攻撃できそうなのは二つだけだ。出来るだけ温存しときたいから使い捨てじゃない貫通を右ポケットからとりだした。
パラバードが急下降し速度を上げ迫ってきた。俺は貫通に横回転を入れて打った。
“キュコッ”
パラバードは打ち出しだのを見ていたので横に避けたが避けた方向にボールは曲がって見事に胸のあたりを貫通した。
「ギャオーーースーーゥー」
という叫び声と共に地面に墜落しクチバシが地面に刺さり、翼を広げたまま生き絶えた。
勝っっったぁーーーー!!!
避けるために横に逸れるのも、ボールがしっかり曲がってくれることも賭けだったが読み勝った。
俺は貫通を取りに行きながら喜びがどんどん湧き上がってくる。ボールはなんと木まで貫通し地面に落ちていた。木に穴が綺麗に開いていたのでその木の根元を探したら見つかった。地面まで貫通しなくてよかった。
喜びも束の間、残りの二体のパラバードが前後に逃げられないように翼を広げて地面に降りてきた。
俺は一瞬慌てたもののすぐに冷静になり、敵を観察した。相手も絶命した仲間を見て無闇に突っ込んではいけないと攻めあぐねてるようだ。
でも状況的に不利なのはこちらである。さっきの戦略で一匹倒したとしてもボールを回収する時間を与えてはくれないだろう。一球で二体倒すか、回転をかけてすぐ取れるように近くまで戻ってこさせるか、様々な状況を想定する。
後ろも警戒しつつ相手の出方を伺っていた時だった。いきなり後ろのパラバードが飛ぶために足に力を入れたのが見えた。俺はここだ!と思い下回転をかけて手元に戻ってくるようにボールを打った。
しかし、飛ぼうとしたのはフェイクで翼で風を起こし、ボールを吹き飛ばしてきた。それにもう一匹のパラバードが体当たりするために飛んできたのだ。
想定していた状況の一歩上を相手の頭の良さで体現してきた。だが、俺は落ち着いていたからこそそれは愚策だ思い、風で飛ばされてきたボールをギリギリで避け体当たりしてきたパラバードにそのまま当たった。
ボールはクチバシに当たりそのまま貫通し、体の中心に穴を開けて地面に落ちた。二体目も倒した。
すぐそこにボールが落ちているが三体目のパラバードが拾わせない様に回り込んできた。頭がいい。
俺は貫通のボールを回収するのを諦め、残りのボールで勝てないかを考える。攻撃手段はもう☆1のボールしかない。もしかしたら☆5のボールも毒などの状態異常を発動かも知れないが頼るには心許ない。しかし風を起こされては絶対に当たらない。不意をつければいいが、なかなか難しいだろう。
俺は生きるか死ぬかの状況で高揚していた。
最後のパラバードを倒すために囮作戦をする事にした。まず、☆5のボールを打つ。それを風を起こして返ってきたところを避けるふりしながら横回転をかけた☆1の攻撃ボールで側面に当て倒すのだ。不安定要素としては威力が足りるのかというところだが、隙が出来れば貫通を回収してトドメを刺せばいい。
完璧な作戦を立てたと、この時はそう思っていた。
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