第9話 風鈴崖


 俺には考えがあった。

 ジャヤネットでパラバードの特徴を見たときにある作戦が浮かんだのだ。できれば戦闘せずに逃げれればいいのだが、もし戦う事になったら俺の武器を最大限に使って勝負をせずに生きて帰る方法を。


 「本当ですか?ありがとうございます。」


 ギルド職員は気が変わる前に手続きしましょうという感じでそそくさと印鑑を押しにいった。

 カレンさんはというとまだ納得のいってない表情でこちらを見て少し怒ってそうだった。


 「死んだら許しませんからね?やるからにはドーンと助けてきてください。決してパラバードと戦ったらダメですよ。」


 「分かった。心配ありがとな。」


 ちょっとカレンさんのほおが赤くなった。が、コウイチは崖はどの辺にあるのか気になってそれどころではなかった。


 「手続き完了しました。一大事ですので崖の近くまでギルド職員が送って行きますので裏庭にどうぞ。」


 「私が代わりに送ってもいいですか?」


 「まぁ、いいけど。」


 ギルド職員はなにか言いたげだったが、一大事ということで言い争ってる時間はないと不機嫌そうに了承した。カレンさんが送って行ってくれることとなった。


 裏庭には10頭くらいの馬がいた。その中から1頭連れ出し、カレンさんが跨った。続いて俺も跨り、鞍は2人用で持ち手がちゃんとあり、抱きつく感じではなかったので気軽に乗れた。


 「さあ、ビューンといっちゃいますよ〜。」


 カレンさんは手綱を握り馬を走らせた。門番はスルーして広い草原にでて、道を10分くらい走った後、右に曲がりまたそこから10分程度走った。帰り道は覚えとかないと、はぐれて帰れないとなったら笑えないからな。幸いクネクネ曲がるわけでもなかったので大丈夫そうだ。もし迷っても携帯のマップ使えばなんとか帰れるだろ。

 

 「コウイチさん着きましたよ。ここから見えるあの崖に向かって進めばカナさんはいると思います。」


 「ありがとう。気をつけてかえるんだぞ。」


 目の前には木々が生い茂る林があり奥の方に崖が見えた。だが、夕方になりつつあるので早めに救助し、早めに帰らないと暗くなってしまう。


 「はい。これ一応渡しておきます。」


渡されたのは刃渡り5センチ程度のナイフだった。


「ギルド職員は送るだけしかできなくて、帰りは自力で帰らなきゃいけないので、帰りに分かる様に左側に印をつけていってください。ここまで帰ってこれたら右に向かって道まで着いたら左に向かってください。無事に帰ってきてくれることをお待ちしております。」


 カレンさんは泣きそうになりながらもちゃんと説明してくれた。帰ったらカレンさんにちゃんとお礼をしよう。

 必ず生きてかえるからね。そう心に決め俺はバックからラケットとボール(手に☆☆爆発)(左ポケットに☆攻撃)(右ポケットに☆☆☆貫通)を取り出した。残りはすぐ取れるよう手の届くリュックのサイドポケットに入れた。

 薄暗い林の合間から見える崖を目指しドンドン歩いていった。


 崖に着いた。カナさんの姿はなく、空を飛んでいる三体のパラバードの姿はあった。

 たしかに全身凶器と思われるほどの長いクチバシになんでも切れそうな翼、足の筋肉はムキムキで大型の動物でも運べそうだ。爪は一度掴んだら離さないくらいの鋭さがあった。

 あと、音に反応して襲ってくるとジャヤネットに書いてあったから俺は忍び足でカナさんを探した。


 すると遠くに金髪の女性、カナさんだと思われる人物を発見した。向こうは気づいていないようだ。たくさんのペニシイタケを抱えている。俺は安心して枝を踏んでしまった。


 “パキッ”


 それは自分でギリギリ聞こえるほんの小さな音だった。が一匹のパラバードは聞き取ってこちらに向かってすごい速さで飛んできた。


 「逃げて!!!」


 俺はとっさにカナさんを助けるために叫んだ。カナさんに聞こえて逃げたかは分からないが飛んできているパラバードと残り2体の振り向いたパラバードを乗り切らないと俺とカナさんに明日はない。

 俺とパラバード三体の対決が始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る