第8話 冒険者ギルド
時刻は15時かー。そういえば、いつ中央都市向けの馬車が出発するか聞いてなかったな。
一番重要な情報を聞いてなかった。いつどこでいくらかかるとか魔石の買取価格が高かったのと街を探索したい気持ちですっかり頭から抜けていた。
「二度手間だけど、仕方ないかー。」
俺は今まで通ってきた道を引き返して冒険者ギルドに向かった。ギルドに着き、入ろうとした時、外からでもカレンさんの声が聞こえてきた。
「ありがとうございました〜♪また魔石の買取お待ちしておりますね。」
俺はギルド受付嬢の何人かいるうちのカレンさんの列に並んだ。それほど並んでなかったのですぐに俺の番になった。
「あら、コウイチさん!昨日ぶりです!ご用件はなんですか?」
「おう。今日11時くらいにここで中央都市に行くのに馬車に乗らなきゃいけないって聞いたんだが、いつ出るんだ?」
「毎朝出てますよー!朝の7時にここのギルドから出てます!」
「そうなのか、結構早いな。」
大学生で早起きの習慣がついてない俺にとってはなかなかきつい時間だった。
「そうですかー?普通くらいですよー!朝早めにでないと夕方までに村に着かないですからね。夜は魔物が活発になるんですよ?」
「そうだったのか、ちなみに行くのにどれくらいお金がかかるのか?」
「馬車自体は5000ヤンで、途中村や町に寄る所の宿泊代みたいな感じですかね。とりあえず2万ヤンあれば足りると思います!」
「そうか、ありがとう。午前中聞いた時教えてくれなかったから助かった。」
「いえいえ!11時くらいって事はたま先輩ですね?ってもしかしてストームウルフの魔石持ってきたのコウイチさんですか!?」
「ああ、そうだが?」
「なんで私の時に出してくれなかったんですかぁ〜!たま先輩の買取額成績がめっちゃ上がってたから詳しく聞いたら初めてみる人が持ってきたってキャーキャー嬉しそうに言ってたの。まさかコウイチさんだったなんてー、ばかー。」
めちゃくちゃ可愛い。顔を膨らませて怒ってる姿が妹の様な感覚で次はカレンさんに持ってこようと思った。
「すまん、次はカレンさんに魔石の買取してもらうから許して。」
「絶対ですよ!!!高ランクがいいですけど、無理にとは言いません!無理が一番ダメなんですから!」
「ああ、分かった。ちなみにギルドって何時から何時までなんだ?」
「朝は6時から夜9時までですね。私はちなみに朝は6時から9時、夕方は15時から17時によくはいってますから!!」
その時だった!入り口が勢いよく開かれる音とともに走ってくる金髪の女性の姿があった。
「ペニシイタケはないか、旦那が毒に侵されたんだ。」
俺の知らない名前が出てきたのでカレンさんに聞いてみた。
「ペニシイタケってなんですか?」
「ペニシイタケは毒を治す薬の素になるキノコなんですけど、崖に生えて取りにくいんですよ。そしてこの時期のこの辺りの崖はパラバードが狩りをするので強い冒険者でも取りに行けず、在庫がきれるんですよね。毒によっては1日で亡くなる可能性もあるんですよけど大丈夫かな?」
カレンさんも心配している様だ。もちろん俺も持っておらず、手助けできない。
悲しいことに、在庫はなかった様だ。女性は
「無事に治ればいいですね」
カレンさんとそう言い合った後別れを告げギルドに併設されている椅子に座りパラバードについて調べてみた。
<魔物>
名前:パラバード
ランクA
生息地:ジャヤホールの西南
特徴1:全身凶器。体のほとんどが凶器そのものになっている。
特徴2:足音跫然。足音にも反応し、音の大きい方を目掛けて襲ってくる。
ストームウルフより強いランクAとは。それに特徴がヤバすぎる。モーガンさんに言われた様に命あっての物種だ。パラバードには何があっても喧嘩を売らない様にしなきゃ……
携帯に夢中になっているとジャージのズボンをトントンとされた。
そこには5歳くらいの女の子がいて、
「ぴかぴかのおにいさん、きいろのかみのママがね、パパのくすりをとりにいったの、」
と言ったところでメイド服のお姉さんに抱えられた。
「すみません。メイ様お側にいてください。」
とこちらに謝り、カウンターの方へ向かった。その間もメイちゃん?はずっとこっちを見ていて泣き出しそうな顔をしていた。メイドさんはカウンターで何かの手続きを済ませ、帰ろうとした時メイちゃんが俺に向かって言った。
「パパ、ママがいなくなっちゃう。」
その瞬間、メイドさんも涙をこらえてる様な顔で通り過ぎてギルドを出て行った。
「緊急クエストを発令します!人助けです。無理にとは言いませんがお願いします。」
ギルド職員がそう叫び何人かの人が職員の近くに集まった。俺も聞いとこうと思い後ろの方で聞いた。
「カナさんの救助。特徴は女性、金髪に皮装備、短剣所持です。報酬は70万ヤンです。」
「カナってあの、疾風チームの癒しのカナか?」
「70万ヤンか、いいな。」
「どこに向かうんだ?」
冒険者達は各々話していてザワザワしていた。
「場所は…風鈴…崖です。」
ギルド職員は言いづらそうにそう言った。
「なんだ、風鈴崖かよ。」
「この時期はなー。」
「命いくつあっても足りんよ。」
ザワザワしていた空気がシーンと静まり返りちょっとした人混みは一瞬にして散り散りになった。
状況がわからず、俺だけ取り残された。その状況にカレンさんが飛び出してきた。
「コウイチさん!行かれるんですか!?私だって心配ですけど……。でも、あの、行かないでください。」
「ちょ、あんた何言ってんの?」
カレンさんの顔は涙を堪えるために変顔みたいになっていた。ギルド職員の人がせっかく行ってくれそうなのに止めるなよみたいな顔でカレンを睨んでいた。
そんな中俺は葛藤していた。メイちゃんの悲しそうなあの目を思うたびに、親がいない悲しさを知っている俺にとっては無碍にできなかった。
「カレンさん、俺やるよ。救助が目的ならやれる気がする。」
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