第5話 白宿園


 門番から紹介してもらった宿屋『白宿園』にきた。

 冒険者ギルドよりも小さいが立派な建物だ。風格があるように見える。


 「いらっしゃい!お客さん一人かい?」


 中に入ると40代の女性が案内してくれた。


 「宿泊したいんですけど…」


 「夕食朝食付きで一人3000ヤンだよ。先払いでも後払いでもいいよ」


 俺は金貨三枚を支払った。


 「お客さん現金かい。盗難に遭うからギルドカード作った方がいいよ。」


 「ギルドカード持ってますけど……?」


 「その真新しいカード、新人さんかい。そのカードにギルドでお金を入れられてここにタッチするだけで支払いできるんだよ。教えてもらわなかったかい?」


 「教えてもらってないです。」


 「どうせカレンだろー。あの子優秀で可愛いのにちょこっと抜けてるところがあるからね、そこが可愛いんだけど。忙しい時はたまにうちで働いてくれるんよ。あっ、部屋は303号室だよ。あと6時から8時までに夕食食べれるから下に降りてきてくれ。」


 鍵をもらい、きれいに掃除された階段をのぼっておれは部屋に入った。

 広い。遠征でビジネスホテルしか行ったことがない俺は部屋の広さにビックリした。


 俺は今日の出来事を振り返り、大変な一日だったと思った。

 でも起きたことは仕方ないので、明日からの生活を考える。

 とりあえず必要なものはお金。トランスさんのおかげでなんとかなったが、残り1400ヤンしかない。


 明日の生活に必要なお金は明日の宿屋代(3000ヤン)+昼食費だ。

 冒険者としてお金を稼ぐためには薬草などの採取や魔物を倒せば…そういえば緑色の宝石があったことを忘れていた。鑑定してみよう。


 魔石 レア度☆☆☆☆

 風属性の魔石、魔道具の材料になる


 この魔石も少しはお金の足しにはなるだろう。

 売れるものはないかと荷物をまさぐる。

 そういえば、練習で使ったユニフォームそのまま入れてた。匂い移りしてるんだろうなと思いながら使ってないユニフォームを取り出そう思いバックに手を入れると、勝手に手元に来た!掴んで出すと匂い移りはなく柔軟剤の匂いがした。


 干渉能力がなくなっているのか?と考えた。

 不思議に思った俺はリュックでいろんな実験をした。


 最初は鑑定した。


 リュック レア度☆☆☆☆

 長年使われているバック、ファスナータイプ、ボール入れ(ボール×3)がついている


 ボール入れ レア度☆☆☆☆

 ボールが3球入る入れ物


 ☆が四つは普通なのか、レアなのかよく分からないが、とりあえず残りの2個のボールをボール入れにしまった。


 次にファスナーを開けた状態でひっくり返した。普通なら荷物がすべて落ちるが、一つも落ちてこない。


 (これはどんなものでも入るかもしれない。)


 と思い自分自身が入ろうとしたが入らなかった。


 (生物が入らないのか、それともバックよりも大きいものが入らないのか…?)


 とりあえずリュックはとても使いやすいということが分かった。

 するといい匂いがしたので掛け時計をさがしたがなかったので、携帯を見ると6時30分といい感じの時間だったので夜ご飯を食べることにした。


 下に降りるといろんな格好をした人たちがいた。鎧を着た人が多い。冒険者だろうか…


 料理を受け取り追加料金300ヤンでドリンクを頼んだ。

料理の内容はパン、手羽元(チューリップ)の唐揚げ、サラダ、卵スープだ。美味しそう。

カウンターはすでに埋まっておりどこに座ろうか迷っているとテーブルに座っている1人の大男から声をかけられた。


 「おい、あんちゃん、ここあいてるぜ!」


 スキンヘッドの40歳くらいの大男にテーブル席をすすめられたのでそこに座ることにした。

 横にかけられている大斧は武器だろうか。


 「席、ありがとうございます。」


 「おうよ。お前異世界から来たか?」


 「そうですけど、なんで分かったんですか?」


 「そりゃーお前、見たことない顔と変な格好だからそう思ったんだよ。」


 薄手のジャージをこちらの世界で着てる人は誰一人いないので服も買わなきゃなと思った。


 「ところであんちゃん、異世界の食べ物もってねーか?」


 「いやー、すみません。持ってないです。」


 「くあぁー!持ってねーか!!異世界の食べ物ってうまいときくからなー。そういえば自己紹介してなかったな。おれはモードンだ。よろしく」


 「俺はマツシタコウイチと言います!コウイチと呼んでください。」


 「わかった。コウイチは冒険者になりたいのか?」


 「はい。とりあえずは冒険者の仕事をしようかなとおもっています。」


 「俺が冒険者の心得ってやつを教えてやるよ。」


 俺は警戒した。ラノベで初心者のスキを狙って殺されるという事を読んだ事がある。


 「不安そうな顔しているな?これを見てみろ。」


 の手にはギルドカードがあった。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 |    ~ギルドカード~     |

 |                 |

 |名前:モーガン          |

 |性別:男             |

 |ランク:B☆           |

 |使用武器:斧           |

 |二つ名:一匹斧狼         |

 |所持ヤン:532380      |

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 なんとBランクだった!Bランクといえばもう上級者の一員だ。

 でも隣の☆は何の印だろうか?それに優男って!人は見た目じゃないんだなと思った。


 「驚いた顔してるな、これでも名の知れた冒険者よ。」


 「すみません、疑ってしまって。」


 「いいってことよ。冒険者は臆病なくらいが長生きするぜ!わはははは。」


 「ちなみにランクの横の☆はなんですか?」


 「あーこれか?これはないい評価の人がもらえる一種の栄光の印みたいなもんさ。」


 「いつ、その印が付いたんですか?」


 「えーと、いつだったか忘れたが、異世界の奴を助けたときに付いたぜ。」


 「信頼できる証ということは分かりました。冒険者としてどうすればいいですか?」


 「冒険者その1、敬語はだめだ。初心者によくありがちだがこき使われるし、弱気に見えてしまう。冒険者に上下関係はねぇ。わはははは。」


 「わかり、、わかった。」


 「冒険者その2、タダに騙されるな。タダより怖いものはないぞ。

  冒険者その3、臆病になれ。命あっての物種だ。自分を過信しすぎるな。

  冒険者その4、仲間を作れ。一人では限界があるし大きな壁にぶつかる。ずっと経験したこの俺が言うから間違えねーからな。わはははは。」


 「もしかして、今まで一人で冒険してこられたのですか?」


 「敬語が出てるぞ!そうだ。だがもう年だしチームを作ってダンジョンに挑むなどより、そこら辺の魔物倒して日銭を稼いで暮らそうと思っているがな。わはははは。」

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