第2話 戦闘


 晴れた青空のなか1人草原でピクニックにでもきた様な気分に浸っていた。

 

「なんかいつもより美味いな。」


 空腹と風景があいまって冷え掛かった揚げどりもおにぎりも美味しく感じられた。そんな優雅な時間は一匹のオオカミの唸り声よって突如として壊された。


 「グルルルルル」


 近くには何の動物もいなかったのにどこからともなく青白い犬らしき生物が現れた。俺は慌ててしまって半分食いかけたおにぎりを落としてしまった。

 俺は後退りあとずさりながら荷物をリュックの中に入れていった。もちろん犬らしき生物に警戒しながら。


 オオカミは俺の落としたおにぎりをクンクンと鼻で嗅いだ後徐におもむろに食べ始めた。

 こちらには一切興味を示さず夢中になって食べていた隙に鑑定をした。


 名前:ストームウルフ

 性別:オス

 レベル:16


 俺はその間に牽制で使えるかなとラケットとボール、半分くらい食べた揚げどり以外のものをリュックに詰め終わった。逃げようとしたところでおにぎりを全て食べ終わったオオカミがまた唸り声をあげてこちらを見ていた。


 俺はオオカミと十分な距離を保ちつつ逃げ切る方法を考えていた。

1. 大声で助けを呼ぶ

2.戦って相手が追いかけてこない様にする

3.揚げどりを遠くに投げ全力疾走


1番は周りに人影が見つからないし、2番は勝てる気がしない。と消去法で3番にすることにした。


 俺はおおきく振りかぶって投げた……油で滑って思ったより飛ばず、目の前に落ちた。


…………おわったー。目の前が真っ黒になりそうなくらい新しい人生の終わりを感じた。十分な距離を稼げずオオカミは一歩一歩と近づいてくる。俺はパニック状態になり、手に持ってたラケットでボールをバックハンドで打ち出し素早く後ろに逃げた。


 ドッッゴーーーーーーーン!!!


 爆音とともに熱と爆風が背中に伝わってきた。俺は爆風に耐えきれず後ろから押し倒された形で転んだ。振り返ると煙が立ち上り、何も見えない状態になっていた。俺は何が起こったか理解できずに砂煙を呆然と見ていた。徐々に砂煙が晴れ全貌が明らかになっていた。緑一面の草原の一部に直径1メートルくらいのクレーターと中心には手のひらくらい大きく綺麗な緑色の宝石だけが残っていた。卓球ボールは消えていた。


 「一体なんだったんだ……」


 不思議な現象に戸惑いつつ緑色の宝石を手に取り見てみる。加工されているように綺麗なダイヤモンドみたいな形で半透明だ。とりあえずリュックの小さいチャックの方に入れた。

 すると遠くの方から声が聞こえてきた。


 「おーい。爆発があったみたいだが大丈夫かー?」


 声のする方を見ると馬車に乗った人がいた。


 「はい!大丈夫です。」


 俺は、返事をして馬車の方へ向かった。


 「爆発は何だったんだ?」


 「ストームウルフに対してこのラケットでボールを打って牽制したら魔物が勝手に爆発してしまって…」


 「インディロックでもあるまいし、その武器の能力じゃないか?鑑定したところによるとボールのせいだな。」


 「このボールを打ったら爆発するのか。」


 「いや、そのボ-ルは貫通という能力みたいだぞ?爆発はその隣だ。」


 「え、ボールによって違うんですか?」


 「おう、ボールによってレア度もちがうぞ。」


 ボールを鑑定してみた。


 ボール レア度☆☆

 40mmのボール。ラケットで使用できる。使い捨て。


 ボール レア度☆☆☆

 40mmのボール。ラケットで攻撃できる。


 いつのまにか鑑定にレア度が表示される様になっていた。

 ☆2が爆発なので爆発したら消えるんだろう。貫通は使い捨てではないのか。


 「少年、名はなんというんだ?」


 「松下光一といいます。」


 「コウイチか、俺はとトランスだ。もしかしてお前日本人か?」


 「えっ、はい。ここは日本ですか?」


 「日本じゃねえ、日本のことをいうとは異世界人だな。異世界人はいつも日本に帰りたいというだよなー。特に魔物に襲われたりしたやつは……。そんなに日本ってのは平和なのか?」


 「そうですね、動物はいますが魔物などはいないです。どのくらいの異世界人がこの土地にはいるんですか?」


 「正確にはわからねぇが100人くらいじゃねーか?俺はお前を含めて12人目だ。」


 「どうしたら元の世界に帰れますか。」


 「質問ばっかりだな。いきなりこっちに来て不安なのは分かるけどよぉ。俺は知らねぇ。だが元の世界に帰れた奴はいるらしいぞ。噂だけどな。」


 なんと!帰れた人はいるらしい、ネット並みに信用できない噂だが。

 俺はとりあえず日本に帰れる方法をさがそう。今後の方針が決まった。

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