第105話 冒険者ギルドと『料理の鉄心』

午後15時。途中で創造魔法料理である焼肉弁当を食べた後、僕達『女神の家』は依頼主であるメノスさんにペア岬での調査の結果を報告した。


「やはり、巨大なダンジョンがペア岬を越えた先にポツリと存在していたか!」


メノスさんは結果が分かっていたかのように反応する。


「しかも、ダンジョンから魔物が漏れ出しているっということは『奈落の底』よりも凶悪な難易度を誇っていると言えよう。それほどまでに魔力に満ち満ちているのであろう。」


メノスさんから次々とダンジョンについて、語られていく。


「そして、魔族がダンジョン近くに現われたという事実。これは一刻も早く『エプタ』に冒険者ギルドを設置し、冒険者によるダンジョン攻略を1日も早く行う必要があることを示しておる。『女神の家』よ、誠に大儀であるぞ。」


マジか~。僕が思っていたよりもずっと深刻な問題だったようだ。その後、『エプタ』に冒険者ギルド用の建物があるかについては城下町に余った建物があることを話すと、明日にはこちらで厳選した職員を送りつけるという所まで進んだ。


「じゃが、1つ問題なのは『エプタ』とそのダンジョンのが離れているということだが。」


「それについてはこちらに転移魔法を使える者がいます。今日には『エプタ』とダンジョンとを行き来出来るようにしておくので。」


メノスさんへの報告が終わり、僕達『女神の家』は城へ帰る前に転移魔法陣の設置に取りかかった。


<最上級探索>により周囲を分析し、得られた結果を元に吟味と考察を行う。転移魔法陣を設置する際の時間短縮というメリットだけでなく、敵の容易な侵入というデメリットをも含めて設置場所を決めていく。


その結果、僕達はブレッシングリバーへの道にある第一の鉄門と第二の鉄門の間にある場所に、例の転移魔法陣を設置することとなった。。理由は、これなら万が一に魔族がダンジョン近くから転移魔法陣を伝って転移したとしても、鉄門と鉄門に挟まれ、身動きは取れないからだ。


そして今、第一の鉄門と僕は言ったのだが、実はブレッシングリバーへの道にそびえ立つ鉄門の先に別の鉄門が存在する。いや、本当にこれにはさすがの魔法神、弓神、竜神もビックリしたものである。


そこで、プロスペリア王国方面の道との分岐点における鉄門を第一の鉄門、新たに発見した鉄門を第二の鉄門と名付け、第二の鉄門前で分岐するペア岬への道に僕とツカネは転移魔法陣を設置することにしたのだ。


「帝国と魔界、か。レベル増強剤によるレベル200以上の軍勢に果たしてこの世界の人達に相手が務まるだろうか...。」


僕は一言ポツリと呟いたが、城にいるレベル200を軽く越える狂戦士達を思い出すと『もう全部僕達だけでいいんじゃないかな』と思ってしまうのであった。


◇◇◇


(チヒロ視点)


イチロウ達がメノスによる依頼をこなしている頃、チヒロはプロスペリア王国にいた。彼女は冒険者ギルド。ではない別の場所へとその足を進めていた。


彼女はとある建物の前に立つとその扉をノックする。


「『料理の鉄心』よ。私は帰ってきた。」


チヒロがそう言うと、中からドタバタと足音が聞こえてきた。


「チヒロ様。お待ちしておりました。ただ今、私達はパンをテーマ食材とした料理対決をしていまして。」


出迎えたのは『料理の鉄心』の3鉄の一人でありNo.2のミツバ。青色のコック帽とエプロンを着た彼女は主宰のチヒロに向けて敬礼をする。


「それは結構。ですが、今日はあなた達に重大な知らせをしにここへとやって着たのです。料理を高める未知の領域、至高の食材と料理を届けることを生業とする私達『料理の鉄心』への挑戦状を。」


チヒロは目の前にいるミツバにそう力説すると、彼女は目に炎を燃やして奥へと消えていく。


「皆様、主宰がお戻りになったぞ。最高の土産話を引っさげてな。」


ここは『料理の鉄心』。チヒロが建てた料理の道場であり、その活動は食材の売買、料理の修行、各国への出店と幅広く活動を行っている。


そして無論、彼女の手の掛かっている場所はあの機関の信者達が集まる場所。エプロンの下にはあのTシャツの存在がある。


「諸君。私達は今日より、料理に革命をもたらす。まずはこの料理を試食して貰いたい。」


チヒロは懐からイチロウ産の白飯を取り出し、料理人達に振る舞う。


「ああ、相変わらず美味しい。」


「あれから私達、普通のものでは満足しなくなったのよ。」


「舌がより肥えてしまったの。この食材にはそれだけの魔性があるのだわ。」


厨房にいた料理人全員がうっとりする。チヒロはその様子を見て、彼女達に語りかける。


「皆様。今お召しになったこの白飯、いや米。それが明日から私の夫であるイチロウさんが、自国の『エプタ』にて量産を始めることを決定した。この意味、あなた達ならお分かりですね?」


「で、では明日から私達もとうとう『エプタ』の国に。」


「ブラボー。そうです。私達は明日から、本拠地を『エプタ』に移し、米と未知の味を世界へとお届けに向かう。返事は当然」


「「「「「「「YESです!!!」」」」」」」


『料理の鉄心』全てに肯定の言葉が響き渡る。こうして『エプタ』に明日、冒険者ギルドと『料理の鉄心』という2つの巨大組織が置かれ、更に波乱を巻き起こることとなる。


ーーー


これにて4章1部は終わり、明日からは4章2部をお届けします。


<嘘次部予告>


テーレッテー♪


イチロウの前に突如、現われた!謎の冒険者パーティー『チイバ』。果たして敵か味方か?


次部、川代かわしろけん。エプタをおおう帝国の星!私闘の果てに...あ、事態は動く!!


イチロウ「乱世の怒りが僕を呼ぶ!」


<読者の皆様へ>


次部予告のネタ、世代的に分かる人と分からない人がいるかもです!もしこの画面を見ている時点でピンと来たら、応援コメントに反応よろしく!


分かる人なら、元ネタの名前と何話の次回予告かを当てられるはず!

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