第104話 魔族との交戦

魔族。それは何処かに存在する魔界に棲むとされる種族であり、その扉が開くのは決まって魔王が復活した時とされている。外的特徴としては、目の前の男や僕がかつて戦ったジュネのように、茶色肌であることがあげられる。そして、平均レベルが多種族よりも高い傾向にあるのも特徴の一つであり、レベル50台なんてざらである。


僕達『女神の家』はそんな魔族と現在、相対している。ペア岬の森を抜け、超えた先にある魔物の出現地帯にて。


「チッ。」


目の前の魔族の男性は悪態をつく。そんなに見つかってはまずかったのか。


「一つ質問したい。何故、魔族のあなたがここにいる!」


「何故か。お前は分かっているだろう、ラペシュ様を倒した愚行者の存在が。」


すると、魔族はいきなり<ファイアボール>を放ってきた。狙いは、僕か。


「<ウォーターウォール>。」


森に引火したらどうするつもり...いや、ツカネの魔法があれば解決するか。いや、駄目だ。引火してしまったら、僕がここまでに付けた看板が消失してしまう。ペア岬は火気厳禁なり。


「この。いきなり魔法をいっくんにぶっ放すなんて。」


魔法神の一言を皮切りに杖、弓、棍棒を構える女神達。


「皆はここで待機していて。この魔族はさっきから僕しか狙っていないみたいだから。後、初日に重量魔法をぶっ放して無理矢理ファーストキスを奪ったこと忘れてないからな。」


「「ほーうっ!」」


アカネとシラユキはグギギとツカネの方に首を回す。


「お姉ちゃん。そのことについて詳しく聞かせてもらいましょうか?」


「ピュ~ピュ~♪」(・3・)~♪


「口笛吹いても」


「誤魔化されんぞ。」


3人の女神様達がいつもの茶番を繰り広げている間、僕は魔族の男を鑑定する。


クロマ

レベル:135

種族:魔族(ファイアーゴブリン)

[能力値]

HP:13,500/13,500

MP:13,500/13,500

攻撃力:13,500

防御力:13,500

[スキル]

<上級火属性魔法 LV.10>、<魔法耐性 LV.5>、<レベル倍化>

[固有スキル]

<禍神の加護>


これは!事態は僕達が思っていたよりレベル増強剤の広がりが進んでいるかもしれないぞ。まだ、<レベル倍化>すら発動していないのにレベル3桁になっている。


「神代魔剣流 水の巻 氷紋の氷柱!」


水の魔力で氷柱を形成し、飛ばす。


「甘ぇ。水属性が来るのは分かっているぜ。」


氷柱が到達する前に、風による防壁が発生し、その勢いをなくした。はぁ~、攻撃力∞だと手加減に苦労するよ。未だに丁度いいレベルの手加減が出来ないし、加減しすぎると今のように簡単に防がれるんだよなぁ。


まぁ、折角だから彼で慣らしておこうか。


「神代魔剣術 水の巻 氷紋なる蛇!」


水の蛇を発生させて、クロマへと放った。今度は30%から40%へと上げてみたが、どうだろうか?


「けっ。」


クロマは風属性魔法を発動させずに、体を動かすことで回避に徹した。ふむふむ、通常時は平均して35%くらいが良いか。


「どうやらラペシュ様を屠った愚行者はお前のようだな。レベル135の俺にこんな回避行動を取らせるなんてな。<レベル倍化>。」


赤黒くなり、更に蒸気が噴き出し、黒色のオーラが立ち上る。


「<ファイアボルテックス>。」


稲妻上に火の波が放出される。質より量を選んできたか。


「神代流魔剣術 威の巻 神楽散花!」


水属性から<威圧>へと切り替えて、火の波を振り払っていく。それはクロマの火の波を飲み込んでそのまま巻き込んだ。


「アバババァ!」


クロマは衝撃波をまともに受け、散っていく。


「お、覚えておけ。俺達魔族は既にレベル100超えの軍団を創り上げることに成功している。そして、レベルが200になった...時...こ」


HPが0になる直前に、クロマは上の一言を残して消えていった。これでまた、プロスペリア王国とレリッジへの報告事が出来てしまったな。


「いっくん...。」


「お兄ちゃん。」


「婿殿。」


3人の女神達がいつの間にかO☆HA☆NA☆SHIを終えて、僕の元へとやって来た。魔族との交戦は突然のことで驚いたが、重大なことを新たに知ることが出来ただけでも良しとしよう。


「皆終わったよ。ほぼ自分の力加減の練習回になったけれど。」


「あー、魔族すら魔法の実験台にするんだぁ。」


「前々から思っていたんですけど、お兄ちゃんってレベルが低い相手には一瞬で決着ケリをつけずに自分の能力についての経験値を溜めようとしますよね。」


「その時の婿殿の顔はニヤついているのじゃな。」


何よ、その言い方。まるで僕が敵を利用しているみたいな言い方じゃないか。誠に遺憾である。


「ま、まあとにかく。依頼は達成していることだし、早く城の方に戻ろう!」


僕はこれ以上の追求から逃れるように来た道を戻り始める。後ろからクスクスと笑い声が聞こえるから、自然に足が速くなってしまう。


ドシーンッ!


木にぶつかった。いたーい☆


「「「うわぁ~。」」」


ええ、分かっていますよ。僕にぶりっ子キャラは似合わないことなんて。だから、やや本気なドン引きはやめて下さい。お願いします。


そんなことがありつつ、僕達『女神の家』はプロスペリア王国の冒険者ギルドへと向かい、依頼結果を報告した。

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