第101話 王国と聖国の接待パーティー アピール編 特産品の紹介

中盤に、演説があります。皆さん、あの声優さんで脳内再生して下さい。


エ゛ェイ゛ィメンッ!


ーーー


急遽開催された、ブラコンを超えた何かヴィシュヌによる地獄の密会きょうせいパーティーを乗り越えたイチロウです。現在、僕はプロスペリア王国の方々に、料理に使われている米についてレクチャーをしていた。


「ガハハハハ。本当にお前の国の料理には驚いたぞ。これ全てに、お前の国の特産品予定の米を使っているのか!」


背中をバシバシと叩いてくるギルア。彼は今、唐揚げと炒飯を流し食いをしている。


「平たく言えばその通りです。メルアさんからは、魔力含有量がとても多く、シャルティアのように魔力に重きをおく種族にはうってつけの食材であると。」


「メルアが始めて白飯について報告した時はびっくりしたものだ。実際に食べると如何にあの冷徹なメルアを興奮させ、シャルティアを惚れさせたかが分かるものだ。出来れば是非、俺の国にも仕入れて貰いたい物だ。戦闘に重要な体作りに大いに役立つしな、ガハハハ。」


良し。アピールは成功だ(成功率は始めから100%だったけど)。プロスペリア王国に米を普及させる許可が降りた。チヒロさんやメルアさんの方も、聖国に米の良さをうまくアピール出来ているみたいだ(マリアによる支援につき、成功率は始めから100%)。


これで米の方は大丈夫として、次は赤ワインの方だが、チヒロさんはどうアピールするのだろうか?


◇◇◇


酒とは何か?この世界の人達にそう質問すれば、


エール


あるいは


ワイン


の答えが飛び交う。


酒はどのようにして造られているか?


と質問された時、この世界の人々はこう答える。


決まった材料をぶっ込んで寝かせる


と。では、


どうして酒は同じ場所かつ時間で造られているにも関わらず、味や風味に大きな違いが生じるのか?


と質問された時、この世界の人々はクエスチョンマークを浮かべる。


つまりは、この世界の人々は酒の造り方を知っているが、発酵という酒造りの根本的な仕組みのことは知らないのである。


これにより現在、目の前では革命が起こっている。


「どのワインも最高のクオリティーだ!外れの物が1本もなく、それでいて統一されている...。」


「革命だ。いや、これこそ奇跡だ。」


「どうやってこんな最高のものだけが生み出されているんだ!?教えて、穀エモン!」


これらの質問に対して僕...ではなく、発酵狂愛者りょうりしんえんぜつを述べる。


「我は汝らに問う。酒とは何ぞや!酒は発酵、発酵の賜なり!ならば我は汝らに問う。今の汝らの喉を潤す飲み物は何ぞや!それら汝らの日常に馴染みしワインという名の酒なり!ならば汝らよ、今までに飲みし酒とは何ぞや!それら本物にして本物にあらず、酒にして酒にあらず、真物まものの再現にして再現にあらず、偶然にして偶然にあらず!


ただ小さき生物に許しを請い、ただ小さき生物に恵んで貰うぅ!小さき世界で呼吸をし、無に有益をもたらす影の功労者!それら微の生物なり、酒の真の醸造家なり、それら革命者なり、調味の革新者なり。


明くる日至らば、我らは食の材、微の生物に投げ込み、発酵をもって新しき味を発掘するなり!さらば我国わがくに、微生物と徒党を組んで新しき道へと進み、新しき味を持って料理をし、七つの神宿りし白き宝石と調和、矜持するなり。エ゛ェイ゛ィメンッ!」


訳:酒は発酵という現象で生み出されていて、今までにあなた達が口にしてきた酒は発酵を知らずに造った、酒の名を借りた偽物である。酒とは微生物という小さい生物が呼吸することで生み出されるものであり、微生物は私達に新しい調味料を提供していくでしょう。明日には、様々な食材を使い、微生物の発酵を利用して新しい調味料を作り始めます!エプタはその新しい調味料を使って白飯のお供を作ることに誇りを持っています。


こ、怖い...。会場中にいるほとんどの人がシーンとなっているじゃないか。女神様~ズでさえ、『何か変なものを食ったか?』みたいな視線をチヒロさんに向けている。


だが、何故かアスタ王妃様とメルアさんとシャルティアとマリアさんとイーシスさんの5人だけがアレクサンド・チヒロサン神父に拍手を送っていた。


「皆様。このチヒロさんはとても素晴らしい事をおっしゃりました。」


アスタ王妃がチヒロさんに賛辞を送り、彼女の言った演説の解釈をし始める。始めは僕を含め、ほとんどが首を傾げていたが話が進むにつれ、その真意が分かってくると、所々から称賛の声が上がった。


「どうでしたか?イチロウさん。しっかりと発酵のことについてアピールし尽くし」


チヒロさんがしてやったり顔で僕の元へと来るが、


「我が弟よ、決して彼奴のようになっては駄目だ。そして今の料理神を目に入れるな!ほら、ぎゅ~と。」


それよりも先に、邪なる者チヒロさんを僕の視界に入れないようメティス姉に抱き締められる。


「!?ちょっとメティス様。そんなゴミを見るような目を向けないで下さい。さすがに傷つきますよ!」


僕の方からは見えないが、チヒロさんはどうやらアタフタしている様子だ。


「皆、いっくんを邪悪から守るよ。」


「了解、お姉ちゃん。」


「婿殿は妾が守るのじゃ。」


「あたしでもあれは引くぞー!」


「それ以上近づかないで下さいまし。イチロウ様が穢れますわ。」


「すまねぇ、チヒロ。あたいも今回は擁護出来ねぇ。」


「姫には指一本、触れさせないよ!」


「Noooooo!」


この後、何とかしてチヒロさんはメルアさんとイーシスさんの力を借りて、全員の信頼回復に努めたのであった。


なお、赤ワインが何故すぐに出来たかについてチヒロさんとスイカに質問すると、スイカの<酒造>に微生物を活性化させる作用があるという返答が返ってきた。

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