第98話 メノスさんからの指名依頼

アウラと王城で別れ、王国のギルドにやって来た僕達『女神の家』の4人。改めて見ると、このパーティー全員、和服だ。着物に白装束。藤色の着物を来た2人の美少女が拍車をかけたのか、僕の黒い着物で元々目立っていた『女神の家』が更に際立つという事態に陥っている。その証拠に、道行く人々に好気や嫉妬の視線をずっと送られている。


「あ、あそこからだねー。<透雷>。」


魔法神による目に見えない雷属性魔法。それが嫉妬の視線を向けた男へと炸裂する。


「不敬な目をお兄ちゃんに向けるからです。当然の結末ですね。」


姉の行動に対して義妹は肯定し、シラユキについては...尻尾の先端でお触り攻撃を繰り出している。


「昨日はしておらんじゃろう。だからな、早う報酬を受け取ってな...それから...。」


モフモフの破壊力。もう尻尾の毛並みだけで理性ゲージは赤色点滅まで追い込まれていく。


「シラユキ。分かったから今は我慢だ。耐えろ! 耐えるんだ!」


それに、王金貨100枚というのはとても魅力的な額だ。チヒロさんやメルアさんから国金として補充することを提案されたからね。


※ILLROの収入源になります。


僕達はこれから手には入る大金に思いを馳せて、冒険者ギルドへと向かった。


◇◇◇


「お前達に儂から1つ依頼を出そうと思う。」


ギルドに着き、報酬の王金貨100枚を受け取ると、僕達『女神の家』はメノスさんの自室へと案内された。そして、彼から僕達に一つの指名依頼を出してきたわけだ。


「メノスさん。詳細をお願いします。」


「ふむ。まずは『エプタ』の国の建国、おめでとう。儂の家族がこうして成長していくのはとても嬉しい限りだ。」


メノスさん...。


「話が脱線しかけた。ここからが本題なのだが、儂は今、お前達『エプタ』の国にも冒険者ギルドを設置するという計画を立てている。無論、メルア殿とシャルティア殿下から既に許可は得ておる。」


お、おおお。僕達の知らない所で、どんどん話が進んでいらっしゃる。まぁ、運営を任せているから別にツッコまないけれど。


「いっくん。ボク達が思っているより、運営の方が進んでいるねー。」


「これは負けていられません。お兄ちゃん、指名依頼を受けましょう。」


「おっと待つのじゃ。何事もまずは依頼内容を確認してから、と妾は聞いておるぞ。」


シラユキ偉いぞ。褒美に撫でてやろう。


きゅるるる


シラユキは目を細めて自ら顎をあげていっている。


「「ズルイ!」」


ふっ。褒美が欲しいならば破壊活動をせず、冒険者の基本を実践することだ。


「ふぉっふぉっふぉっ。しっかりとした獣魔を持っとるようだ。では、改めて指名依頼書を渡すとしよう。」


指名依頼:ペア岬の調査


依頼ランク:A級


依頼者:メノス・フォンドゥ


内容:ペア岬における魔物の多発地帯を調査せよ。その原因箇所を見つけ次第、報告を入れるべし。現在、ダンジョン説が濃厚であるため、ダンジョンがあることを前提にせよ。


報酬金:王金貨50枚


「メノスさん。どうしてダンジョンがあると予想されたんですか?」


「...以前にな。あの地帯を調査に向かわせた者達がおったのじゃが、未だに装備品もろとも見つかっておらぬのだ。」


!?


「ただ魔物に襲われたのならば、少なくとも装備品の一つは落ち取る筈なのにそれがないのだ。こういう場合に濃厚なのがダンジョンという訳だ。」


メノスさんはとても悲しい顔をしながら説明を加えていく。冒険者を家族として見ている彼だからこそ、こんな表情を作れるのだろう。


「それで、どうして原因箇所を見つけるだけでいいのかなー。そのまま魔法をぶっ放してハイ終了!じゃ駄目なのかなー。」


駄目です!どうしてうちの狂戦士めがみ達はこうも暗い場面すら破壊していくんだよい?ダンジョン試験を彼女にもう一度受けさせて下さい。


「よく考えてみよ。もし未踏破のダンジョンがある場合、それを攻略するために多くの冒険者達がやって来ることになる。そうすれば『エプタ』の国の魅力を知って貰う機会が増え、少なくともより多くの面でプラスになることは間違いない筈じゃぞ!」


キラリとした目で僕達を見つめるメノスさん。うちの女神達はこの言葉でようやく依頼の真意を読み取れたらしく、何かを考えるそぶりを見せ始めた。


僕としては、白飯の普及における大きな一歩になるというメリットしかないし、返事はもちろんYESだ。


「受けます。ダンジョンがある場合、『エプタ』の住民の最も大きな収入源になりそうなので是非とも調査させて下さい。」


「これこれ。一国の王様が頭を簡単に下げてはいかんよ。もっと堂々としていれば良い。」


こうして、僕達『女神の家』の二つ目の依頼は自国の調査に決定した。


◇◇◇


(???視点)


「ふん。ラペシュがやられたのか?」


「はい。聖国での監視要員から、『女神の家』という冒険者パーティーがラペシュを討ち果たしたという報告を受けています。」


「ああ、あれか。『エプタ』という国まで建てて、絶賛調子づいている奴らのことか?ふん。面白くない。」


一人の男が台座を指で叩いている。すると何かを閃き、ある命令を下す。


「良し。あいつらを呼べ。『エプタ』という国の実態をあいつらに調査させるんだ。いいな?」


「は!」


命令を受けた者が出て行くのを確認すると、彼は静かに怒った。


「調子に乗りやがって。俺達の計画を邪魔した報いは必ず受けてもらうからな!『エプタ』、いや『女神の家』よ。」

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