第97話 エプタの城下町、そしてプロスペリア王国との同盟

イチロウです、現在、城門をくぐった先にある大きな一本道沿いに建築された城下町を歩いています。すごい。日本家屋が見事に再現されている。まるで、地球に帰ってきたみたいだ。


同伴者はツカネ、アカネ、シラユキ、アウラの4人だが、ツカネ・アカネ姉妹は新しく藤色の着物を着ている。これは造形神が僕の着物を見て、色違いの物を作ってみた結果である。似合いすぎて、今でも心臓がバクバクしているのは内緒だよ。


「おはようございます。穀王様!」


途中で、様々な人種の者達がすれ違い様に挨拶をしてくる。この人達は以前、ラペシュに捕まっていた者達(総勢100名)であり、全員が着物を着用している。彼らはプロスペリア王国で帝国やレベル増強剤について伝え回った後、ここに居を構えている。いずれ来る帝国との対決に向けて。


「何か不備なところがあったら直ぐに言うんだぞ。」


「いいえ、とんでもありません。税は月に基本10%。トイレ、家具、衣服、ライフラインが完備している民家。特に、本家竈門やという最高の料理を売っている場所まで付いているんだ。寧ろ、今までで最高の場所だぜ。」


「あの弁当という料理、とても美味しい。」


「穀王が創ったものだと聞いた。ここの国の王様、凄い。」


よしよし。概ね、僕の創造魔法料理は好評だな。『あれ全部、魔法です!』と言ったらどんな反応をするだろうか?


本家竈門や:ILLRO信者の女性10名を店員とし、今朝に僕とメティス姉とツカネでこしらえた創造魔法料理がランダムで出る巻物7種類を完備(メニューは鮭弁当、ハンバーグ弁当、焼肉弁当、幕の内弁当、中華弁当、焼売弁当、海鮮弁当)。店員は巻物に魔力を流して弁当を出し、それを販売している。現在は、配給中。


城下町をさらに進むと、2つの道へと別れるが、ブレッシングリバーへの道を見ると更に仰天した。何故なら、鉄柵から鉄門へとパワーアップしていたからである。


「うわー、すっごく大きい門だねー。」


「前々から気になっていましたが、この奥には何が封印されているんでしょうか?」


「妾が直接、上から見てやろうか?」


「駄目だよ、シラユキくん。妹から覗くなと言われているから、断固阻止させてもらうよ!」


そう言いつつ、アウラはシラユキの尻尾を触ろうとする。


「どさくさに紛れて、妾の尻尾に触るでないわ。」


シラユキの2連続しっぽこうげき!


バキッ


ドゴッ


アウラにクリーンヒット!


「アッハァー♡」


アウラのHPは10,000回復した!


「さ、さすが神。ぼくの体にこんなにもダメージごほうびを与えてくるなんて...。」


鼻血をダラダラと流しながらも恍惚な表情をする勇者様。僕はシラユキとの関係について彼女に忠告をする。


「そんなだから未だにシラユキに嫌われるんだって...。」


「ぼくは嫌われていない...。」


キリッとした表情で、僕に宣言する勇者様。何かもう手遅れだな。シラユキ限定で順調に変態淑女化している。


「それよりも早くお父様の所へと向かおう。首を長くして待っているからさ。」


その言葉通り、僕達『女神の家』はもう一つのプロスペリア王国方面の道を進み、トンネルをくぐることでプロスペリア王国の王都へと辿り着いた。なお、トンネルの出口にまた大きい城門と2人の見張り(ILLRO信者)が立っていたが、シャルティアとメルアさんはどのようにしてあのような人材を獲得しているのだろうか?


答:イチロウという人参で釣り、信者化させている。


ともかく、僕達はこの国の王様に今回の指名依頼の報告をしに、王城へと向かった。


◇◇◇


王城に着き、僕達『女神の家』はギルアに聖国での出来事について報告を行った。


「そうか。2日前に聖国からやって来た者共の言う通り、レベルアップ増強剤の問題はかなり根深いようだ。それも帝国、魔界と。これからのことを頭で考えると痛くなってくるわ。」


報告を聞いたギルアは一国の王として苦悩をしていた。帝国や魔界にこのことが耳に届いたら、と考えているのだろう。


「お父様、大丈夫だよ。ぼく達の近くにはお父様すら軽く超える強者が集う『エプタ』があり、かつ今回の件で聖国もぼく達に協力をすると言っているんだ。恐れることは何も無いさ。」


勇ましき第一王女が猛々しき国王を宥める。素晴らしい親子の絆だ。家族はやはりこうでなければ。


「ガハハハ。気を取り直そう。今回の指名依頼での件、実によくやってくれた。報酬はここのギルドで受け取るがいい。それと、イチロウ。いや、イチロウ穀王よ。もし帝国や魔界がここに攻め込んできた場合、どうか援助をして貰いたい。」


何を今更。その質問の答は一つしかないだろう。


「勿論、協力しますよ。何せ、僕はあなたの二人の娘を貰ってしまったんです。行くとこまで行きましょう、ギルア国王。」


僕は<アイテムボックス>から日本酒を2つ取り出し、ギルアと盃を交わした。


こうして、指名依頼の報告、そしてプロスペリア王国との同盟成立という2大イベントをイチロウ達は無事に消化することになった。が、ギルドの方でもう1つのイベントが残っていることを彼らはまだ知らない。


ーーー


表記についての補足


2章

ペア岬の間もプロスペリア王国領域内

→地点名はそれぞれ王都、拠点。


4章~

ペア岬の間は『エプタ』となり、プロスペリア王国から独立

→地点名はそれぞれ王国、エプタ。

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