第99話 王国と聖国の接待パーティー 準備編 創造魔法米料理と赤ワイン

読者のお腹を徹底的に空かせていくスタイル


ーーー


はい。イチロウです。あの後、メノスさんから指名依頼を受け取り、エプタの城に帰還した僕にシャルティアに呼び止められた。


「今日の17時にお父様とお母様、さらに明日の王国訪問に先立って聖国の聖女様と教皇様がお越しになります。イチロウ様、どうかパーティーのセッティングの方をお願いします。」


現在、午後15:00。この城に住み込みで運営を行っているシャルティアから何と、2国の要人を迎えるための準備をお願いされました。


「現在、チヒロ様の方はスイカ様とともに発酵第一弾目の赤ワイン造りに没頭され、料理の手が空いていないのです。」


チヒロさーん!料理神が料理を放棄しないで下さい。彼女は最近、料理以外の事に熱中しているようだが、僕としてはそろそろ料理神の料理も欲しい所である。あ、今度皆で第1回チキチキ料理大会を開いてみるのも悪くないかもしれない。


※イチロウは地獄を見ます...。


「イチロウ様。」


すると、シャルティアの傍にいたメルアさんが補足を加える。シャルティアもそうだけど、少し泥だらけなのは気のせいだろうか?


「今回のパーティー料理については、今後の『エプタ』の象徴となる米を使った料理を中心にお願いします。これは言わば、一つのアピールタイムなのです。」


あ、そういう捉え方も出来るかー。ならば乗るしかないのか?このビッグウェーブに。


早速、会場となる1階の応接間に行ったが、


「前より数段広い...。」


前に乾杯した時よりも広くなっていたのだ。この規模なら奮発しても問題は無いと確認し、次にリビングの方へと向かい、今夜の料理へと取りかかる。まずは和。


「<創造魔法:寿司、鯛飯、五目炊き込みご飯>。」


目の前に、3種類の色鮮やかな料理が出現する。今回の人数は初の10人超えになるため、創る量も桁違い。寿司なんて大皿の上にネタ毎にマウンテンを積み上げているし、炊き込みご飯系なんて槽にドシンと入ったものが出来上がった。


次に洋。


「<創造魔法:パエリア、海老ピラフ、ビビンバ>。」


...。デカい鍋が2つと石焼きが出てきた。こっちの迫力も負けていない。パエリアは色々な野菜、肉、魚介類が乗っかっていてしっかりとオリーブオイルが効いている。海老ピラフは...デカい海老がゴロゴロと転がっているし、ビビンバは見るだけで焼肉が欲しくなるぜ。


最後に中。


「<創造魔法:餃子の皇将の炒飯、中華粥、天津飯>。」


今度は大量の皿に乗っかった料理が出された。これは、一品毎に100皿分は下さない量になった。この3品については記憶通りの物で安心した。


「イチロウさん。今回も派手にやりましたね。」


そこにチヒロさんとスイカが何やら大きな樽を持ってやって来た。


「へっへっへ。イチロウ。これ何だと思うー?」


スイカが自慢げに『樽の中なーんだ?』ゲームを開催してくる。だが、残念。メルアさんからネタバレを食らっているんです。だから、ごめんちゃい!


「赤ワインか。」


「「ファイナルアンサー?」」


じ、焦らすなぁ。でもな!二人とも目をキョロキョロしているから、分かりやすいんだよ!


「スイカさん。もう答を言いましょう...。」


「あー分かった分かった。正解だよ。これは、あたしが久しぶりに本気に造ってみたもので、今回のパーティーで出そうとチヒロが提案した物だよ。」


賞金は出ないが、正解を戴きました。では、今回のパーティーの主役は僕の創造魔法米料理、チヒロさんとスイカの発酵第一段目の赤ワインとなる訳だ。


結論。他国の要人の胃袋を掴んでいくスタイル。


「これでこの世界に発酵という一石を投じるのです。そういうイチロウさんも凄いと思いますよ...。この彩りとか!」


「あたし的には、今回はこの独特な匂いのするやつに期待するぜ。これ何て絶対、赤ワインにぴったりなやつだろ!」


チヒロさんは寿司、スイカはパエリアや海老ピラフの方にそれぞれ目をいっている。おい、涎を垂らして手を延ばすな、スイカ!これらはパーティー用の料理だぞ。


だが、イチロウは忘れていた。食欲魔神めがみたちの食欲を。それによる嗅覚探知機が高性能では済まされないレベルの探知範囲を誇っていたことを。


「「「「「「「ジュルーリッ!」」」」」」」


リビングの入り口の方にそれはそれは、涎を垂らした肉食獣7匹がいました。彼女達からはそれぞれ、サバンナにいる全ての動物たちすら脱兎のように逃げ出してしまう凶悪なオーラが出ていました。


「知識を司りし英知神メティスが五神権を行使する。我が弟を取り押さえ、目の前に広がる芳しき食物を全て制覇するのだ。」


「「「「「「了解!」」」」」」


そこからは凄まじき攻防...


「キヒヒヒ。油断大敵ですわよ!」


訂正。いつの間にか後ろにいたソールに鎖でグルグル巻きにされ、攻防すら封じられました。


「いたんですか!」


「ええ、ずっと。」


ソールとのノルマを達成したが結局、僕の自慢の米料理は彼女達のお腹の中に消えてしまい、もう一度、創造魔法米料理を創らされる羽目になりました(泣)。


ーーー


女神達の食欲値と性欲値は53万です!

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