第??話 ホーム・アローン? 5柱による城作り

引き続き、イチロウ達『女神の家』が聖国へと旅だった日の留守組の記録を記す。


1階のリビングに集まった5人の女神達。彼らはイチロウ達がここへ帰ってくるまでにどう時間を過ごすかについて話をしていた。彼女達はリビングの保管庫に入っていた弁当を食べている。


「私は今まで通り、3階で本を読んで過ごす...。」


メティスは今まで通りに3階で過ごすことを宣言する。


「次にあたいだが、ここを改築しようと思う。何せ、これから続々とあたい達女神共がやって来るんだ。正直、これでは狭いぜ。」


イードラはここに来る前から決めていた事を伝える。この話を聞いたメイドは丁度良いと言った感じに提案をする。


「イードラ様。でしたら、この豪邸をお城にリノベーションすることは可能でしょうか?」


「ああ、何でだ?まぁ、それくらいの規模までは改築するつもりではあるが?」


メルアは、イチロウがプロスペリア王国内の土地に神米の国『エプタ』の建国を命じられたことをイードラ達に説明した。


「ほっほう、成程。読めたぜ。つまり、この豪邸の改築及び外装のリノベーションを行うということだな。それなら新しく建てるよりは時間はかからないぜ。」


「Exactly(そのとおりでございます)!」


「おっと待て。ここの3階には手を出すなよ。やるなら、4階に続く階段を設置するのみだ...。分かっているな、造形神?」


メティス上司イードラ部下にギロリと鋭い眼光で睨み付け、釘を刺す。


「わ、分かってるさ。だからそんな怖い目で睨まないでくれよ。」


イードラはブルブルと震え、一生懸命に同意の意思を伝える。


「そうなって来ますとモデルとなる城の外装や内装、そしてそれに使われる材料が問題となりますが。」


うーむとメルアとイードラは考える。それを見かねたメティスは助け船を出す。


「ならば、私の領域から城、植生、鉱物についての書物を引っ張り出せば良いではないか?ほれ!」


メティスが指をクイッとすると、3階の方から三つの本が飛んでくる。一つ目は『城 図典』というタイトルの本で、その内容は各城の外装や内装、さらには作成までのプロセスが全て網羅されているといったものだった。さらに言えば、豊富な図版とわかりやすい解説というオマケ付き!

これをイードラが読んでいくと、何度もこくこくと頷く。


「おお、これだよこれ。外装と内装についてはあたいの好みで良いな?」


「はい。イードラ様なら間違いはないかと。後はこれら二つの本を使ってメティス様が必要な物を創っていけば!」


メルアが残りの二つ目と三つ目の本に目を移す。それらは『植生 図鑑』、『鉱物資源 図鑑』というタイトルの二冊の本だった。


「そうだ。私なら創造神ほどではないが、は可能だ。だから、イーシスが『植生 図鑑』を使って植物を、私が『鉱物資源 図鑑』を使って鉱物資源をそれぞれ生み出していけば問題あるまい。ただし!」


またもやギロリとイードラの方を見るメティス。


「あくまで最短かつ最速で終わらせるように。リノベーションや改築が終わるまでは、あの3階に住めないからな...。その意味、造形神であるお前なら分かるな?」


「了解です!メティス様が一日でも早く3階に戻れるよう努力致します!」


敬礼ポーズで上司に応じるイードラ。


「それでは、私は人手を集めに向かいます。城についてはそれからで」


「ならん。1秒でも早く実行だ。私が鉱物資源の生み出しを、イーシスが植物資源の生み出しをそれぞれ行い、メルアとスイカがそれら資源の運搬、そしてイードラが改築とリノベーションを行えば問題はあるまい。さぁ、始めるぞ。」


こうして、ILLROの出番もないまま、5柱の女神達による『エプタ』の国作りが開始。イードラの造形のスピードとクオリティ、イーシスとメティスの資源の創造の力、スイカの金剛力、メルアの<ワープホール>の力が合わさることで、『エプタ』の城及び城下町は信じられないスピードで作成されていくこととなった。その背景には、イチロウが創っておいた2ヶ月分の食事と1万本分のMP回復ポーションというある意味、嬉しい誤算があったことをここに記しておく。


そして、城を作り始めてから5日目。つまり、イチロウ達が帰還する前日の午後1時。彼女達5人の前には、この世界では決して見ることのない日本の城がその姿を見せていた。


「ゼェ...ゼェ...。こ、これでどうでい!」


「ハァ...ハァ...。お疲れ様です。イードラ様。それに他の皆も。」


「フゥ...フゥ...。私は早く、城の庭園のガーディングに取りかかりたいわ。」


「あー酒、酒だァ!酒!飲まずにはいられねぇ!」


さすがの女神達は疲労の色を見せて


「ふむ。これで、心置きなくあの領域で時間を過ごせる。」


訂正。一人の女神様だけは涼しい顔を見せていた。


「おいおい。これで疲労の色の一欠片も見せないなんて」


「何か言いたいことでもあるのか?造形神よ...。」


ギロリとイードラの方を見つめるメティス。


「いえ、何でも無いです。ハイ。」


こうして、イチロウの知らない場所で女神達はその力を存分に振るうのだった。無論、帰還したイチロウがこの光景を見て脱帽したことは言うまでもない...。


ーーー


次回から、イチロウ達へと戻ります。

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