第89話 聖女に連れられてやって来たのは
異世界生活もこれで13日目。今日から休み。と言いたいのだが、ツカネ・アカネ姉妹、シラユキ、ソールの4人は現在、大教会の地下を奔走しています。理由は、昨日の戦闘で派手に壊した聖国の神聖スポットの修繕を聖女様に命じられたからです。まぁ、これはしょうがないし、完全に僕達が悪いしね。ちなみに魔法神であるツカネ曰く、
「ボクなら半日で<創造魔法>で創り直せるから大丈V!だから終わり次第、すぐにいっくんの所に向かうからねー。」
とのこと。魔法神も僕に負けないくらいにチートだよね。だって、この世界のものだったら幾らでも創れると豪語するくらいだし。
また、アウラは教皇様の護衛として拠点に残り、チヒロさんとマリアさんは用事があると言って二人で何処かへと出かけていった。
では僕は何をしているのか?それは、アリアと一緒に大教会の背後にある山へと今現在、登っています。
「今更だとは思うが、本当にアリアが連れて行きたい場所というのはこっちで本当に大丈夫なのか?何だかどんどん鬱蒼としてきているんですが...。」
「はい。問題ありません。この道を辿れば...。はい、見えました。」
こうして山を登って下った先にあったもの。それは泉だった。木々に囲まれ、2つの噴水を噴出しているこの場所は、聖女と教皇しか知らない秘密の土地。聖女が神奉の儀式というものを行う場に、僕はアリアに連れて行かれたのだ。ただその泉の水の色は天色という何処か見たことのある色だったが。
「綺麗な場所だ。目的の場所ってもしかして...」
「いいえ。私がイチロウ様と行きたい場所というのは、私達の目の前にあるこの泉ではなく、あそこに見える浮島です。」
すると、アリアはシュルリと修道服を着脱しようとする。それを見て、僕は急いで彼女を止めにかかった。
「アリアサァン、ナズェヌゴウトシテルンディスカ?」
「え?これから、泉に入って進むためですが、それがどうしたのですか?」
アリアは泉の奥にある浮島を指差して、首をポカンと傾げている。頼むから、質問を質問で返さないでいただきたい。
「<ウインドメンブレン>。」
僕とアリアの二人を空気の膜が包み込む。これと<魔力操作>があれば、息しながら水中を移動できるはずだ。着想は、某海賊漫画の船のコーティングです。
「イチロウ様なら、見られても構いませんのに...。」
さぁ、行きましょう。アリアさん、案内してください。
◇◇◇
現在、僕とアリアは泉の中を移動しています。目の前はコバルトブルーの景色が広がっていて、足元には海藻や小魚が見える。まさに幻想的な風景だ。
「素敵な風景です。」
うんうん、そうだろうそうだろう。
「形は普通とは違いますが、今は二人きりでデートしていますね。」
ニッコリと微笑むアリア。言われてみれば、これは確かにデートだ。しかも初の!そうだよ、これこそ正しい男女の付き合い方だよ。今までの男女の付き合いといったら、
(ゲヘヘヘ。イチロウさん...。) by クレイジーサイコヤンデレ
(いっくん、ボクはまだ満足してないよー。) by 魔砲使い
(お兄ちゃんをもっと頂戴?) by 妹なるもの
(イチロウさん。今日の味はどんなものでしょうか?) by コックカワサ...いや、コックチヒロサン
(さぁ、早く妾と交わりを) by のじゃ
(イチロウ様。今日もご奉仕致します。) by 冥土さん
(今日もイチロウ様をいただきます♡) by サキュバス
(イチロウ...ほーら、口移しで飲ませてやるから口開けろ-!) by 酒豪
(さぁ、来て!ぼくはどんな姫も受け入れるよ...) by 天敵
(キヒヒヒヒ...今日も絞り取って差し上げますわ!) by ストーカーヤンデレ
(イチロウさん。早速、私と房事を始めましょう。) by ???
爛れた付き合いしかない。駄目だ。僕は
「イチロウ様?どうして涙を流しているのでしょうか?」
「ああ。アリアとは清純なお付き合いをしているなって思って...ううう...。」
イチロウは本気の本気で感動に打ち震えながらも、<魔力操作>で水中を進み、やがて浮島に差し迫った。
「アリア、ここで間違いないか?」
「はい。浮上して下さい。」
<魔力操作>で勢いをつけて浮上し、島へと着地した。目の前には小規模の白い建物が建っている。
「では、イチロウ様。中に参りましょう。」
アリアに連れられ、僕は建物の中へと案内された。
◇◇◇
アリアを先頭にして階段を駆け下りていった先、そこには大きな十字架がそびえ立っていた。十字架の元には大きな祭壇があり、壁には様々な壁画が描かれている。特筆すべきは、祭壇に2つのガラス球が埋め込まれている点だ。
「イチロウ様。私が今日、イチロウ様をここにお連れした理由をお話しします。」
頬を赤く染めたアリアがくるりと僕の方に振り返る。
「今日はここで、私と神奉の儀式を行っていただきます。聖女が『
異世界生活13日目。僕は何度目か分からない強制ルートへと突入した。
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