第64話 チヒロの強敵、現る!

あの後、留守番する者用の日本酒や食事を取りあえず2ヶ月分創り置きし、MP回復ポーションは1万分作成した。


食事の量が慎重すぎるだって?だって、唐揚げ1000個を一食で食べる女神様だぜ?洞窟探検の際に松明を5本は買うくらいの認識が丁度良いんだ。


「さて、聖国に行くための方法だけど。」


彼女の話によると、聖国はそれ行きの馬車というものがプロスペリア王国に存在し、3日かけて移動するのが定番ルートである。


え?メルアさんや僕やツカネの<ワープホール>で行けるんじゃないかって?それじゃ、冒険じゃないんだ。道中のイベントも回収しながらが僕の考える冒険なんだから。ちなみに今回はチヒロさんも一緒で、僕、ツカネ、アカネ、チヒロさん、シラユキ、そしてアウラを加えて依頼を受けます。久しぶりに『女神の家』全員集合だ!


午前9時。僕達の待つ停留場所に聖国行きの馬車がやって来た。運賃は1人金貨1枚。日本円では1万円に相当するが、アウラによればこれで妥当だという。むしろ金を持たない人は歩きで向かうため、これでも豪勢な方だという。


「本日の行者を担当します。ラードといいます。3日間の快適な旅をお届けするよう努力いたします。」


ラードと名乗った男は軽く挨拶と会釈をする。


「所で、馬車に乗る人の人数ですが7人でよろしかったですか?」


7人?僕、ツカネ、アカネ、チヒロさん、シラユキ、アウラだから6人の筈なんだけど...


「ご機嫌よう、イチロウ様。」


後ろから金髪ウェーブの少女が声を掛けて来た。というか、


「ソールさん、いたんですか。」


「ええ、ずっと。」


馬鹿な?ソールは米作り関連の農具作りのために留守番をする予定だっただろ。


「確かに農具作りを頼まれましたけど、思いのほか早く出来てしまいまして。なので、イチロウ様の神剣の所にワープさせていただいた次第です。キヒヒヒヒヒ。」


口を三日月の形に歪めて笑う武器神。取りあえず、憑いてきたじゃなくて着いてきた彼女の分の運賃も払って僕達は聖国に旅だった。


◇◇◇


(???視点)


『女神の家』が馬車に乗り込んだ頃、その様子を一匹のフクロウが覗いていた。そのフクロウは召喚獣で、その使い魔は彼らをその召喚獣越しから監視していた。


「あいつらは今日の午前9時行きの馬車でここに向かうらしいです。」


「そうか。私が命じる。奴らをこの国に到着するまでに始末するのだ。」


「了解しました。」


使い魔は呪文を唱えて、<召喚魔法>で次々と魔物を召喚し、『女神の家』が乗る馬車を襲撃するよう命じていった。


相手が最凶の狂戦士達であることも知らずに。


◇◇◇


馬車の旅は快適~♪


などと、その気になっていた僕の姿はお笑いだったぜ!


「アガガガ。アウラ。ものすっっごい揺れるんですけど。」


揺れが半端ない。尻が痛くなる。


「え?これでも快適な方なんだけどなぁ?」


うそだろアウラ!これが快適なのかよ!?地球よ、お前は偉大だった。


そして、とある者が次第にあの状態に近づいていく。


「き...きぼち...悪い...。」


口を抑えて耐えているのはまさかのチヒロさん。た、耐えろ! 耐えるんだ名も知らぬ料理神よ!


「まさか、料理神が乗り物に弱いなんてねー。」


「私もこれは予想外でした。あー顔がどんどん白くなっています。」


「ちょっとこっちに向かないで下さいまし。昨晩、イチロウ様にハジメテを捧げたこの神聖な体を汚さないでくれませんこと!」


ツカネ・アカネ姉妹はチヒロさんの顔を上に向かせ、時々アキュウエリアスを飲ませながら介抱をしている。


シラユキは始めは人型で馬車の席に乗ってはいたものの、あまりの快適のなさに途中で小竜状態に変化して、僕の頭の上に乗っている。そして今は、ぐっすりと眠っている。古戦場ばしゃのせきから逃げるな!!


そして、ソールの方は何故か僕の膝の上に座っている。というか、ソールさん。手を着物の中に忍ばせないでくれませんか?


「ここ、苦しそうですわよ?」


キャー!ソールさんのエッチ!


「もう...無理...う...。」


向こうは向こうでチヒロさんの頬が膨らみを作ろうとしていた。


「が、頑張って下さい、チヒロさん。」


「そうだよー。休憩まで耐えれば、乗り物酔いに勝てるんだから!」


すると突然、馬車が停止する。何が起こった?全員が前の方を見る。


「た、助かりました。」


唯一、チヒロさんは未だに空を見ているけれど、とにかく行者さんに理由を聞いてみよう。


「前方に、オークゾンビの群れです。お客様、このまま迂回しましょうか?聖国到着までの日数は延びますが、その方が安全です。」


冗談じゃない!あんな某鬼のたけしのようなガタガタの延長は絶対に回避してやるぞ。あ、あれを創れば何とかなるか!ま、取りあえず鑑定。


オークゾンビ×100

HP 1000/1000

MP 1000/1000

攻撃力 1000

防御力 1000

草色の肌をした豚人。腐敗しているため、食用不可能。火属性魔法で焼却しましょう。討伐部位は骨。


ヴァァァァ


うっわ、気持ち悪い。ただでさえ馬車で酔いそうになっているのに、更に追い打ちをかけてくるんじゃない。僕達は酔いというデバフ効果を伴いながら、魔物と相対した。


ーーー


次回、あの女神がヒャッハーする!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る