第59話 神米の国『エプタ』の始まり

近況ノートに『???』が出没するようになりました。この『???』は一番ヤベー奴なので、どうかご注意を...


ーーー


(引き続き、イチロウがヴィシュヌから重すぎる愛を囁かれ、こってりと絞り取られている頃)


「「「「「な、なりませんぞ。そんな何処の馬の骨とも分からない平民などと婚約なんぞ。」」」」」


謁見の間になだれ込む集団。どうやら先ほどの王女様の婚約を嗅ぎつけた
















ようではなく、これは王妃とメルアによる作戦だった。わざと<ワープホール>で一部始終を全ての貴族の耳に入るようにし、イチロウのことを平民と見下している者達をあぶり出す。それが、彼女達2人の作戦の内容だった。


王女様達の婚約を聞きつけた時、その傲慢な貴族はどんな行動を起こすだろうか?常日頃から自分の子息と婚約させ、更なる地位を確立しようとする野心を抱く者達の取る行動はどんなものか?そんなもの、断固阻止するに決まっている。


つまり、ここになだれ込んだ集団こそが作戦のターゲットにあたるのだ。中には慎重に期した者もいるかもしれないが、その大半が今こうして湧いて出たというわけだ。


「メルア。あなたの言うとおりになりましたわね。」


「ええ。王妃様。全ては我々の思うがままに。」


((米星!))


2人の信者メルアとアスタは陰でほくそ笑んでいた。


「むっ。よく見れば、そこにいる女共もなかなかの上物。」


「王女様方も良いが、そちらも...ありだな。」


愚か者は女神達を見つけると、じっとりと品定めをする。この視線が決め手となり、女神達の凶暴化バーサーカーが臨界点を突破した。


「お前達は大罪を犯した。」


「それは、私達の愛するお兄ちゃんを平民呼ばわりしたこと。」


「妾達が直々に判決を下す。」


「更に言うならば、あなた達が違法薬物を裏取引で購入していた証拠も掴んでおります。」


ツカネ、アカネ、シラユキ、メルアの順に罪の内容を告げていく。


「王妃であるアスタ・デ・プロスペリアが『女神の家』及びメルアに命じます。















そこの愚か者共に...重い罰を。」


「「「「懺悔と後悔を!」」」」


そして、4人の狂戦士による蹂躙だんざいが終了した後、メルアがイチロウをここへと呼びに向かった。


◇◇◇


お待たせしました。イチロウです。目の前に広がる惨状について、国王の代わりに王妃とメルアにより説明を受けました。


ギルアがそもそも僕と王女達との婚約を視野に入れていたこと。


『頭、冷やそっか』という感じで、王妃によりギルアは(魔力を)絞り取られたこと。


目の前で倒れている貴族らは全員、違法薬物の裏取引をしていた罪人であるとのこと。


ここからは補足説明となるが、騎士団のほとんどはそこに倒れている貴族の子息で構成され、今朝あたりに訪ねてきた団員も門で待ち構えていた軍団も、その子息達であるらしい。


だが、一つ引っかかることがあった。


「ちなみに聞きますが、その違法薬物とは?」


「詳しくは知りませんが、名前は『レベル増強剤』。これを使って、王女様方よりもレベルをアップさせ、婚約を勝ち取ろうとしたみたいです。」


ここでプリペアの『デスト事件』が関わってくるかー。ついさっき、ギルアとの戦闘でも思い起こしていたけど、まさかここで回収するとは。


この事件についてはこれで解決だけど、僕は今現在目の前で起こっている事件に目を向ける。


「所で、謁見はどうするんですか?肝心の国王様がこんな感じでダウンしているんですが?」


「大丈夫。ぼくのお母様が代わりに執り行えば良いから。」


肩をトントンと叩き、推し進められる。そんな感じに進めて良いのか?取りあえず、テンプレ通りの配置について謁見を進める。


「それでは、『女神の家』については先ほどの功績から爵位を授けます。」


おお、とうとうなってしまうのか?


「としたかったのですが、あなた達の場合はそれだけではおさまりません。」


何か流れが変わったぞ?爵位でなければ報奨金?何かの権利書?あ、米栽培の特許は欲しい所ですが?


「よって、ペア岬の間の区間を一つの国として定め、このプロスペリア王国と協力関係を結んでいただくことにします。はい、これ建国の許可証ね。国名の方はどうしますか?」


そ、想像以上にデカすぎる報酬だった。


悲報。爵位を貰って成り上がるというテンプレが立った今崩壊し、異世界生活8日目で国を持つことになりました。


「当然だねー。」


「当然です。」


「当然じゃ。」


「当然だよ。」


「当然です。」


「当然でございます。」


女神達と王女達がご満悦な笑顔を浮かべている。


「いやいやいや。いきなりキングは執れませんよ。せめて領地経営の方向で」


「イチロウくん。君はぼく達2人と婚約するんだよ。そんな君が一塊の領地経営者に収まるわけないじゃないか。」


「そうです。もう観念して下さい。イチロウ様はもう来るところまで来ているんです。もう引き返すことは出来ないのです。ここから先は一方通行なんです。」


女神様だけでなく、王女様にも強制ルートを宣言される僕。逃げだそうと思ったが、


(また2年分?2年分?)


と一番ヤベー奴が脳内に囁いてきたため、『一粒のお米には七人の神様が宿る』という文からとって、


神米の国『エプタ』


※エプタはギリシャ後で『7』 by イチロウ


と名付けた国を持つこととなった。僕はただ、この世界を気ままにさすらって、好きな国を冒険し、うまい依頼を受け、うまいものを食えればそれでよかったのに。


ーーー


これで権力という鎖が、狂戦士達に通用しなくなりました。そして、次回はあの料理...いや、ファースト米による宗教活動の記録が綴られる。

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