第56話 特別試合 <魔装:威圧>VS<英雄覇気>、<真名解放>VS<覇王化>
現在、<剛力>を使って自分の体を慣らしているイチロウです。
剣と剣の鍔競り合いにより、体を温めながら、力の調整をし、次第に正確にしていく。それにしても不思議と気分が落ち着いている。余裕の表れでは無いけれど、何故だか”負け”という単語は頭から消えていた。
「ハハハ。少し困惑しているな。何、これから少しずつ慣らしていけばいいのだ。今の運動のように。」
すると、ギルアの雰囲気が変わった。長刀に黄昏色のオーラが纏わり付き、更に白い稲妻がバリバリと迸る。使ってきたか。
「さて、ここからが本番だ。<英雄覇気>。これが俺の80%の力だ。」
「本番だったら100%を指すんじゃ無いのか?」
「戦いは奥の手を隠すのが常識だろ。その方が格好いいし。」
僕はこのやり取りの間に、某海賊漫画のあのシーンを思い出していた。そう、雲が真っ二つになるあのシーンを。
「<魔装:威圧>。」
久しぶりに神剣に赤白い稲妻を纏う。始めて使ったのはデストの時だったっけ。今の『プリペア』の町はどうなっているかなぁ...。
「行くぞ、イチロウ。」
ギルアは、左足を強く踏み込んで白い稲妻と黄昏色のオーラを纏った長刀を右方向に横薙ぎへと一閃してきた。
僕の方も同様に、左足を強く踏み込んで赤白い稲妻を纏った神剣を右方向に横薙ぎへと一閃。二つの剣が触れる...前にオーラと魔力が激突した。
◇◇◇
この時、会場中は1人、また1人と気絶していった。<英雄覇気>と<威圧>が激突し、それぞれの力が周囲に拡散していったからだ。
「え、何が起こったの?」
「し、しっかり。」
周りはパニックになり、闘技場の外に避難する者が後を絶たない。何とかギリギリで意識を保っていたのは、ハッシュ、目覚めていたアウラ、女神達だけだった。そして全員が、2人の激突を見てこう感じていた。
触れてねぇ!
◇◇◇
「ヌゥゥゥゥゥゥ!!!」
ギルアが力を込めてさらに長刀を押し込もうとする。
「オオオオオオオ!!!」
僕の方も負けじと神剣で押し返していく。
ちょっとした悪戯心であれを再現しようとしたのだが、会場中をパニックにしてしまったよ。それにまだまだ止まらないし、周りの地面がボコボコと空中へ崩れていっている。
あれ、また何かやっちゃいましたか?
ズドォーン!!!
だが、それも後の祭り。<英雄覇気>と<威圧>のオーラと魔力は肥大化し、遂には闘技場全体まで崩壊させていった。
あああ、ヤベー。これ、弁償もんじゃーん!あ、<創造魔法>で修理すればいっか(諦)。
「ガハハハハ。闘技場に構うなイチロウ!もっと力を出せ!俺に集中しろ!」
そこからは凄まじい剣戟を繰り広げていった。一振りするだけで、地面は崩れ、また一振りすれば、周りに生えていた木が薙ぎ倒されていく。僕達2人にとっては戦いに集中しているだけなのに、周りの人は『もういい加減にしてくれー!』と言った感じで、僕達を眺めていた。
「これだよ、これ。戦いはこうでなければならない!かつてないこの緊迫感!!これこそが俺の望んでいた
「よく喋りますよ。周りがこんな風になっていて、僕は気が気でないですよ。」
「心配か。ガハハハ。それは、“はしか”みたいなものだ。超えれば二度とかからないぜ。」
この間も、互いに猛襲をかける。
「行くぜ!<
黄昏色のオーラの巨大な斬撃が放たれていく。
「神代流魔剣術 威の巻 神薙!」
僕は赤白い稲妻を纏った剣から衝撃波を打ち出す。中央で斬撃と衝撃波が衝突するが、今回は衝撃波の方が威力が上回り、斬撃ごと巻き込んでギルアへと襲いかかった。やったか(フラグ建築)。
「フゥ...フゥ...。やるじゃねぇか。」
でっかい傷を負いつつ、まだ動ける様子のギルア。びっくりだ。
「初めて“敵”に会えた...最高のクライマックスにしよう...<覇王化>。」
すると、黄昏色のオーラが鎧を形成していき、長刀もより大きなオーラを纏っていく。これで、最後にするつもりのようだ。では、こちらもそれに答えて行こうじゃないか。
「<
神剣の本当の姿を解放させ、黒き長羽織を羽織っていく。これを始めて使ったのは、ギルアの娘のアウラだったな。
「素晴らしい魔力だ...それほどの膨大な力をこうもあっさりと制御するとは。」
感動するギルア。どうやらお気に召したようだ。そして、あの時のように、周囲に漂う水属性の魔力をかき集め、そこに僕の魔力をドッキングさせる。これにより、僕は巨大な水の蛇を形成する。
「フ。準備はできたか?イチロウ。」
ギルアの問いに僕はこくりと頷く。あの時と同様に、0.1%に抑え、この戦いの終焉を告げる一撃を僕は放つ。
「<
「神代流魔剣術 終焉の巻
ギルアの放った黄昏色の暴風を、僕の創り上げた水の蛇が迎え撃つ。だが今回も僕の一撃の方が威力は上回っていて、
その時、イチロウから抜け出た一本の髪。その色は銀色に染まっていた。
ーーー
[次回]あのクレイジーサイコヤンデレがやって来る。
「私、×××××さん。今、ゴミ捨て場にいるの」
「私、×××××さん。今、郵便局の近くにいるの」
「私、×××××さん。今、あなたの家の前にいるの」
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