第53話 特別試合 ”白い魔王”ツカネVS”四色の魔法使い”タオ

「ガハハハハ。ハッシュは四天王の中でも最弱...。」


「全く、適当なこと言うんじゃねぇ。」


「して、あいつの実力は」


「ああ。正直に言って桁違いだぜ。しかも、相手を死なせないように手加減していた感じも受けた。ありゃ、化け物だ。そしておそらく、俺が相手した彼女があの組で一番弱い。他の3人の実力はもう見なくとも...。」


騎士団長である彼にそう言わしめる実力。それを聞きギルアは更に、イチロウとの戦いを楽しみにするのだった。


「では、第2試合を開始します。各組から1人ずつ選出していって下さい。ただし、第1試合で戦った相手は選べなくなっておりますのでご注意を。」


司会者が各組へと指示を出す。


「良し。次は、タオを選出するぜ。」


「またまた来ましたぁ。プロスペリア組からは王家お抱えのタオが選ばれましたぁ。"四色の魔法使い"という二つ名の通り、この世界でもわずか3名しかいないとされるフォースの1人だぁ。」


ちなみに、フォースとは属性魔法を4種類扱える魔法使いのことを指すらしい。


「ふっ。属性...たったの4か...ゴミめ...」


いやいや、凄い方ですよタオさん。むしろ彼女が異常すぎるだけなんです。え?お前も全属性だから異常なんだって?そこに気づくなんて、アナタぁ...勤勉デスね。


「さーて。漫画せいてんで得たこの新しい魔法オモチャで遊んであげようかぁ。」


遂に魔法をオモチャと言いやがりましたよ、この魔法神。そんな風に思っているのは、あなたくらいですからね、誤解のないように。


「『女神の家』組からはS級冒険者のツカネが選ばれましたぁ。"白い魔王"によるあの悪夢が...悪夢がぁぁぁ。」


トラウマになっていらっしゃるぅ。ツカネ、一体何をしたんだ?


「オールラウンダー様。今回はご教授をお願いします。」


いきなり頭を垂れるお抱えさん。全属性を持つ事って指折りの人でもああさせるくらい凄いのかぁ。


「かぁ、気持ちわりぃ。やだ、コイツ。うわぁ。」


魔法神、ドン引き。タオさん。あなた以外と伝説になるかもしれませんよ。


「それでは、試合開始。」


「行きますよ。<ファイアブレス>。」


いきなり大規模な火炎を高速で放つタオ。今まで出会ったツカネやアウラ以外の魔法使いでは一番の使い手であるのは間違いない。しかもこれは上級に位置するぞ。


「<ウォーターウォール>。」


対してツカネは、上級ではない下級水属性魔法で簡単に火炎を打ち消した。馬鹿な!上級じゃないのにこのレベルの水属性魔法を発動できるなんて!


「信じられない!」


タオの方もこの異常性を理解できたみたいだ。そう。下級魔法が上級魔法とタメをはれることは普通、ないのだ。そして、更にツカネは魔法を発動させる。


「<ウォータードラゴン>。」


<ウォーターウォール>で出した水を竜に変えて、タオへと放った。この魔法は上級魔法だ。


「<アースプレシピス>。」


今度はそれを目の前に土の絶壁を作って堰き止める。この怒濤の魔法合戦に会場中は盛り上がる。


「さすがです。オールラウンダー様は。」


「...。」


ツカネは杖を取り出す。すると、地面と土の壁に何かの植物の芽が生える。それは次第に成長していき、大きな樹木を形成していく。


「ここからがボクの成果だよー。水、土、光で創り上げた混合魔法。<フォレストエマージェンス>。」


会場上が目を疑った。混合魔法というものは存在するが、3つの属性を組み合わせたものは見たことが無かったからだ。つまりこれで、ツカネは混合魔法の先端を築くことになったのだ。そしてタオは、


「う、動けない。杖を構えることも出来ないくらいにキツくしまって。」


見事に捕らわれてしまった。


「そういえば、次の試合で戦う人にとってこれは邪魔になるよねー。焼却処分しなきゃ。」


「こ、このままではやられる。こうなったら、<召喚サモン:サラマンダー」


タオは火属性の精霊を召喚したようだ。このタイミングで異世界ファンタジー定番の精霊が拝めるとは!やったぜ!


そのまま樹木が焼き払われ、リング上の樹木や絶壁が灰燼に帰した。


「これが僕の奥の手です。サラマンダー、突貫です。」


キュルルルル


ツカネに向かって炎を纏いながら攻撃してくるサラマンダー。それは見事にクリーンヒットした...ように見えたが、


「ふふっ」


タオの後ろに1が立っていた。


「ど。どうしてそこに。だってあそこに確かに立っていた筈なのに。」


すると、サラマンダーが攻撃したツカネがブレていき、消えていく。


「<ミラージュ>。光属性魔法の1つだよー。そして、最上級闇属性魔法<ブラックキャスケット>。」


右手の親指、人差し指、中指を上に上げ、その中央に魔力で黒い箱を形成すると、瞬く間にタオをその黒い箱で囲んでいく。数秒後、黒い箱が消滅すると、タオは無数の斬り傷を負って倒れた。


「うーん。漫画で考えたこの魔法。ボクが想像していたものより半分以下の威力しか出せてないやー。まぁ、要研究だねー。」


ツカネは自分の魔法がまだまだ改良の余地ありと感じながら、リングを降りていく。


「第2試合勝者、ツカネ。」


審判は声を高らかに、ツカネの勝利を宣言した。


ーーー


[あとがき]


クレイジーサイコホモ「どうやら作品を間違えたようだ...」

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