第52話 特別試合 ”殲滅の弓使い”アカネVS”瞬閃”ハッシュ
『第1回女神の使いやあらへんで チキチキ この勝手すぎる国王様に鉄裁を! 女神様殺戮ショー』。
嘘です。イチロウです。さて、今回の特別試合について説明するが、団体戦では無くあくまで個人個人で戦っていくだけのルールである。つまり、先に3勝したから勝ちという訳では無く、あくまで各組から1人ずつ選んで戦うだけの試合である。
「それで、どうしてぼくがイチロウくんの敵チームになっているんだい?」
躊躇無く不満を口に出すアウラ。彼女はプロスペリア組に属されている。
「ガハハハ。お前は勇者である前に俺の娘だ。これだけは譲れん!」
その言葉を聞いて、アウラは『誠に遺憾である』といった感じに顔を背ける。
対して『女神の家』はメラメラと燃えていた。
「それでは第1試合を開始します。各組から1人ずつ選出していって下さい。」
司会者が各組へと指示を出す。
「ガハハハ。それでは、俺達からはハッシュを選出するぜ。」
「来ましたぁ。プロスペリア組からは騎士団長のハッシュが選ばれましたぁ。"瞬閃"という二つ名の由来を目撃されるのか見物です。」
ミミルさん、司会うまいなぁ。
「お兄ちゃん。」
ふと、アカネの方から声が掛かる。
「最初は私から行きます。お姉ちゃんはお抱え魔法使い、シラユキさんは勇者と戦いたいと言ってますし、お兄ちゃんの方はあの国王と強制的に指名されていますので。」
ツカネとシラユキの希望もあり、アカネは騎士団長と対戦するみたいだ。
「『女神の家』組からはS級冒険者のアカネが選ばれましたぁ。"殲滅の弓使い"による蹂躙が今宵も始まりますぅ。」
それぞれリングに上がって、面と面を合わせるアカネとハッシュ。
「お前は弓矢を使うみたいだな。」
「そうですね。それが何でしょうか?」
「一応、先にばらすが俺は剣術を使う。だからこの勝負、間合いを詰められるかどうかで決まるな。」
「...。言いたいことはそれだけですか?それだけでしたら、早く試合を始めましょう。」
アカネは神弓『アマカゴノユミ』を、ハッシュは剣をそれぞれ構える。
「それでは、試合開始。」
試合開始になると、ハッシュは間合いを一気に詰めにかかる。アカネはいつも通りに矢を構える。
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まずは1000本の矢を0.2秒で連射する。普通ならこれで魔法を使わなければ大体詰むが、ハッシュは無駄の無い最小限の動きで避けながら、アカネの所へと接近。剣を一閃し、決着を着けようとする。しかし、
「甘いですね。」
弓でしっかりとガードする。その様子に、ハッシュの目が僅かだが見開く。
「なっ!?」
「弓術は何も矢を放つだけじゃないんです。弓を使った近接格闘もそこには含まれているんですよ。」
ハッシュは一旦、距離を取る。アカネはそれを確認すると、アクロバットな動きで弓を棍棒のように振り回す。まるでアクション映画を見ているかのようだ。
「さぁ、行きますよ。<最上級弓術:弓格闘>。」
弓を回しながら、ハッシュと鍔競り合いをするアカネ。その体捌きは中国拳法を彷彿とさせ、弓で剣を防ぐとその勢いを利用した蹴りを放ったり、弓を地面に突き立てて跳躍をしたりとその動きのバリエーションも多彩である。
そのため、次第に手数も多くなっていき、反撃をしようにも新しい動きを取り入れられることで、ハッシュは防戦一方となってしまう。
「オラオラオラオラァ。試合前の間合いの話が何だって?」
膝に蹴りが入り、更に横腹に弓による打撃も一発入っていく。無論、レベルは195なので、鎧があろうがなかろうが大ダメージは免れない。
「ぐ...うっ。」
ハッシュは、心の中で試合前の発言について恥じた。
(間合いを詰めれば、弓術のような遠距離専用を相手取るのは容易だと考えていた自分をぶん殴りたい。)
そして、土手っ腹に弓の突きを入れられて吹っ飛ばされる。その瞬間、
「<
白い光を込めた矢を構えるアカネ。そのまま打ってくると感じ、距離を詰めようとハッシュは自分の最大の脚力でアカネに向かったが、その予想は裏切られる。
なんと、矢を構えたまま弓を地面に突き立て、空へと逆バンジーしたのである。その跳躍力は10 m、20 m、30 mとどんどん飛んでいき、そして100 m地点に到達した。ここから繰り広げられるは、地上への蹂躙。
「虐げられし弓達の全ての思い、その身に受けて砕け散れぇ!<スター・プリズム・フォール>。」
白い無数の矢が放射線状に放たれる。そして、その放たれた矢はハッシュに向かって集結し、一気に降り注いだ。
地上にいるハッシュは恐怖に駆られた。落雷のごとき光速の矢が広範囲に向けて放たれ、更にはランダムに落ちていくために、回避や防御が厳しい状況に立っているのだ。そして僅か1秒後、ハッシュは耐えられなくなってしまい、
「うおおお。降参だ。降参する。このままじゃ身が持たんぞ。」
降参した。その宣言を聞いたアカネは連射を止め、地上にシュタッと降り立った。
「第1試合勝者、アカネ。」
審判は声を高らかに、アカネの勝利を宣言した。
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