第48話 ポン酢vsごまダレvsダークライ

目を開くと、僕はあの部屋じごくにいた。あ、ヤバ。そう感じた僕は素早く<上級雷属性魔法>を発動させるが、


「逃がしませんよ...」


すぐに魔法が封じられてしまう。遅かったか。


「フフフ。駄目じゃないですかぁ。自分から気絶しようとしたら。」


振り返ると、すでにハイライトオフのヴィシュヌが立っていた。そして、いつもの如く体の動きが封じられて簡単にヴィシュヌに押し倒されてしまう。まだ2回しかここには来ていないが、決まって


味見(お触りクンカクンカペロペロ)1年

キス1年

絞り取り1年


というメニューで逢瀬を楽しみたいとヴィシュヌは昨日宣言したのである。しかもこれを体が動かない状態で3年分やられるんです。十字架に磔にされ、72時間刀で刺され続けるよりもキツいでしょう。


「本当ならイチロウさんの体を最初にじっくりと味見したいのですが、今回の働きに免じて絞り取り1年分だけで勘弁しておきます。」


ああ、そうか。だったらあの戦いは決して無駄ではなかったといえるなぁ。僕は心の中で達成感を抱きながら、ヴィシュヌに食われていった。


◇◇◇


後頭部に柔らかさを感じて目を覚ますと、膝枕で介抱されていることに気づく。ここはリビングか。


「目を覚ましましたか?イチロウ様。」


上からメルアさんが覗き込む。


「ああ。」


ゆっくりと起き上がろうとしたが、体の上に重みを感じた。ああ、チヒロさん以外の女神達~ズ達が眠っていた。皆も疲れて眠ってしまったのだろう。取りあえずは休ませてあげよう。


「メルアさん。皆をソファーに寝かせてくれないか?」


「承知しました。<ワープホール>。」


ツカネ、アカネ、シラユキ、スイカをリビングのソファーに転移させる。お疲れ様。すると、チヒロさんが料理を持ってやって来た。


「おや、皆さんはどちらに?」


「お疲れのご様子でしたので、イチロウ様の命によりソファーに座らせました。私はこれからシャルティア様をお呼びします。」


チヒロさんが持っているものはよせ鍋。ボーイカウの肉、野菜をふんだんに盛り込まれていて、お腹が減ること間違いなしだ。どうやら早速、料理本に記載されているレシピを試したようだ。本棚から離れた所にあるテーブルに鍋敷きを敷いて鍋を置き、椅子を持ってきてから食べようかと思ったが、ぴょんと飛び跳ねる音がする。


「そうは問屋が卸さないよー。」


「そうです。3人だけで食べるなんてズルイです!お姉ちゃんやシラユキさんならともかく私は一生懸命働いたはずですよ。」


「あああー。肉を。妾に肉をー。」


「あたしに酒を分けてくれー!」


フンスフンスと息を上げてかかる4人の女神達ツカネとアカネとシラユキとスイカ。どうどう。分かったから席について。


「イチロウさん。例の2つを。」


「任せた。<創造魔法:アツカンの食ポン>。<創造魔法:オバラのがぶがぶごまだれ>。」


鍋界でオーソドックスの2つの調味料を特殊召喚。これで面白くなるのはどちらのつけだれが人気となるかだ。そして、このタイミングでメルアさんとシャルティアも合流した。つまりこれで女性陣は7人。さぁ、僕達のつけダレ戦争デートを始めましょう。


「ハフハフハフ。」


早速、熱いままイエローキャロットを放り込んで後悔しているシラユキ。彼女のつけダレはごまの方。濃い味付けを好む彼女はやはりそっちに食いつくか。


「さっぱりしていて美味しいですね。私はこっちがいいです。」


続けてアカネはホワイトナッパをポン酢につけて召し上がる。アカネは塩みたいにあっさりした味を好むみたいだ。


「うんうん。この具材も美味しいよー。」


クリアビッグロットを食べているのはツカネ。彼女はごま派。唐揚げの時は塩ダレよりしょうゆダレの方を好んで食べている彼女はシラユキと好みは被っている。


チヒロさん、メルアさん、シャルティアの方はというと、鍋の具材一つ一つをポン酢とごまダレにそれぞれつけて2通りのパターンを味わっている。彼女らは両刀使いか。最近、彼女達3人が一緒になる所を多く目撃する。仲良きことは美しきかな。


現在は、ポン酢が4、ごまダレが5と若干、ごまダレがリードしている状態。最後のスイカはというと、


「あー。染み渡りますなー。酒に合うのはこっちだー。」


何と何とのポン酢!シラユキに似た方向で行くと思った...けれど、ポン酢を使った酒のおつまみがあるのを思い出すと、この結果に納得してしまう。


つまりこの勝負、5対5で引き分けていて、僕の出方次第で勝負は決まるわけだ。僕はごまダレとポン酢のある方に手を向け、
















「<創造魔法:オバラのキムチだれ>。」


悪魔を召喚した。ダークライかと思った?残念!キムチだれでした!というより、僕は鍋のつけダレは全てこのタレで美味しくいただいている。うん。これぞ、不動のチャンピオンだ!


ジッー


皆、こっちを見ている。視線はキムチだれをロックオン。ふふ、いいだろう。お前達も試してみよ。僕は皆にキムチだれを勧めてみた。


その後は、圧倒的だった。ポン酢とごまダレは見事にテーブルの端に追いやられ、全員がキムチだれのみで鍋を食べるようになった。そして、鍋の〆の雑炊でさえも、全員がキムチだれをかけることになったのだ。


本日の勝敗、ポン酢&ごまダレの敗北。


敗因、悪魔の召喚。

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