第47話 3階をビフォーアフター
漫画や小説を創る時に思い出した。この世界の本を読んでいない。というより、自然にこの世界の文字が読み書きできることに今更気がついた。
「いっくん今更過ぎだよー。それこそ1日目の宿取りの時に気づくべきだよー。」
デスヨネー。だって日本語のように自然と出来たんだもん。意識しないと気づかないレベルだもん。
「お兄ちゃん。この世界に来た時には神様になったと思います。その時に、基礎能力が大幅に上がりましたよね。」
ああ、確かに上がった上がった。
「その際、学習能力も同じくらいにパワーアップしたため、他人の会話を聞いたり、お店の看板や依頼を読んだりするだけで、言語面はカバー出来ちゃうんです。無意識の学習という奴ですね。」
そういうことか。通りで前々から魔法や剣術がこうも速く使い込ませるようになるわけだ。これが俗に言う、『覚えたぞ』(無意識)か。
「補足しますと、前にイチロウさんに創ってもらった『やまファーム 米の種から白き宝石まで』という本ですが、文字は全てこの世界の言語で書かれています。」
チヒロさんに補足を聞いてさらに驚く。マジっすか?マジだったらこれから創る本を一度読んでみようかな。どんな風に変わっているのか見てみたい。昼ご飯の『ボーイカウの味噌焼き』を食べたら早速、3階へと駆け込んだ。
◇◇◇
午後1時。今から僕の読んだことのある本全てを<創造魔法>で創っていくことにしたのだが、何故か女神様~ズがここに集まっていた。
「あのー。ボク達が王都に買い物をしている間に何をしたのかなー?一応、いっくんがまた何か考えているのを読んでついていたけれどー。」
「3階ってこんなでしたっけ?この木造物体は明らかにこの世界にはありませんよね?」
「婿殿だ。絶対婿殿が関わっておるじゃろ。」
フハハハ。どうだ。驚いて声も出まい。今からここが、劇的にビフォーアフターされるんだよ。
「それでは今から僕は、<創造魔法>で本をドローしていきます。その際、しっかりと50音順で棚の方に並べていって欲しい。」
予め本棚には頭3文字のタグを付けている。そうそうに滞ったりはしないだろう。
「それでは、<創造魔法>...。」
◇◇◇
(女神様~ズ視点)
次々と創られていく書籍の数々。絵の入っているものもあれば文字だけのものも出てくる。取りあえず、指示された通りに棚へと本を並べている。だが、本には魔性の誘惑というものが存在する。
「おおお。すげぇ。酒の造り方だぁ~。面白い。面白いぞぉ。」
ああ、早速トラップに掛かった者がいた。そう。本の中身を見てしまったが最後、本を読むのに集中してしまい、作業妨害を引き起こしてしまうのだ。
「ちょっと何をサボっているんですか!私だって読みたいのを我慢しているのに」
「あ、この技かっこいいねー。新しい魔法の参考にしようかー。」
「コラコラコラコラコラァー!駄目ですよお姉ちゃん!今は読書の時間ではありません。ほら、お兄ちゃんだって我慢して魔法を使っているんです。お兄ちゃんの頑張りを無駄無駄するつもりですか?」
「えっと何ていう技名だっけ?炎殺」
「言わせませんよ!」
トラップにかかってしまったのは現在、
「ちっ。このナメクジ野郎め。卑怯ではないか。願いを叶えた
失礼。
「<ワープホール>。」
本を手に取ることなく、MP回復ポーションを飲みながら本を棚へとワープさせるメルア。さすがはメイドさんである。
さて、残りは後1人!作業に取り組んでいる善神はアカネとメルア。対して、罠に掛かって作業をサボってしまった悪神はツカネとシラユキとスイカ。果たしてあの人はどちら側だろうか?
「フヘヘェ。新しいレシピだぁ~♡」
堕ちていた。本の発する誘惑により、
これで悪神の数が善神のを上回ってしまったことになる。どうするイチロウ!
◇◇◇
僕は何とか大量の魔力消費に耐えながら、イメージを集中していたが、ふと女神達の様子を見てみると作業を途中で止めて立ち読みしている者達がいることに気づく。
しまったとその時、思った。内容の分からない本というのは、猫にとってのマタタビ。受験生にとってのスマートフォン並みの誘惑アイテムであることをすっかりと失念していた。これでは、この作業を今日中に終わらせることが出来ない。
仕方が無い。あれを使うか。
「僕はこの作業を終えるまでは寝ないつもりだ。もし早くヤりたければ、この作業を終わらせること。」
誘惑に勝つには、それを超える誘惑を使うのが手っ取り早い。その効果は絶大で、面白いくらいに作業ペースが上がっていった。そして、
何ということでしょう。<創造魔法>の手によって、ただの余り部屋だった3階が、見事に懐かしの図書館へと大変身したではありませんか!
現在は夜7時。長く苦しい戦いだった。僕は魔力消費による脱力感、女神達は本の誘惑にそれぞれ勝ったのだ。
「よ、ようやく終わったぁ。」
疲労が体の底からせり上がってきたこともあり、僕は一旦、意識を闇へと手放した。
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