第32話 ランクアップ試験 ツカネ・アカネ姉妹の無双

全世界の皆に質問します。始めて入ったギルドでいきなり


「「「「「お帰りなさいませ!イチロウ様!」」」」」


と出迎えられた者はどう反応するべきだろうか?開口一番に、男性冒険者から嫉妬や妬みの視線を送られたらどう反応するべきだろうか?答は困惑。何も言葉を発することのできない状態だ。一度、ラゼバラの報告内容を確認する必要がありそうだ。


だが、立ち止まってはいけない。取りあえず、控えめな笑顔で返してみた。


ハイ、撃沈。迎えに行った受付嬢や女性冒険者のハートにレボリューションしてしまったよ。


「ッケ!ムカつくぜ。あの野郎。」


「一度、洗礼を受けてもらう必要がありますねぇ。」


男性冒険者からは一層、羨まれるけれど。僕達は受付に行く。


「お、おはようございましゅ。受付嬢のミミルです。本日はどのようなご要件であらせますでしょうか?」


う、うさ耳!生うさ耳!これだよ。これこそ異世界の定番テンプレ、獣人さんだよ。しかも始めて見る獣人がウサギさんとは!え?シラユキが始めてじゃないのかって?いや、シラユキは獣ではなく獣だからギリノーカンです。どうやら異世界のテンプレはまだ僕を見放してはいないようだ。おっと誰かが、いや、竜神様が来た...ん?何々?


「そんなウサギよりも妾の方が毛並み、触り心地は上じゃ。婿殿のモフモフは妾が認めた者しか授けんぞ!」


小竜形態のシラユキはその白い羽毛を存分に擦り付けてきた。うん。モフモフはシラユキさんで充分だわぁ。僕達のパーティーが『女神の家』であることを伝え、僕、ツカネ、アカネのランクアップ試験の資格書を提出づると、ミミルさんは急いで奥へと向かっていった。そして数分後、一つの袋を渡してきた。


「ランクアップ試験で忘れる前に、『プリペア』の方から報告が上がっていた王金貨3枚を支払っておきます。」


渡された袋を見ると、白銀色に輝く3枚の硬貨が見えた。うわ、眩し!


「それではランクアップ試験にしますが、その前にイチロウ様。その竜はイチロウ様の獣魔ですか?」


僕はそう言われ困惑するが、シラユキの発言を思い出して左手の甲を見せた。


「...問題ありません。試験では、獣魔も使用OKなので問題はありません。」


おお、良かったな!シラユキ。今日の試験では、ずっと一緒だぞ!


「...ふむ。こやつの評価を1段階上げてやろうではないか。」


良かったね、ミミルさん。竜神様からの評価が上がりましたよ。


◇◇◇


A級冒険者でもあるチヒロさんの話によると、ランクアップ試験は主に魔法試験、実践試験、そしてダンジョン試験の3つがあるという。特徴としてはそれぞれ次のようなものがある。


魔法試験:的に向かって魔法を放ち、精密性と威力をテストする。


実践試験:S級以上の冒険者が手合わせを行い、実力をテストする。


ダンジョン試験:実際にダンジョンに入って貰い、冒険者の基本の”き”をテストする。


そして、上記の各試験それぞれで一定の点数を得られた者だけに、A級以上のランクが与えられるらしい。本日の試験の順番は、アカネ、ツカネ、僕の順で行うらしい。


まずはアカネ。神弓『アマカゴノユミ』を構え、そこに魔力を込めていく。


「<付与エンチャント:ウインドアロー>。今回は1本でいきますよ。そりゃ。」


風の魔力を帯びた矢が、的へと吸い込まれる。そして、見事に。いきなり的破壊を行うとは、さすが女神様。躊躇無くテンプレを回収するスタイルだ。


「受験番号1番、アカネ。魔法試験合格!」


「いよっしゃあああ!」


アカネ、大喜び。今日も元気一杯だ。でも、試験官を含めて周りの皆は唖然としている。これもテンプレだねぇ。


「つ、次、受験番号2番。準備して下さい。」


「ウフ...ウフフフフ。この試験は威力を評価するものだよねー。」


ツカネ...さんは、黒い笑顔を浮かべながら、杖を構える。あれは、『プリペア』の武器屋で買ったマジカルステッキをベースにゴッドオリハルコンを素材とし、<鍛冶魔法>と<付与魔法>で創った神杖『アロン』!まずい!


「これが私の全力全開!最上級光属性魔法<スター・プリズム・ブレイカー>。」


杖から極太レーザーを放つ魔は1つの的のみでなく、、クレーターを作成した。や、やり過ぎだよ、ツカネさん。ああ、試験会場が半壊状態じゃないか。僕の魔法試験の的はどうするんだよぉ。


「はは...嘘だろ!?」


「ゆ...夢でも見てるんじゃねぇか、俺ら。」


「ま、魔王だ。白い杖を携えた白い魔王だ。」


アカネの時よりも度肝を抜いている様子に、魔法神はご満悦だ。そして、アカネはと言うと


「ま、負けた。お姉ちゃんにまた負けてしまいました。」


落ち込んでいた。元気出してよ。魔法に関しては、魔法神の右に出る者はいないんだって。すると、ギルドの奥から試験で使用された的とは一回りも二回りも大きいものが用意された。


「最後、受験番号3番。お前はこのオリハルコン製の的を破壊しろ。出来なければ、失格。B級をもう一度頑張ってもらおうか。」

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