第30話 新たに判明した創造魔法料理の効果

いちにょっき。イチロウです。あの後、扉が破壊されたことで外に漏れ出てしまった『夢魔の香』をメルアさんの<ワープホール>で塞ぎ、ツカネによる<修復魔法>で扉を修復、さらにチヒロさんの<記憶操作>によって城にいた者全員の今日の記憶を消去した。


今日はもう夜遅いこともあり、僕達はこの部屋で泊まることになった。ちなみにシャルティア様はメルアさんの説明の途中から意識があったようで、僕と引き合わせてくれたことを大いに感謝していた。


そして、現在の僕はシラユキから貰った黒色の着物を着て、<創造魔法>で料理(通称:創造魔法料理)を出しています。理由はお手頃で、一番美味しいからだ。そしてなんと、この着物。全属性魔法耐性が付与され、温度調節機能、不壊、自動洗浄機能のついた秘宝みたいです。でもどうして着物?という僕の問いに対し、シラユキは


「その服の方が交わりの際に脱がしやすいじゃろう。」


と僕の下半身を凝視しながら答えていた。動機が不純過ぎる。そして、今日の夕食は全員が肉料理を食べたいと申したため、あの一品料理をもれなく創った。女神様は肉好きだなー。だからこそ肉食系なのであろうか。


「<創造魔法:唐揚げ(もも)>。<創造魔法:唐揚げ(ネック)>。<創造魔法:唐揚げ(ささみ)>。」


しょうゆダレと塩ダレを各部位で500個創り、更に白飯も100パック作成。唐揚げについてはグランプリで最高金賞を受賞した店をターゲットにした。更に味の決め手であるあれもシンクロ召喚した。


「<創造魔法:漬け込みダレ>。」


これで、味変もバッチリ。さぁ、皆の者。出会え出会え。


バリバリバリバリ


さぁ始まりました。第1回唐揚げ人気部位選手権。現在の1位はシンプル・イズ・ベストなもも、最下位は比較的あっさりとした味のささみだ。ツカネはしょうゆダレのもも、アカネは塩ダレのももを一心に口に頬ばり、時々白飯もかきこんでいる。シラユキの方はネックの方を中心に食べている。おそらくタレが最も染みこみやすく味のパンチが一番だからであろう。


「チヒロさん。この魔法の白い粒は何ていう食べ物でしょうか?食べることで食欲を増加させ、更に魔力を効果的に摂取できるものは聞いたことがありません。」


「そうでしょうね。料理神である私も、つい最近までは知らなかった食べ物で”白飯”、あるいは”ご飯”と言い、これの元になる穀物を”米”と言うらしいですよ。イチロウさんはこの米を広めるために日夜、努力を積んでいるのです。」


チヒロさんとメルアさんは2人でささみをゆっくり味わいながら食べている。それと、チヒロさん。概ね間違ってはいないですが、今はそれよりも冒険を楽しむために努力しているんです。米はまだ資金や実績というものを得てからでないと。


女神様~ズ一行が唐揚げや白飯に舌鼓を打っているなか、シャルティア様は唐揚げに眼もくれずに白飯ばかりを食べていた。


「シャルティア様。唐揚げの方も食べておかないとあっという間に無くなりますよ。」


「様は不要です。『シャルティア』と呼んで下さい。後、敬語も不要です。もしそう呼ばなければ、また干からびるまで」


「わ、分かり...分かった。善処する。」


「よろしいです。白飯を優先的に食べていたのはこう、今まで食べてきた料理よりも魔力が蓄積される感じがしたからです。ですが、どうしてこうも違いが?」


それを聞いてびっくりする。女神達に白飯を食べてもあまり、そういった感想は聞かなかったからである。


「恐らくですが。」


うお、びっくりした。メルアさんがいきなり背後に現われるからびっくりしたよ。


「失礼しました。それでこの白飯ですが、魔力含有量が桁違いであると予想されます。基本、この世界の食材の味は魔力含有量で決まり、多ければ多いほど美味になっていくとされています。そして、この白飯は私が見てきた食材の中で最も含有量が多く、単品で食べるだけでも甘くて美味。シャルティア様のような魔力を重視する種族にとってはうってつけの食材になるかと。」


し、知らなかったよ。そんな仕組み。つまり、白飯はこの世界においては至高の食材であり、様々な種族の救済にもなるじゃあないか。


「補足しますが、イチロウ様の<創造魔法>で創られた料理も、この世界のものと比べて美味と感じられると思います。これも魔力含有量がイチロウ様の創ったものの方が多いことで説明がつきます。」


結論。我が創造魔法の料理は世界一ィィィィーーーーッ!それにしても今日は重要な成果を得ることができた。これは、白飯の普及の優先度合いを上げておく必要があるかもな。仮にも魔力問題解決のためとはいえ、シャルティアと婚約関係を結んでしまったわけだ。責任はしっかりと取らなければ。


「婿殿。もう唐揚げがなくなりそうじゃ。何か新しいものを出さぬか。」


はいよ。そんなシラユキにはとっておきのものをプレゼントしよう。


「<創造魔法:唐揚げ(骨付きもも)>。」


見た目の華やかさ、高級感が際立つ部位だ。女神様に相応しいだろう。こうして、僕の異世界4日目の夜は過ぎていった。

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