第15話 さらば??の光

うーん。頭が痛い。ここは、宿だ。そうか、僕いつの間にか眠っていたのか。取りあえずは起き上がらないと!?


あれ、服を着ていない?上下ともに。それに何故か汗をかいている。


「うーん。」


「ふぁぁ。」


ファ!?左右から女の子の声。ま、まさか。


「おはよう、いっくん。昨日は凄かったよ。これでボク達は完全に夫婦だよねー。」


「す、凄かったです。お兄ちゃん、体力ありすぎです。化け物です。」


うわぁぁぁ!?前、前ぇ。何でツカネさんもアカネも服を着ていないのぉ!?それに、ここにある2つの赤色の水玉模様って。


「そんなの。決まってんじゃん。いっくんとボク達姉妹は」


「お父さんとお母さんの関係になったのですから。」


嫌ぁぁぁ。やめてぇ。残酷な事実を突きつけないでぇ。僕は慌てて昨日の夜について頭で思い出すことにした。


◇◇◇


僕達はギルドでの騒動の後、宿屋の僕の部屋で2次会をした。


「ねぇねぇ、いっくん。いっくんの世界のお酒を飲んでみたーい。甘い味の奴で。」


「あ、私もお願いします。お兄ちゃんの世界の有名な奴で。」


「うん、分かったぁ。<創造魔法:リキュール>。<創造魔法:ビール>。<創造魔法:日本酒>。」


リキュールは巨峰を使った甘くフルーティなものを、ビールはしっかりとした苦みのあるものをそれぞれ出した。日本酒はただ僕が飲んでみたいから創っただけである。


「それじゃあ、ボクといっくんのランクアップを祝して」


「「「乾杯。」」」


エヘヘヘ。楽しいなぁ。またこうして誰かに甘えられるなんて。今はアカネに抱きついていまーす。


「ふぉぉ!?」


床に何故かクレーターみたいな跡が発生しているような感じがするが、別に気にしなーい。


「いっくんって、普段はクールさを発揮しているけど、こういう時になると甘えにくるキュートさを発揮するんだねぇ。」


ツカネも何か言っているけど、今はアカネの番だよ。


「あ、あ、あ、あのお兄ちゃん。抱きしめてくるのはいいですけど、その前にお姉ちゃんの方を優先に」


「嫌だぁ。ツカネと同じくらいアカネのことが好きなんだもん。もう僕達は家族なんだもん。もう、家族の皆と離ればなれになるのは嫌だよぉ。」


「いっくん。」


「お兄ちゃん。」


思えばイチロウは、転生前も天国で親と暮らすことを第一に考えていた。つまりそれは、彼が家族というものをとてもとても大切にしていることの裏返しでもあったのだ。


だが、そんなシリアスな幻想をぶち壊すのが女神様クオリティー。内心、彼女達は2次会が始まる前からこう思っていた。


(逆に考えるんだ。『このままゴールまで行っちゃってもいいさ』と。)


今のガードの緩い彼なら、自分達の思い通りになるんじゃないか。そんな動機で、彼女達はこの2次会をセッティングしたのだ。つまり、彼女達は始めから、彼を美味しくいただくことしか思っていないのであった。汚いなさすが女神様きたない。


「大丈夫だよ、いっくん。寂しかったよねぇ。苦しかったよねぇ。ボク達の我儘のせいでこうなっちゃったんだよねぇ。」


「ううん。そんなことはないよぉ。ツカネ達は悪くないんだよぉ。悪いのは車に気づかなかった僕なんだからぁ。」


「大丈夫です、お兄ちゃん。これから私達は家族になるんですから。もう悲しむ必要はありません。」


((勝った。計画通り。))


左右でイチロウを抱きしめる女神達。お互いに抱きしめ合い、よしよしする姿はどこか普通の兄弟姉妹のように見える。しかし、


「アカネちゃん。このままベッドに運ぶよー。しっかりと脱ぎ脱ぎしながらねぇ。」


「了解です。ターゲットはトロッとした顔で、無防備になっていますどうぞ。」


「ラジャー。」


グヘヘな顔をした2人の女神おおかみが、イチロウという1人のヒロインを襲う準備をしているのが真実なのである。待て、慌てるな。これは女神様の罠だ。


これにより、ベッドの上には純真無垢な顔をしたヒロインが横たわっており、その上から2人の悪役ツカネとアカネが見下ろすという逆じゃね?みたいなシーンが完成した。


「まずはボクから行く。それで問題は無いよね。」


「はい。むしろ私達が1番と2番になるだけでも奇跡なんですから、贅沢は言ってられませんよ。」


「それじゃ」


「いただきますね、お兄ちゃん。いえ、お・と・う・さ・ん。」


此方も抜かねば…無作法というもの…。そう言わんとばかりに、2人は目の前のイチロウに襲いかかった。


◇◇◇


ああ、そうだ。確かに僕は流されるままにベッドに運び込まれ、脱がされたんだ。ああ、これでとうとう逃げ道は無くなってしまったわけだ。もう受け入れるしかないのかもしれないな。今日でまだ3日目だけど。


「ツカネ、アカネ。」


「「はい。」」


「正直に言います。僕は2人をlikeではなくloveの意味で好きです。僕の恋人になって下さい。」


「「喜んで。」」


こうして、僕は意地を捨て、彼女達への気持ちを受けたのであった。


もしかしたら僕は、出会った時には彼女達に惹かれていたのかも知れないな。


◇◇◇


(???視点)


とうとう彼は決心しましたか。私達、女神を受け入れる決心を。ならば、彼を中級神から上級神へとレベルアップさせておきましょう。イチロウさん。このまま女神達と婚約していって下さい。そして、そのまま私のことも...エヘヘ。

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