第13話 ランクが上がりました

冒険者ギルドに報告に来た僕達は、早速ギルドマスターの部屋へと通されていた。


「あたしが言うのもなんだけど、お前達只者じゃないだろ?いくらオールラウンダーでも1日でリストにあったS級の魔物2体を討伐するなんてこと...あるんだよな。だって目の前に証拠が揃っているし。」


ギルドマスターの机の上には、1メートルはある角と牙。これらだけで、討伐成功は明らかである。


「ちなみに、各々どっちを討伐し、どのように討伐したかをおしえてくれるかい?」


「ロックキングホーンを<威圧>で気絶させて、剣でぶった切った。」


「レッドなんちゃらオーガを<アクアリウムプリズム>で捕らえて、<サンダープリズム>で感電死させましたー。」


「よし分かった。お前達が常識の理から外れた化け物であることが分かった。」


えー。何で僕達のことを化け物扱いするのかなー?ただ、討伐しろと言うから討伐しただけなのに。


「よって、お前達2人にはBランクを与え、そして、王都にあるランクアップ試験の資格書を与えることにする。良かったな。1つの依頼で4段階もランクアップするのはお前達が初めてだぜ。」


ワー受験ダー。そういえば、僕が交通事故で死んだ時も確か受験だったっけ。そう思うと、王都への道が不安になってきてしまうな。


「大丈夫だよ、いっくん。今度はボク達が一緒にいるから。」


ツカネさん...


「そうです。お兄ちゃんには私という義妹いもうとがいるじゃないですか。もしお兄ちゃんを襲撃しようものなら、この名前のつけがたい弓矢のようなもので狙い撃ちですよ。」


アカネ...


そうだよな。転生前とは違って今回は1人じゃないし。そう思うと、不安が消えていく。ありがとう、ツカネさん姉妹。


「そもそもいっくんは神様だから、寿し。」


「仮にこの世界からいなくなっても、私達が1ので何も怖がることはありませんし。」


フフフと黒い笑顔を浮かべる2人の女神様。その目はハイライトが消えかかっていて、『野獣の眼光』みたいな感じになっている。え?僕にはもう寿命がないの?それもう不老不死じゃん。それに、この世界から消えたり逃げたりした時は連れ戻すって。何か別の不安が湧いてくるんですけど。これを見た視聴者は確実に『もう助からないゾ♡』みたいなコメントを書き込むであろう...。


「何をコソコソ話しているか分からないが、次に報酬金について話をする。」


ナイス、ギルマス。話の方向を変えてくれるファインプレー。


「今回の魔物はS級で、2体とも王金貨2枚。つまり、今回の依頼の報酬は王金貨4枚となっている。この金額は、ここでは支払いきれない額だ。」


え?何で?じゃあ、残りはどこで受け取れるの?


「そこで、まずは金貨10枚をここで支払い、残りの王金貨3枚については王都のギルドで受け取って貰うことにしようと思う。」


はぁ。手間がかかって面倒くさいが、王都にはそもそも行くつもりだったからこれは渡りに船だ。話を飲もうじゃないか。それに、金貨10枚なら残りの冒険者用のアイテムとか購入出来るから、この町での目標は達成できる。


「分かりました。報酬金の残り75%は王都で受け取ることにします。」


「良し。ならば、今日はここででお前達の4段ランクアップ祝いを開く。存分に楽しんでいけよ。」


マジか。それは楽しみだ。それに、腹が減っていたし。


「ムフフフ。今日は食べさせ合いっこしようよー。主に口移しで。」


「あーズルイ。それにお兄ちゃんのファーストキス奪ったの知っていますよ。抜け駆け禁止。私もお兄ちゃんとチューしたいです。」


ハァァァ!?嘘だろ。何でアカネがそれを知っているんだよ。確かあの時は僕達だけしかいなかったぞ。一体、どうやって。


「ボク達女神様は上から魔力越しから神力越しから、皆いっくんのことを見ているんだー。だから、いっくんが何をしようが全部見通しってわけ。」


もしかして昨日のお風呂も覗かれてたりするのかな?もしそうだったら、今後は風呂に入れないぞ。


「それについては大丈夫です。風呂シーンについては何故かモザイクがかかって見えないようになっているので安心して下さい。恐らくですが、全能神あたりが関わっているのかと。」


ほっ。良かった。ならば安心して風呂に入れるようなものだ。全く驚かせやがって。それにしても全能神。一体、誰なんだろうか?<美形>を鑑定した際のメッセージから、性別が女であるのは間違いないと思うのだが。


「それよりも飯です。早く1階に向かいましょう。さぁさぁさぁ。」


アカネに手を引っ張られる形で僕はパーティー会場に向かうのだった。


◇◇◇


(???視点)


クソッ。あのチビ。俺様よりも上のランクになりやがって。俺様がどれほど苦労して、C級まで登り詰めたのか理解してないくせに。確か今日はギルドでパーティーを開くのだったな。ならば、そこであのチビに目に物を見せてくれる。

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