第12話 討伐クエストを受けました
はーい、僕です。イチロウです。僕は今、F級クエストの代表格である採取系クエストでもなく、ゴブリンやウルフのような低級の魔物討伐でもなく、目の前にいる岩の魔物と真っ赤な炎を纏っている魔物の討伐に向かっていまーす。
ロックキングホーン
HP 5000/5000
MP 5000/5000
攻撃力 5000
防御力 5000
土属性魔法を操るカバ。体表の岩を飛ばして攻撃したり、角による突進で串刺しにする。だが、一番脅威はその硬さで、物理攻撃をほとんど防ぐ。討伐部位は角。
レッドエンペラーオーガ
HP 5500/5500
MP 5500/5500
攻撃力 5500
防御力 5500
火属性魔法を操るサイクロプス。体中に炎を纏い、火球やブレスを吐いて敵を灰燼に帰す。魔法耐性が高く、魔法攻撃をほぼ受け付けない。討伐部位は牙。
はっきり言います。ランクはSです。はっきり言ってF級は即、あの世行きです。
「ねぇねぇ、いっくん。2体とも大きいねー。」
「ああ、2体ともゴブリンよりもはるかに巨大だ。」
「でも、お兄ちゃんやお姉ちゃん達の敵ではありません。いつものように爽快に倒しちゃって下さい。」
このクエストは僕とツカネさんの2人で受けたクエストなので、アカネには待機して貰っている。それと、クエストに向かう途中で僕のことをイチロウさんからお兄ちゃんに変化していた。まぁ、呼び方については自由にさせているので、特に意見は無い。
「じゃあ、僕はそうだねー。あの赤い方をやっちゃおうかなー。だって、『魔法攻撃をほぼ受け付けない』とか魔法神に対するボクに挑戦状を出してるようなものだしね。」
「成程。僕の方も『物理攻撃をほとんど防ぐ』とかソード系やスピア系に対する挑戦状だと思っていた所さ。」
こうして、2体の神による討伐戦が始まった。
◇◇◇
(ツカネ視点)
それじゃ、僕はあのレッドなんちゃらオーガでも片付けますか。
ゴガァァァ
「うるさいなー。頭に響くじゃないかー。<アクアリウムプリズム>。」
すると、オーガの足下から突如、大量の水が出現。瞬く間にオーガを水の牢に捕らえた。
ゴガァ、ゴ...ブクブクブク
「ねぇねぇ、レッドなんちゃらオーガくん。ボクは別にキミを馬鹿にしているわけではないんだ。ただ、眼中にない。それだけなんだから。」
ゴ...ゴゴゴゴガァァァ
ツカネによる<挑発>を受け、オーガは炎の攻撃で水を蒸発させようと試みるが、その攻撃方法は突進かブレス。突進は水の牢に捕らえられた時点で水の抵抗が働くため不可能であり、ブレスに至っては口を開ける際に水が体内に入るため、直ぐにかき消えてしまうのだ。しかも魔法神である彼女は魔力が無限大。蒸発しても新たに水の魔法が発動し、蒸発したところが直ぐに戻ってしまうのだ。
つまりは、オーガは水の牢に捕らわれた時点で詰んでいた。そこに、彼女は杖を向けた。
「レッドなんちゃらオーガくん。魔法神であるボクに魔法を挑もうなんて最初から無謀だった。あの世に旅立つ前に理解していくがいい。
<サンダープリズム>。」
杖の先から無数の雷が放出され、それは水の牢に触れることで雷の牢へと変化した。
グオオオオ
最後まで魔法神に正しい名前で呼ばれなかったオーガは、黒焦げになって絶命した。
◇◇◇
僕は目の前の魔物に集中する。
「出番だぜ、神剣。<魔装:ウインド>。」
魔法を唱えると、神剣から緑色の魔力が流れて増幅し、たちまち竜巻が剣を纏った。
ブモオオオ
角をこちらに向けてこちらに突進してくるが、僕はこれを<見聞>でしっかりとかわし、左足を斬りつける。すると、物理攻撃をほとんど防ぐその体に切り傷がつく。
それにしても、この神剣の不壊は素晴らしいな。普通のソードだと、これで粉々に砕けているぞ。そして、攻撃力増加の効果であの体表に傷が付いている。これなら、神剣で物足りる。
「ほらほら、こっちだぞ。」
僕は予め<創造魔法>で創った<挑発>で、ホーンの注意を引きつける。いわゆる、闘牛と言う奴だ。
ブルルモォォ
面白いように予想通りの軌道に突進してくる。再びかわしたら、今度は竜巻状の火を纏った剣で斬りつけてみた。すると、今度は火傷を伴った切り傷がついた。<魔装:ファイア>も強力だな。まるで、幕末の包帯を巻いた剣客や、某鬼から隊士を守る柱みたいな感じだ。
ブッモォォォ
ホーンは体から岩を出現させ、僕めがけてその岩が発射される。通常なら避けるか障壁で防御すると思うが、
「<魔装:ウインド>。<ウインドストーム>。」
僕は横方向の竜巻で飛んでくる岩を押し返した。すると、あら不思議。押し返された岩が魔物の方に飛び、見事に全段ヒットするではないか。よし。神剣のテストはこんなものだし、このサイクロプスにはご退場いただこう。
「<威圧>。」
ホーンは僕の威圧を受けると、体をフラフラしながら気絶した。そこに、魔力を込めた神剣で体を真っ二つに切って僕の方の討伐は完了した。
「お疲れ、いっくん。段々と戦闘スタイルを確立していっているみたいだね。」
「ああ。僕はこの神剣を使った魔力剣士を目指すつもりだよ。近接攻撃を僕、遠距離攻撃をツカネ達でやればバランスは良いと思うしな。」
「お兄ちゃんもお姉ちゃんも凄かったです。S級の魔物をこうもあっさりと倒しちゃうなんて。2人は自慢の兄と姉です。」
そうだよね。この2体ともS級だよね。何というか、スムーズに倒すことが出来たから実感が湧かないや。でも裏を返せば、それくらい僕が強くなっている訳だ。レベル99。恐るべし。
討伐部位をいつものように風属性魔法でいつものように切断、アイテムボックスに入れて、討伐クエストの報告へと僕達は向かった。
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