第11話 目が覚めたら、そこはダンジョンでした
フレイはこの日2度目の目覚めをしようとしていた。
(なんだか、酷い夢を見た気がする)
具体的には、目が覚めたら上司が部屋にいて出社したとおもったら紙の山に圧殺される夢だった気がする。
きっと、それらは夢で目が覚めたら自分の部屋にいるに違いない。と、そこまで考えて世界がゆったりと揺れていることに気づいた。
それになんだか騒がしい。少なくとも最近引っ越してきたばかりのギルド職員の寮ではしないタイプの喧噪がした。
モンスターの鳴き声。
「え?」
フレイは跳ね起きると同時に警戒態勢に移ろうとしたが失敗した。
フレイはアリーザの丸太のような腕で抱えられていた。
「か、課長?」
「お、目が覚めたのか。よく眠れたか?」
のんきにそんなことを聞いてくる。
なぜ、自分がアリーザに抱えられているかなどの疑問はあったが、今はそれより重要な問題があった。
「いま、モンスターの鳴き声がした気がするんですけど。ダンジョンからあふれてきたんですか?」
モンスターがダンジョンがあふれてくるという現象は珍しいといえば珍しいが毎年どこかで起きている程度の頻度で発生する現象だ。
魔王の復活がその原因の最大のものであるが、何らかの要因でモンスターが以上に繁殖した場合なども起こりえる。 そのくらい起きても不思議ではない現象であるが、ギルド本部まで聞こえるということは防衛線が突破されたことを意味する。
「モンスターの声がするのは当たり前だろうに。ダンジョンなんだから」
「は?」
フレイはここで初めて、自分の目で周囲を見渡した。
視界に飛び込んできたのは、視界いっぱいに広がる縦穴であった。
フレイはアリーザに抱えられながら縦穴を貨物用のコンテナに乗って下っていた。
「ちょっと、何してるんですか?ギルド職員のダンジョンへの立ち入りは禁止ですよ!」
「新人のくせに規則にうるさいね。ほら、許可証はあるよ」
そう言ってアリーザが見せてきた書類は確かにギルド職員のダンジョンへの立ち入りを認める許可書であった。
ただし、立ち入るダンジョンの種類や立ち入り目的、立ち入り日時、随伴者、などなどすべての項目が空欄で認可者であるギルド長のサインだけがしてあった。
白紙手形である。
「おもいっきり不正じゃないですか!」
「不正だが本物だよ。これで問題がないから心置きなくダンジョンを楽しめる」
そんな会話をしている間にも貨物用のワゴンは縦穴をゆっくりと下っていった。
そのうちに縦穴の底にテントの設営を行っている冒険者の一団が見えてくる。
「ほら、あれが今日の目的地だ」
アリーザが設営されているテントを指さした。
「なんですか?あれ」
「新人冒険者の訓練キャンプだ。あのテントの中まで雑魚モンスターを連れ込んで新人の訓練をしている」
たしかに、テントのそばに設置された折りの中にはモンスターがいた。先ほど聞こえたモンスターの鳴き声はそこから聞こえていたものらしい。
「課長は私を冒険者にでもしたいんですか?いやですよ。あんな危ない仕事」
「大丈夫、大丈夫。今日は見るだけの予定だよ」
そう言いながらアリーザはフレイの背中を叩いた。
フレイは意識を飛ばしそうになった。
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