第17話 須藤②
***<冴無>***
休日明けの月曜日、昼休みに亀田に誘われた俺は二人で中庭に来ていた。
「冴無は昨日のスピカの活躍見た!? 三体の魔物を意にも介せず瞬殺! 綺麗だったなぁ……。あ、写真見る?」
早口で興奮気味に捲し立てる亀田。
流石は魔法少女スピカのファンを名乗るだけある。ちなみに、写真は亀田が撮影したものだが、本人の許可を得て撮影したものらしい。
なんでも、ファンの鑑としてもう二度とスピカもとい、涼風さんの嫌がるようなことはしないとのことだ。
立派になりやがって……。
「勿論見たぜ、と言いたいところだが、昨日はちょっと考え事してて見てないんだよな」
「そうなんだ……それは残念だったね」
「まあ、こればっかりは仕方ない。ところで、亀田は須藤王って知ってるか?」
「須藤王? ああ、知ってるよ。一年生の頃同じクラスだったからね」
おお、それはラッキーだ。
昨日思い出したのだが、涼風さんをストーカーしている奴は確か同じ学園に通っている須藤という男だ。
偶然にも、須藤は俺と同じクラスだったため名前は簡単に知れた。
茶髪でややイケメンな男子だった。割と友人もいるらしく、見る限りストーキングをするような奴には見えなかった。
だからこそ、もっと情報が欲しかったのだ。
「須藤って、どんな奴だ? 俺も同じクラスなんだけど、友達もいるし顔立ちもいいし、悪い奴には見えないけど……」
「うーん……悪い人ではないと思う。でも、僕はあんまり好きじゃないな。時折、僕とかクラスの隅にいる人たちを見下してるような感じがあるんだよね」
なるほど。
実際のところがどうかは分からないが、今度から注意して見てみよう。
「でも、その須藤がどうかしたの?」
「いや、そいつが涼風さんをストーキングしてるかもしれないんだよ」
「またまたー。あんな友達もいて、そこそこ女の子にもモテてる須藤がそんなことするわけないじゃん」
「俺もそう思うけど、外側がいい人が内面までいい人って保証はないだろ?」
「まあ、確かに。僕や冴無みたいなクラスの隅にいる人が脅迫状書く様な物騒な時代だしね!」
「そうだな!」
「「あはは! あは、は……」」
二人で肩を落とす。
落ち込むくらいなら言わなきゃいいのに。
いや、でも俺たちは自分が犯した罪を忘れてはならない。これは戒めでもある。
とはいえ、人前で自虐するのは今後は控えよう。誰も幸せにならない。
「須藤のこと教えてくれてありがとな。亀田もまたなんか気付いたことがあったら教えてくれ」
「うん。でも、冴無も気を付けてよ?」
「気を付ける?」
「涼風さんのために行動するのはいいけど、僕の時みたいに冴無がストーカー扱いされることだってあり得るでしょ」
確かに。
亀田の時もそうだったが、誰かを守るためなら何でもしていいという理屈にはならないもんな。
これはいいことを聞いた。
「そうだな、気を付ける」
「うん」
そうこうしている内に、昼休みが終わりを告げる。
亀田と別れ、俺は自分の教室に戻った。
教室内では、須藤とその友人たちが仲睦まじく会話している。
こうして見ていると、本当にクラスの中心人物の一人という感じだ。
本当に須藤が涼風さんのストーカーなのかは現時点では分からない。だが、俺の予想が正しければ今週の放課後のどこかで須藤は動く。
亀田にはストーカー扱いされないように気を付けろと言われたが、今週の放課後に限っては俺は須藤の後を尾行する。
その覚悟を決めた時、偶然なのか須藤と目が合った。
須藤の目に光は無く、それが酷く不気味だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます