第16話 須藤王
***<冴無>***
涼風さんが公園を立ち去った後、暫くその後ろ姿を眺めていると、どこからか誰かに見られているような感覚があった。
貴様! 見ているな!!
そう思いつつ、周囲を注意深く観察するとマスクをつけた人と目が合った。首回りにはタオルを巻いており、格好もジャージだ。
なんだ、ただランニングしてる人か。
そう思い、その人から視線を逸らす。
いや、待て。マスクしながらランニングするか!?
だが、直ぐに違和感に気付きその人がいた場所に視線を向ける。だが、その人は既に公園から出ようとしていた。
んー、気のせいか。
まあ、俺をストーカーするようなもの好きいないよな。俺だって、俺をストーカーするなら涼風さんストーキングするし。
そういや、前世のゲームだと涼風さんがストーカーに狙われるって話もあったな。
これはストーカーに注意するよう涼風さんに言っといたほうがいいかもしれない。
***
「ただいま、星羅。今日も可愛かったね」
暗い部屋の中で、一人の少年が机の上に立てかけてある写真に話しかける。その写真に写っているのは涼風星羅の中学生の頃の姿だった。
「今日の公園デートは楽しかったね。でも、あの男は邪魔だったよね。俺と星羅の楽しいデートだったのに……ッ!」
怒りが湧き上がって来たのか、感情のままにテーブルを殴りつける少年。だが、思ったより痛かったのか、涙目で手の甲を押さえる。
「ああ、大丈夫だよ星羅。心配してくれてありがとう」
写真の中にいる星羅に語り掛けられているかのように振舞う少年。だが、写真は写真。
当然ながら、口を開くということはない。
その現実が見えていないのか、それとも見ようとしていないのかは定かではないが、その少年が涼風星羅に狂気じみた感情を抱いていることだけは間違いなかった。
「この痛みも、星羅が高校で俺に構ってくれなくなったのも、全部あいつのせいだ。うん、分かってるよ星羅。星羅の優しさにあいつが勘違いしたんだよね。星羅もあいつに付きまとわれて嫌だよね」
少年はそう言うと、ノートを開きシャーペンの先をノートに書かれた人型の何かに突き立てる。
そこには冴無良平の名が記されていた。
「安心して、星羅。俺があいつを星羅から引き剥がしてあげるからね。そして、また二人で過ごそうね」
最後に写真の星羅にそう告げると、その少年は写真に口づけした。
この少年の名前は
他でもないこの男こそが、冴無良平が警戒していた涼風星羅のストーカーだった。
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