第2話 シャイな警備

妙に好条件な依頼だったので、ギルドに問い合わせてみた。


学者の連中は王国からの委託を受けて、大陸の地図を作っているらしい。


私達の仕事はただの警備。

王国からの仕事なのに何故王国騎士団を使わないのか…高額な費用を出してまで冒険者を使うのはどんな理由があるのだろうか。


なにか怪しいと感じた私は仲間たちにこの一件のことを伝えておいた。


まあ、そう簡単にくたばるような奴らじゃないが念のため警戒しておこう。


当日。

朝一番に仲間たちとギルドに集まることになった。学者の連中もここに集まる予定だった。

しかし待ち合わせの時間になっても、連中はやってこない。朝食を奢ってもらえる約束だったのだか…。


「あるじ…お腹減ったよ…。」

「カミノ様、私もお腹が空きました。」

スリッチーはもう限界のようだ…昨日からマトモに食べていないから仕方ない。私も含めて。


敬語を使うのは魔法使いのメア。

私の大親友、普段は物静な彼女も限界が近いようだ。


「もう少し待ってて」


他の仲間たちも痺れを切らしている。


「すみません!遅くなりました!」


遅れてやってきたのは白いローブを着た人間の女の子だった。


少し不釣り合いな雰囲気があるが、彼女で間違いないだろう。


「あなたが依頼を出した地理学者?」

私は低い声で話しかけていた。

「いえ!私はただの助手です!お約束通り食事にしましょう!」

待たされたことなんてそっちのけで、ウェイトレスを呼び出したスリッチー。

「あるじ!あるじ!何でも頼んでいい?!」


王国から委託を受けているとはいえ、経済的に余裕があるわけではないだろう。スリッチーには食べすぎないようにと伝えておいた。


「食べながらで良いので聞いてくださいね」

助手を名乗る白いローブの子が話し出した。

「今回、あなたたちに依頼するのは調査団の護衛です。目的地はこの街からかなり離れた場所になりますがご安心下さい!途中までですが転移魔法が使える者がいますので安心してください!」


他の奴ら…この子の話聞いてたのか??

食事が届くなり、ガッツキ過ぎるような…ちょっと食べ方が汚ならしい気がするけど、また後で注意しておこう。


助手の子の話によると、王国の北東方面に小さな集落あるらしく、そこまでは転移魔法で移動するらしい。6000キロも離れた場所に大人数で転移出来るのだろうか。噂でしか聞いたことのない魔法だし、パーティーメンバーの魔法使いも転移については詳しくは知らないようだ。


王国の地図を完成させるには、転移先の空白地帯に向かう必要がある。その空白地帯に何があるかは誰もわからない。


とりあえず今は、食事だ。少しでも食べておかないと身体がもたないだろう。


「よおし!皆聞いてたか?腹ごしらえが済んだらすぐ出発するから、あまり食べ過ぎるなよ?」


みな元気のいい返事を返してくれた。

本当にちゃんと聞いてたか?後で文句言わないでほしいものだ。


空白地帯。一体そこに何があるのだろうか。


金欠だから金目のものがあると助かる…。


「あるじ?もう食べないんですか?」


スリッチーが私の顔を覗き込む。

食べかすだらけの顔を見て一瞬我に帰る。


「顔が食べかすだらけだそっ!拭いてやるからこっちに来て!」


この先このメンバーで大丈夫だろうか。

面倒事にならないことを祈ろう。










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