この世界に勇者はいない。
@BH5GTB59635963tech
第1話 勇者候補の砦
訳あって城下町で冒険者をしている異世界人の私。こちら側に来てどのくらいたつのだろうか…もう忘れたな…。
昨夜仲間の一人がバカ食いしてくれたせいで財布の中身が心もとなくなってきた。
何か新しい依頼はないだろうか。
「主!何か新しい以来はありましたか?」
私が構成したパーティーメンバーのスリッチーがヤンチャ盛りの子猫のように駆け寄ってきた。少々身長さがあり幼いこどもみたいだ。
新しい依頼…
あるにはあるがどうも腑に落ちない。
依頼の内容は大陸の地図を完成ために、空白地帯の調査、地理学者と測量家一行の護衛クエスト。
報酬はとんでもない金額だった。
何故ここまでの高額クエストが売れ残っているのだろうか?貼り出されたのは三ヶ月前になっている…。
嫌な予感しかなかった。しかし金がない!
どうするべきか……
「スリちゃん?皆を集めて」
「かしこまりました!」
ハキハキとした返事で足早に、冒険者専用の酒場に向かった。
私は受付に向かい、調査依頼の詳細を聞きに行くことにした…。
「あるじ!こちらです」
土足のまま椅子に立つスリッチー。私はそういうのが許せないたちなので一応注意する。
「座る所に土足で立つな」
「しっ!失礼しました!」
後で掃除させるか…。
「カミノ?顔色が悪いぞ」
私のパーティーメンバーのルミン。
彼女は医療の知識があり、ヒーラーでもある。
カミノは私の名前。あまり好きな名前じゃないけど、メンバーにはそう呼ばれる。
「どこぞのばかのせいで金欠だからな。まだなにも食べてないんだよ…」
「すいませんボス…」
このバカは脳筋前衛担当のヤフロ。
唯一の取り柄がとてつもない馬鹿力と頑丈な盾の役している。
「今回も働いてもらうよ?」
メンバー全員そろってないけど、早速本題に入りたいと思う。例の護衛クエストだ。
報酬が高い理由は目的地があまりにも遠すぎるからである。場所は旧魔王領のナバラバスクという300kmくらいの砂漠らしい。
砂漠までは約2000kmほど。騎龍でもいればあっという間なのだろうが…うちのパーティーにそうなものはいない。
馬車はギルドから借りることが出来るから、そちらで我慢。時間がかかるだろうけど、背に腹は換えられない…。
メンバーから反対意見は出なかったけど、あまり乗り気ではないような…。
とりあえず大きなトラブルが起きないことを願うばかりだ。
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