第8話 黒子虫追(コクシムソウ)

「小僧、そこで何をしている?」

「こ、小僧?何言ってるんですか?」

「……ノリ悪いですね、貴方」

「いや、ノリとかの問題じゃないでしょ。この状況分かっていってるんですか?」

「この状況?」


周りには無数の虫の死骸、そのどれもが黒光を放っている。まるでキャビアみたいだー。


「キャビアに失礼ですから、それ。そんな気持ち悪いのをキャビアにしないでください。Gですよ、この物体…」

「ゴキブリをそんな呼び方しないでください!この子達だって頑張って生きてるんですよ!」

「この子って…、…ていうか!誰の所為でこんなことになったと思ってるんですか!」

「え?そりゃぁ、まぁ、梅雨ですし?雨降ってたら上がってきますよ」

「誰も一般論の話はしていませんよ。良いでしょう、言いたくないならこっちから言うまでです」

「……どうぞ」

「その反応の時点で怪しいんですけどね」


ゴクッッ


「貴方が飼ってたのが逃げ出したんでしょう?まぁ、まずゴキブリを飼ってる神経を疑いますが…それは一旦置いときましょう」

「……」

「確かに私はペットは飼ってはいけませんとは言いてません。言ってませんが、近隣の方の迷惑にはならないようにとは書いています。て言うか、誰がゴキブリ飼ってるなんて想像できるんですか!普通カブトムシとかでしょ!」

「…クワガタかな…」

「誰もそんなこと聞いてませんよ。とりあえず、これ片づけてくれません?」

「それは無理な話だ」

「どうして?」

「だって、気持ち悪いじゃないですか!」

「じゃあなんで飼ってんですか!」

「若気の至りですよ!それ以外に何があるんですか!」

「……、なんであなたがキレてるんですか…」


そう言って彼はため息を吐いた。


「で、結局どうするつもりなんですか?」

「え、引っ越そうかと…」

「どんなテロだよ…」

「もう、疲れてんですね。今日はゆっくり休んでください」

「休めませんよ。貴方に罪を償ってもらわないと」

「え〜。やですよwww」

「何ヘラヘラしてるんですか」

「……」

「……」

「……」


「はあ」

「?」

「もう良いですよ。ではお金だけでも払ってください」

「金?」

「はい、撤去代とか…」

「まあ、それぐらいなら…」

「それまではここで住んでくださいね」

「え?」

「では」


ガチャッ


「嘘だろ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

信じたいなら信じればいい 町田 来夢(まーくる) @world241

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ