第7話 稀代の天才になれる気がする

「よう、5年ぶりだな」

「……」

「……」

「…いや、昨日あったでしょ?何中腰で意味の分からないこと言ってんですか」


そう言ってやつは目の前にあるパイプ椅子に座った。


「貴方も座ってください。話したいこともあるんですから」

「話?私は別に何も無いが…」

「貴方になくても私にはあるんです」

「はあ」

「…唐突ですが、昨日貴方は何をしていたんですか?」

「昨日?昨日は休みでしたのでお出かけしていましたが…」

「どこに?」

「近くのショッピングモールに」

「ああ、あそこですか…」

「はい、それでこれになんの意味が?」

「意味?まあ強いて言うなら、貴方がどれほどのクズかを確かめるための質問、とでも言いましょうか」

「はい?」

「貴方、嘘をついていますね?」

「う、嘘?ついてませんよ!」

「…昨日、貴方の隣の部屋の方から相談を受けました。別にそれに関してはなんら不思議なことではありません」

「まあ、そうでしょうね」

「続けますね」

「はい」

「相談内容はこういうものでした。『一日一回、壁のどこかしらに穴が開く』です」

「それって…」

「ええ、私もおかしいと思いましたよ。誰がそんなことすんだよって」

「このマンションの欠陥ってことは?」

「その可能性は限りなくゼロに近いです。昨日、業者に見てもらいましたので」

「そうなんですか。でも、それと私になんの関係が?」

「は?ここまで話しててわからないんですか。私が言いたいのは貴方がやっているんですよね?と言うことです」

「ちょっと待ってください。最初の質問と全く関係ないじゃないですか」

「ん?ああ、昨日はなぜか穴が開かなかったので」

「で、でも私がやったことにはならないでしょう?」

「貴方の部屋の方の壁からしか穴が開かないんですよ。貴方以外に誰がいるんですか」

「そ、それは…。そう、例えばこのマンションの評判を落とすためにその隣の方が自らやったとか」

「ならなんで貴方が相談してこないんですか」

「うっ」

「それにそこの住人、家族で住んでるんですよ?今どきそんな羞恥心のない人いませんよ」

「あ、そっか」

「納得してるじゃないですか」

「……、そうですよ私がやりましたよ」

「……」

「なんでやったかって?ふふ、そんなん決まってますよ」

「決まってる?」

「ええ、そんなん」


「なんとなくですよ!」


「……」

「……」

「…なんとなく?」

「ええ」

「なんとなくで壁に穴を?」

「ええ」

「……、そうですか。よおく理解しました、ええ」

「?」

「別に治せとは言いません。ただ一つだけして欲しいことがあります」

「一つ?」

「ええ、出ていってください」

「え?」

「だから、退去してください」

「……、分かりました」

「あれ、粘らないんですね」

「はい、何も意味ありませんから」

「まあ、そうですね」

「では」

「はい」


タッタッタッタッ…


「ふう、床に穴開けたの気づかれてなかったな」


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